とある学園生活は制限付き能力とともに

りゅう

当夜とヴィオラ














「ティナちゃん、そっちいった」

「わかって…る…」

花実にそう答えてティナちゃんは勢いよく水中から飛び上がりボールを弾く。

「ティナちゃんナイス!あとは任せて」

ティナちゃんが高く上げたボールを花実が僕達の方に叩きつける。

「ダイナ、頼む」

「わかってます」

ダイナはアンダーハンドで上手いことボールを拾う。

「緑先輩、お願いします」

ダイナが上げてくれたボールを僕がオーバーハンドで繋ぎ緑先輩にトスを上げる。

「任せて」

緑先輩が勢いよくボールを叩き敵側の水面にボールをぶつける。こちら側の得点だ。

「痛いのかしら」

水面に叩きつけられてバウンドしたボールは杏奈先生の横で浮き輪に乗って浮かんでいたヴィオラ先輩の顔面に当たった。

僕達がプールにやってきてから約一時間、杏奈先生とヴィオラ先輩は浮き輪に乗って浮かびながら僕達の試合を観戦していた。チームは僕、ダイナ、ゆき姉、緑先輩のチームと花実、ティナちゃん、ミカさん、百合子先輩のチームだ。楓先輩と志穂先輩は2人でずっとウォータースライダーを行き来していた。よく飽きないな…何十周目だあれ…

「じゃあ私はそろそろ上がるのかしら…」

ヴィオラ先輩が花実にボールを渡しながら言う。

「当夜君が心配なんですね…」

杏奈先生がニヤニヤしながらヴィオラ先輩に言う。

「そんなことないのかしら…ちょっと疲れたから部屋に帰って休もうと思ってるだけなのかしら」

ヴィオラ先輩は慌ててそう答えて浮き輪をしまいプールから出て行く。

「全く素直じゃないんですから〜」

杏奈先生はニヤニヤしながらそう呟きプールから出て行くヴィオラ先輩を見送る。

「なんなのかしら…そんなに私が当夜のことを心配するのがおかしいのかしら…」

ヴィオラ先輩は服に着替えながらそう呟いた。

「ふん…どうでもいいのよ……」

着替え終わったヴィオラ先輩はそう呟きながら更衣室を後にした。






「当夜、起きてるのかしら?」

ヴィオラ先輩は当夜先輩の部屋のベルを鳴らしながら尋ねる。

「ん、ヴィオラ…どうしたの?」

当夜先輩がまだ体調の悪そうな感じの声でヴィオラ先輩に尋ねる。

「せっかくこんないいホテルに来てまで酔い潰れている誰かさんが暇してるといけないから様子を見に来てやったのよ…はやく扉を開けるのかしら…」

「あっうん。ありがとな…」

当夜先輩はそう言いながら部屋の鍵を開けた。扉の鍵が開いたのを確認したヴィオラ先輩は当夜先輩の部屋に入る。

「これ、飲むといいのよ…なんか欲しいものはあるかしら?」

ヴィオラ先輩が当夜先輩が横たわっているベッドの横にスポーツドリンクを置きながら尋ねる。

「ありがと…今は特に何も…」

「そう。何か欲しくなったら言うのかしら…」

ヴィオラ先輩は当夜先輩にそう言いながら当夜先輩のベッドの横にあった椅子に腰掛けて持って来ていた本を開く。

「ヴィオラ、ありがと…でも僕なんかほっておいて遊んで来なよ。せっかくこんないいところに来れたんだから…」

「お前の体調が良くなったら一緒に遊ぶのよ…だからはやく治すのかしら…まったく、少し長い時間車に乗ったくらいでだらしない…」

「ごめん…」

「悪いと思ってるならさっさと休んでさっさと治すのかしら…酔いが覚めたら軽くボーリングでもやるのよ…」

「全然軽くないと思うけどわかった。酔いが覚めたらボーリングな…」

当夜先輩はヴィオラ先輩にそう言い残し少しの間眠りに就いた…

「まったくなのよ…」

当夜先輩が眠ったのを確認してヴィオラ先輩は当夜先輩の手を握った。

それから数時間後、すっかり体調が良くなった当夜先輩はヴィオラ先輩と数時間ぶっ通しでボーリングをして今度は肩の調子が悪くなった…

















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