元、チート魔王が頼りない件。

雪見だいふく

帰ってきた

 まぁ、結果は見えていた。
 武術でも勝り、魔法も使いこなせる、俺が負けるはずもなかった。

 ファイア! より、少し威力が上がったような魔法で倒したのだが、燃えていく時に、凄くリアルだったので怖かった。

「勝利、おめでとうございます!!」

 テレビでよく聞くような、歓喜の声が上がる。
 変な夢だなぁ……。

「それでは、勝利報酬です!」


 ――――――
 ――――
 ――


 ピヒピピピピピ

 スマホのアラームが鳴る。あぁ、いいところだったのに……。
 報酬って、何だったんだろうなー……。気になる!

 そう思いながら、準備を済ませ、学校へ向かった。

「おっはよー!」
「おはよ」

 胡桃が、後ろから元気に声をかけてくる。幼馴染を疑いたくはないけど……。こいつが、勇者と契約したのか? でも、有り得ないよなぁ。

 少し考えながらも、表情には出ないようにした。

 そして、学校へ到着した。

 ロッカーに物をしまい、自席に着く。
 その時、こんな噂が聞こえてきた。

「最近、ここら辺で火事が起きたんだって」
「あー、見た見た。T〇itterにあったよなー」

 ふーん。火事なんて、起きてるのか。気を付けねぇと危ないな。

 しばらくすると、授業も始まり、あっという間に学校が終わる。


「「「「さようなら」」」」

 俺は少し誰かと話したあと、外に出る。
 門を右に曲がると……。

 バンッ

「あっ……すみません」

 誰かの胸に顔が当たる。
 身長高いな……。

「おおっ! 待ってたぜ」

 待ってた……? こんな太い声のやつ知らねぇよ。不審者か人違いか?
 俺は、恐る恐る上を向く。

「へっ?」
「俺だよ。俺」
「誰だよ! ……あ。すみません」

 初対面の人にキレキレのツッコミを入れてしまったぜ。

「それだよ。それ! 俺は『ヴァイス』だ」
「魔王様!?」
「あぁ。砦を取り返したことにより、力をほとんど取り返したからな。しかもだ……。あと、一つでも砦を取り返せば、魔界から直接攻めても大丈夫そうだ!」
「マジか! なら、さっさと終わらせんぞ!」
「本当に感謝だぜ! こんなにも早く、この体に戻れるなんてなー」
「それは、いいけどさ。砦が取り返されたりはしないのか?」
「お前が早く取り返してくれたおかげでな! こんくらいの戦力になれば、まず、取り返されることはねぇぜ」
「っしゃぁ!」
「まぁ、こんな所で話すのも嫌だし、お前の家にでも行こーぜ」
「おう!」

 色々と話していると、家に着く。

「ていうかさ」
「ん? どうした」
「家に着いてから思ったんだけど。お前、その体格であのロッカーに入るの?」
「あっ……。ベットに入れて下さいよぉ」
「断固拒否。俺はノーマルだ」
「ロッカーを少し広く……」
「お前がいいなら、それでいいけどさ。てか、バイトでもしてアパートで暮らせば?」
「そ、それもいいんだけどさ。ま、まぁ、とりあえず家に入ろうぜ」
「あ、あぁ」

 いや、寒い気持ちは分かるんだけどさ。何で、あんなに動揺してんだよ。
 俺の部屋に急いで入り、暖房を早急に付ける。

 わぁー。人間界に馴染んでるなぁ。

「で、働いたらどうだ?」
「それよりさー! 砦の事なんだけど」

 何か。こいつの考えてることが分かったきがする。

「……働いたらどうだ?」

 魔王様はゴホンとわざとらしい席をした後に……。

「あえて言わせてもらう。俺はな――」
「お前は?」
「『働いたら負けだと思ってるんだ』」
「誇らしげに言うことじゃねぇだろ!」

 俺のツッコミが魔王様の頭に炸裂した。

「痛てぇ……」
「ごめんごめん」
「家を燃やすぞ」
「やめろ!」
「嘘に決まってんじゃん!」

 うぜぇ! 成長と共に磨きがかかっていやがる!

「まぁ、働かないのはいいとして……。いや、良くはないんだけど。それより、俺。もう一人、勇者のアテを見つけちまったかもしれない」
「マジか!? なら、さっさと終わんじゃねぇか! しょぼい勇者だな! フハハハハハハ」

 一度、追い詰められてた魔王とは思えないな。

「で、その相手なんだけどさ。お前にも話したことあったっけな? 俺の幼馴染なんだよ」
「あぁ。初めて、会った時から愚痴ってたやつだろ?」
「そんなこともあったっけ? まぁ、いいんだけど。そいつが怪しいと睨んでる」
「なら、さっさと終わらせるか!」
「いや、俺もそう思ったんだけどさ。特定みたいた感じで、人の方から、そいつの魔界へのゲートを探すことって可能なのか?」
「大丈夫だぜ。俺が本人に接触すれば。の話だけどな」
「具体的にどれくらい接触すればいいんだ?」
「そうだな。今の力なら、話すくらいで大丈夫だ」
「なら、道案内か何かのついでで話してこいよ」
「どこにいるんだ?」
「六時頃にバス停とか……? 自分の飯ついでに、今日行ってこいよ」

 そう言い、俺は自分の財布を渡した。

「全部は使うなよ……」
「分かってるってぇ!」

 あー……怖いな。そう思いながら財布を預けた。

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