元、チート魔王が頼りない件。

雪見だいふく

ダメ人間……?

 俺達はバスに乗る。
 バス内は運転手とおばさんが一人乗っているだけだった。

「やぁ、カップルかい?」
「ち、違いますよ! なぁ?」
「……」

 何で顔を赤くして、黙ってるんだよ! 何か分からないけど、俺まで恥ずかしくなってきたじゃねぇか!

「そうかい。そうかい。仲良くね」
「はい」

 そう返答をした、俺は、顔を赤くし立ち止まる、胡桃くるみに「行くぞ」と伝えて一番後ろの座席に座った。
 俺達が座席に座るのと、ほぼ同じタイミングでバスが出発する。

「おい……。何で、お前は顔を赤くしてんだよ」
「だ、だってさ、具合が悪かっただけだし、、!」
「……? そっか。これから遊ぶんだろ? あんまり具合が悪いようだったら、家に帰って休めよ」
「……ばか」

 女というものは本当に訳が分からない。俺は心配したんだぞ??
 それから、何故か胡桃くるみは不機嫌で、あまり話してくれなかった。
 そしてバスはスーパーのある、街に到着した。

「じゃあ、また学校で」
「うん……ばいばい」

 街に近づく度に、あいつ具合が悪いのかテンション下がってたけど大丈夫か??
 と、少し不安になったが何も声をかけることは出来ずに、そのまま人混みへ去っていった。

「……まぁ、いいか。あいつも歳だし。『昔みたいに気遣うことも無いか』」

 そう思いながら、俺はスーパーへ向かい、昨日と同じ格安メニューを作るためにコロッケ(三十円)を一つ買って、すぐに帰った。
 買って、家の前まで歩いて、思ったのだが、バス代でお金を取られるなら、カップラーメンで良かったのではないかと考えたが、今更は手遅れなので、気にしないことにしよう。

 俺は黙って家に入り、階段を上って、部屋に入る。

「ただいま」
「お。おかえりー!」
「……魔王様。はぁ」

 俺が色々した後に、飯を食い、外に出て、買いに行き、二時間近くは経ったのだが、ベッドの布団からひひょこっと顔を出し、未だにニコニコとゲームをしていた。
 魔王様がこんなんでいいのかよ……。

「どうした? ため息なんてついて」
「……何も無いよ。それより『飯』食うか?」
「おう! 食うぜ。食うぜ」

 俺は昨日と同じ手順で格安コロッケパンを作る。

「ほら」
「……昨日と同じかよ」
「文句を言わずに食え!」
「分かってるってー! 食いたいのは山々なんだけど……! 今、いいところでさぁ」

 と、ゲームをいじり続ける。

「分かった。分かった。なら、ここに置いておくから後で食べろよ」

 と、呆れた俺は近くに置いてある、小さな机にパンを置き、時間が無く出来ない勉強をしようと鞄を開けると魔王様は丁度、ゲームのいいところが終わったのかワンテンポ、いやツーテンポくらい遅れて返事を返す。

「……ん? 飯なら、今、食うぞ」
「そっか。そっか。なら、飯食ったら手を洗ってから、また、ゲームをするんだぞ」
「何を言ってるんですかー! ん……!」

 と、口をパクパクさせる。
 意味が分からなかった、俺は無視をして勉強道具の準備を続ける。

「おい、口を開けているんだから、早く飯を入れろ」

「……自分で食え!!」


 それから、魔王様は手を洗い食べたので良しとしよう。
 その後は魔王様とゲームをしたり、ゆっくり休んだり。と、ゆったりした一日が終わった。


「ふぁああ。おはよう。魔王様」
「おはようなんだぜぇ……ゲーム、ゲームと」
「馬鹿言うな! 今日は砦に行くんだろ!」

 俺がダメ人間だったら、この時点で魔王軍は終わってしまうのではないだろうか。

「じゃ、じゃあさ! ほら、朝早いし。一時間だけゲームを……」
「砦をしっかり探索してからだ!」

 何回も言うが、俺がダメ人間だったら、魔王軍全滅、魔王ニートENDになるのではないだろうか。

「わがまま言うなって……。ほら、顔を洗ってきなさい」
「わがままを言っているのはお前だからな!? まぁ、お前の言う通り、準備はしてくるけど作戦を考えたりしてろよ? ゲームはするな?」
「分かってますよー」

 どこかのニートを養っている気分の俺は、ローテンションのまま、部屋から出て準備をしたり、飯を食う。
 そして、部屋に戻る。

「おい!!」

 結局、怒る羽目になりました。

「ゴメンなさいぃ。なのでゲームの取り上げは辞めてくださいぃ」

 と、泣きついてくる。
 黒い涙が徐々にジーンズに染みてきている。
 習字をしたいわけでは無いのだが。

「分かった! 分かったから泣くな! 帰ってきたらゲームは返すから、な?」
「ありがとうございますぅ!!」
「まぁ、やり過ぎるのは控えろって事だ」
「分かりました。控えます」

 その顔は適当に言ってるだけで本心では無いと思うがこれ以上、掘り返すのも辞めておこう。

「よし。なら行くぞ!」

 時刻は昨日より、少し遅い十時。
 今日も母親がリビングでゴロゴロしているのはリサーチ済みだ。

『魔王様。おけ。行くぞ!』

 後ろを振り返るように見ながら、引き戸を一気に開ける。

 バンッ

 何かにぶつかる。
 少し弾力があるのか後ろに跳ね返る。

『おい、これ不味くないか!?』

 魔王様が念話で不安そうな声を出す。
 これは不味い……。

 どうしよう!!

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