終焉に近づく世界で俺達は

山下 昇

第16話 決別の兄妹

「久しぶりだな、遥香。」
「お兄ちゃんこそ、元気そうで何よりですよ…」
まずは他愛のない話から入っていく。
とりあえずは時間稼ぎ、出来そうになかったら戦闘に持ち込むしかない。
男版のハニートラップと言われるロミオをやって見るのもいいとは思うが、そんなことしたら抵抗させることを許容することなく彼女が俺を食べて…食べられてしまいそう(隠語)なので、やめておく。

「で、何をしに来たんだ?…まぁ聞くまでもなく分かっているけどな。」
と俺はいう。
少しでも時間稼ぎをしたい。その一心で。

「なら、話は早いですよお兄ちゃん。…戻ってきてください、お兄ちゃんが居ないと私おかしくなりそうで…」
いや、言っても彼女とは結構離ればなれだったはずなんだが、どういうことなのか。…まぁ聞いても分からないからいいか。

「私いつもお兄ちゃんの声とか、顔とかいつも見ていたので何とかなったけど、…今はもう無理なの…監禁して二人きりになって、…きゃ!?な事をしないとダメなの。」
と遥香は言う。

「…まぁ流石にそれは無理な相談だ。そんな事されたら俺が持たないし、色々マズイしな。」
…これに関しては本当の話だ。
彼女がもう我慢出来ないと言ったときはもうヤバイもうダメとこちらが言っても止めない止まない。
それだけは避けたい、マジで俺が天に昇ってしまう。

「…前ならそんな事言わなかったのに…ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんをタブらかした人は誰なの!?分かるんだよ!?お兄ちゃんの事は全部。…全部!」
あぁこれはヤバイ奴だな、でも俺はそんなものは知らない。…時間が、時間が欲しい。もっと稼がなくては。

「遥香、今のうちに言っとくよ。…お前を可愛いい妹としては見てたけど、俺はそこまでにしか見えなかった。…俺はお前を恋愛対象として、見れない。それだけは言っとく。」
俺は結構、彼女には付き合ってください!や、結婚してください!や、お兄ちゃんの子供が欲しいです。等色々言われたが、俺は彼女を本当に妹として見ていたので妹に欲情したりしない。
さらに、今はアンリという俺にとって大事な子がいる。
それを守る為だ、許してくれ遥香。

「…そうですか、なら私は私のやり方でお兄ちゃんを手にいれるだけだよ?でも…少し、痛いし、辛いと思うかもしれないけどゴメンね?」
彼女はそう言い、こちらに向かって走ってきた。

もう時間稼ぎは無理だ、俺も口は得意ではないし、彼女の扱いはいつまでも経っても無理だ。
なら、あとは実力で黙らせるしかない。

「…そうか、なら…来い。遥香。なら来いよ。全力で潰すからな。手加減なんて、しないからな。」

俺も覚悟を決めて彼女と対面するのであった。


一方、アンリ達の方は。

「瑛翔が、頑張ってくれているから私も頑張らくちゃ!」
私は縦横無尽に敵の懐を駆け巡る。
相手は10人だが、やっと3人に減った。二人で分けて1対5で相手していたのだが、強い。

彼らは、こちらの弱点を伺いながら、息のあったコンビネーションで、こちらに少しずつダメージを与えてくる。

しかし、私も負けない。
人は人数が増えるごとにその行動の精密さが欠けていくのだという。
それが集団での戦闘の弱点となる。
私はそこを突いた。
私は彼らの攻撃のわずかなミスを逃さずに的確に攻撃を突く。
そうすることで、少しずつ相手にもダメージを与えていくことが出来る。

そして、大きな隙があったら、俊敏に相手を一人ずつ仕留める。
これを繰り返していたのだが、流石というべきだろう。

余計な動作が少ないゆえに攻撃を仕掛けれない。
しかし、私はそれをしつこく何度も何度もやり、彼らを追い詰めていく。
そして、
「やっと完了…です。…」

やっと私の担当である5人の処理を終えた。
さぁ彼女はどうだろうかと見てみるとあっちも見てみるとどうやら終わりを告げたらしい。

「みーちゃん!お疲れ様…でもら時間がないから、…行こう、瑛翔にだけに負担を掛けてはいかないから。」

その頃俺は
「…!」
激しい戦闘を繰り返していた。
魔法を最大限発動しての総力戦。互いに互いを知っているので、先を先をとっていかないとやられる。

俺は無属性しか使えないが、彼女はそれ以外は全部使える。

そのためこちらの方が不利だ。
無属性の方が魔力消費が多いから長期戦になると確実に負ける。

「お兄ちゃん、もう諦めて私のものになって下さい。…よっと!」
「遠慮だな!」

俺は何とかして、打開策を講じようとするが、無理だ。
早く来てくよ?

「もう、お兄ちゃん。このままだと、重症になっちゃうよ?私はお断りだよ?」
と言う。

…さて、こんなことをしていたら来てくれたな。
残念だか、そうなるのはお前だぞ、遥香!

「そうだな、確かにずっとこうしているのは嫌だしな。」
俺は思わせ振りな事をいう。
「だから、終わらせよう。遥香。」

彼女は分からないというように
「お兄ちゃんがそうなるだけだよ?いいの?」
と言ってくる。
全く、お前は俺と一緒にいると盲目過ぎなんだよ全く…

一瞬、遥香の横を通る。

「!?」
彼女は驚いているらしい。
「アンリ達遅かったな。」
「ゴメンね?」
「問題ない。…さて、あとは遥香だけだ。いくぞ。」

「お兄ちゃん、そんなのズルいよ?さらに女の子まで連れて歩いて…死刑だよお兄ちゃん。」

さぁこれがファイナルラウンドだ。
俺達はそれぞれ構えて、攻撃に備えた。

「お兄ちゃん…いくよ!」

こうして、妹との最終戦が始まった。

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