とある学園生活は制限付き能力とともに

りゅう

前日と当日














「晴樹、白雪姫とやるって本当?」

楓先輩が第11番基地の扉を勢いよく開きながら僕に尋ねる。

「え、あっ、はい。本当ですよ」

「よし、絶対に白雪姫に黒星を付けてやりなさい!」

「全く、騒がしいやつなのかしら…」

僕の肩を勢い良く叩いて勝てと要求してくる楓先輩を見てヴィオラ先輩が呟く。

「楓先輩、痛いです…」

「あっ、ごめん」

「楓ちゃん、去年のランキング戦で白雪姫に瞬殺されちゃったから楓ちゃんの代わりに白雪姫を倒してきて欲しいのよね?」

楓先輩の後に入って来た志穂先輩が笑いながら言う。

「ちょ、志穂…べ、別に瞬殺されたわけじゃないじゃない…」

「開始30秒で負けちゃったのは瞬殺されたっていうと思うんだけど…」

「志穂、みんなの前で変なこと言わないでよ」

「あらあら、ごめんなさい」

志穂先輩、絶対わざとだろ……それにしてもゆき姉楓先輩を瞬殺したのか…ぶっちゃけ楓先輩はかなり強いと思う。その楓先輩を瞬殺したゆき姉を倒すとかかなりきつそうなんだけど…

「白雪姫と…やるなら…先手必勝……」

百合子先輩が小さく呟く。先手必勝?どういうことだ?

「百合子先輩…どういうことですか?」

「白雪姫は…時間が経てば経つほど…強くなる…いや、正確には…こっちが…弱くなる…」

「えーと、どういうことですか?」

「白雪姫が放つ冷気で周囲が寒くなって動きが鈍るのよ…」

楓先輩が百合子先輩の言っていたことを補足してくれる。

「でもそれなら白雪姫も動きが鈍るから条件は一緒なんじゃ…」

「白雪姫は寒さを感じないのかしら…そのかわり暑いのが苦手みたいなのよ」

花実の意見をヴィオラ先輩は一瞬で否定した。

「まあ、つまりこっちの動きが鈍る前に決着をつけないといけないってこと。あと、勝てるとしたら今回が1番のチャンスだからね…ぶっちゃけ今回負けたら白雪姫には2度と勝てない…」

「どういうことですか?」

「今回白雪姫にはあなたの能力は伝えられてないの、だから向こうは対策ができない…」

「なるほど、能力が知られていないというアドバンテージがあるにもかかわらずに負けたら次も勝ち目はないと…」

「まあ、あんたの場合は別かもしれないけどね」

楓先輩が笑いながら言う。たしかに僕の能力には対策とかあんまりできないよな…

「まあ、明日の前哨戦頑張りなさいよ」
「応援してるわ」
「頑張って…」
「頑張れ」
「まあ、頑張るといいのよ」

その場にいた楓先輩、志穂先輩、百合子先輩、花実、ヴィオラ先輩が僕を応援してくれる。なんか嬉しいな…

「はい。頑張ります!」

翌日、ランキング戦前哨戦が幕を開ける。
昨日志穂先輩から教えてもらったのだが今回の前哨戦は神峰学園領土内で生放送されるらしい。普段のランキング戦は注目されている戦いだけが放送されるようだが今回は1戦しかないため自動的にこの戦いが生放送されることになった。

「晴樹、今日はよろしく…」

「ゆき姉…」

「ちゃんと返事は考えてきた?」

「うん。考えてきたよ…」

「そう。じゃあ、後で聞かせてよ」

「わかってるよ」

「あと、今日の前哨戦が終わったら一緒に夜ご飯食べに行きましょう。前哨戦でお金も入るし奢ってあげる」

「お金?もらえるの?」

「あれ?もしかして知らなかったの?今回の前哨戦は生放送されるのは知ってるでしょ?それでスポンサーとかがつくから学園側は結構儲かってるのよ。だからその1部を対戦者にも渡すことになってるの…額はランキング戦の規模によって変わるけど前哨戦はこれくらいかな」

「結構もらえるんだね…」

「今一番注目されてる戦いだからね。普段はこんなに入らないわよ」

普段は生放送された試合でのみお金がもらえるらしい。だからみんな注目されるように頑張るそうだ…ゆき姉はランキング戦でかなり稼いでるらしい…

「そろそろ時間ね…行きましょう」

ゆき姉がそう言いながら僕の手を引っ張る。僕はゆき姉に連れられて広い部屋に来た。部屋の中には頭につける変な機械があった。

「これを付ければバーチャルリアリティ空間に飛ばされるから」

ゆき姉はそう言いながら機械を頭に付けた。その後ゆき姉に話しかけても返事はない。どうやらバーチャルリアリティ空間にいる間は眠っているような状態になるみたいだ。

「晴樹様もはやく準備をお願いします」

部屋にいた警備員の人が僕に言う。部屋の中には男性の警備員が3名、女性の警備員が3名、そしてランキング戦の実行委員の方が2名いる。これなら安心してバーチャルリアリティ空間に入れるな…

僕はそう思いながら機械を頭に付ける。気づくと僕は広い闘技場のような場所にいた。周りには観客がいて目の前にはゆき姉がいた。


















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