異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。
聖剣、衝撃の展開
すっかり意気消沈した僕達とは対象的に、対面に座っているティエル女王はニコニコと上機嫌だ。
「はあ、約束したものは仕方がないです」
僕は気持ちを切り替えて、ティエル女王に詳細を尋ねる。
「それで、その賊はいつも何時頃にやってくるんですか?」
僕の質問に、ティエル女王は顔を引き締めて答えてくれた。
「やってくるのは真夜中ですね。闇夜に紛れて都に侵入しているようです。何度か聖剣を抜かれそうになったんですけど、聖剣は相当硬く神樹に突き刺さっているようで、モタついている間に発見、撃退したんですよ」
なるほど、これがあっさり抜けるような代物なら、とっくにこの世界は激変していたというわけか。ゾッとしない話だ。
「しかし、何故ダークエルフの人たちはそんな事を? 聖剣の役割を知らないんですか?」
「いえ、これはエルフ族全体の常識ですから、当然ダークエルフ達も知っていることです。知っていて尚実行しようとしているのですから、何か事情があるのかもしれませんが、使者を出しても門前払いの有様でーー」
ふうむ、おかしな話だ。トラムスの事も気がかりだし、この件は一筋縄では行かなそうだぞ。
「あの、女王様。それで事件解決の暁には聖剣を貸与して頂けるのですか?」
リアが、気になっていた事を聞いてくれた。
「それはもちろん。あなたは神託の勇者ですから、聖剣が拒む事もないでしょう」
「あの、リアが引き抜いたら神樹が死んでしまうなんてことは……」
神樹を守りきった所で、結局貸してもらえないのでは意味がない。そう思ったのだが、ティエル女王はふるふると首を緩やかに振って否定した。
「神樹は、資格あるものとの繋がりを聖剣に宿しています。神託の勇者であるリアが、聖剣を抜いても何も問題はないでしょう」
ティエル女王のお墨付きをもらって、僕らは安心する。
「もし良ければ、その聖剣を見せていただきたいのですけれど……」
リアのお願いに、ティエル女王はたおやかに微笑んで頷く。
「ええ、今夜守ってもらう所ですものね。ご案内します」
ティエル女王が立ち上がる。僕らも慌ててそれにならい、しずしずと歩いていく彼女についていく。
神樹の中を、上へ上へと登っていく。しかしどこまで行っても先細っていくような感覚は無く、何層ものフロアを上がっていく。この中で一番体力のなさげなモモが、息を上がらせそうになった頃。それは見えた。
何人かの衛士がティエル女王に最敬礼し、出迎える。
ティエル女王が壁面から飛び出している棒のようなモノの前に立ち、僕達を振り返る。
「こちらにあるのが神樹の要、“聖剣ウドゥルー”です」
「これが……」
僕達は引き込まれるようにその飛び出している棒状の部分に集まり、それが棒ではなく剣の柄で有ることを知った。剣身は全て神樹に飲み込まれているのだろう、しかし鍔つばの形と大きさから、これが噂に違わぬ大剣であることが解る。
「呼んでる……」
「えっ?」
不可思議な事を呟いたリアが、何かに取り憑かれたように剣の柄を両手で握りしめた。
「うん……そう……だから、私なんだね」
目を瞑りながら、ぶつぶつとまるで誰かと会話しているような状態のリアが心配になり、思わず止めに入ろうとした所を、ティエル女王に押し止められた。
「ティエル女王?」
何をするのかと思わず憤りそうになったが、ティエル女王はにっこりといつもの微笑みを浮かべる。
「今は様子を見守りましょう」
衛士達も何が起こっているのか解らず、オロオロとティエル女王の方をうかがう。しかしティエル女王は皆に微笑むだけで落ち着けてしまった。これが女王の信頼と威厳なのか、と感心していると。
「うん、解った……あなたを、解き放ってあげる!」
語りかけていたリアが目を開け、決意の言葉と共に柄を握っていた手に力を込める。
「せぃやああああぁぁぁぁ!!」
裂帛の気合と共に、足を踏ん張り、一気に聖剣を引き抜く。
バキンッ!!
「えっ!?」
それは誰が発した声だっただろう。
凄まじい重圧を伴った沈黙が、場を満たしていく。
そんな中でも空気読まない筆頭候補のモモが、リアの手にある物を指さして叫んだ。
「聖剣、折れちゃってるのですー!!」
その一言に、再起動した衛士の皆さんは殺気のこもった目で僕達を一斉に取り囲んだ。抜剣した剣先をこちらに向け、口角泡を飛ばす勢いで怒鳴る。
「貴様らっ、我が国の、引いては世界の要たる神樹の聖剣を、こともあろうに、お、お、折るとはあぁぁっ!?」
「おいっ、リア、どういうことだっ!? 何か話してたんじゃなかったのかよ!!」
「ちょっと力の入れ方を間違えたみたいね」
「軽いっ!? そんな言葉で済む問題かっ!?」
僕らが言い合っている最中、ティエル女王が非常に困ったような顔で近づいてきた。
「まさか、聖剣が折れるなんて予想外ですねー。確かにこれではダークエルフ達も盗む事は出来なくなりましたが……」
僕は脂汗をダラダラ流しながら、ティエル女王にたずねた。
「あ、あの、これで神樹が死んでしまうなんてことは……」
「わかりません、まさに前代未聞ですし、こうなっては女王権限でもっても無罪放免とはいきませんねー」
困りました、と言わんばかりに溜息をつくティエル女王。
女王と入れ替わるように衛士達に完全に取り囲まれ、押さえつけられる僕達。
「大人しくしろ、貴様らの沙汰さたは追って女王陛下から下されるだろう!」
その日。僕とリアとモモは神樹の最下層にある牢屋にぶち込まれる事になったのだった。
どうしてこうなった。
「はあ、約束したものは仕方がないです」
僕は気持ちを切り替えて、ティエル女王に詳細を尋ねる。
「それで、その賊はいつも何時頃にやってくるんですか?」
僕の質問に、ティエル女王は顔を引き締めて答えてくれた。
「やってくるのは真夜中ですね。闇夜に紛れて都に侵入しているようです。何度か聖剣を抜かれそうになったんですけど、聖剣は相当硬く神樹に突き刺さっているようで、モタついている間に発見、撃退したんですよ」
なるほど、これがあっさり抜けるような代物なら、とっくにこの世界は激変していたというわけか。ゾッとしない話だ。
「しかし、何故ダークエルフの人たちはそんな事を? 聖剣の役割を知らないんですか?」
「いえ、これはエルフ族全体の常識ですから、当然ダークエルフ達も知っていることです。知っていて尚実行しようとしているのですから、何か事情があるのかもしれませんが、使者を出しても門前払いの有様でーー」
ふうむ、おかしな話だ。トラムスの事も気がかりだし、この件は一筋縄では行かなそうだぞ。
「あの、女王様。それで事件解決の暁には聖剣を貸与して頂けるのですか?」
リアが、気になっていた事を聞いてくれた。
「それはもちろん。あなたは神託の勇者ですから、聖剣が拒む事もないでしょう」
「あの、リアが引き抜いたら神樹が死んでしまうなんてことは……」
神樹を守りきった所で、結局貸してもらえないのでは意味がない。そう思ったのだが、ティエル女王はふるふると首を緩やかに振って否定した。
「神樹は、資格あるものとの繋がりを聖剣に宿しています。神託の勇者であるリアが、聖剣を抜いても何も問題はないでしょう」
ティエル女王のお墨付きをもらって、僕らは安心する。
「もし良ければ、その聖剣を見せていただきたいのですけれど……」
リアのお願いに、ティエル女王はたおやかに微笑んで頷く。
「ええ、今夜守ってもらう所ですものね。ご案内します」
ティエル女王が立ち上がる。僕らも慌ててそれにならい、しずしずと歩いていく彼女についていく。
神樹の中を、上へ上へと登っていく。しかしどこまで行っても先細っていくような感覚は無く、何層ものフロアを上がっていく。この中で一番体力のなさげなモモが、息を上がらせそうになった頃。それは見えた。
何人かの衛士がティエル女王に最敬礼し、出迎える。
ティエル女王が壁面から飛び出している棒のようなモノの前に立ち、僕達を振り返る。
「こちらにあるのが神樹の要、“聖剣ウドゥルー”です」
「これが……」
僕達は引き込まれるようにその飛び出している棒状の部分に集まり、それが棒ではなく剣の柄で有ることを知った。剣身は全て神樹に飲み込まれているのだろう、しかし鍔つばの形と大きさから、これが噂に違わぬ大剣であることが解る。
「呼んでる……」
「えっ?」
不可思議な事を呟いたリアが、何かに取り憑かれたように剣の柄を両手で握りしめた。
「うん……そう……だから、私なんだね」
目を瞑りながら、ぶつぶつとまるで誰かと会話しているような状態のリアが心配になり、思わず止めに入ろうとした所を、ティエル女王に押し止められた。
「ティエル女王?」
何をするのかと思わず憤りそうになったが、ティエル女王はにっこりといつもの微笑みを浮かべる。
「今は様子を見守りましょう」
衛士達も何が起こっているのか解らず、オロオロとティエル女王の方をうかがう。しかしティエル女王は皆に微笑むだけで落ち着けてしまった。これが女王の信頼と威厳なのか、と感心していると。
「うん、解った……あなたを、解き放ってあげる!」
語りかけていたリアが目を開け、決意の言葉と共に柄を握っていた手に力を込める。
「せぃやああああぁぁぁぁ!!」
裂帛の気合と共に、足を踏ん張り、一気に聖剣を引き抜く。
バキンッ!!
「えっ!?」
それは誰が発した声だっただろう。
凄まじい重圧を伴った沈黙が、場を満たしていく。
そんな中でも空気読まない筆頭候補のモモが、リアの手にある物を指さして叫んだ。
「聖剣、折れちゃってるのですー!!」
その一言に、再起動した衛士の皆さんは殺気のこもった目で僕達を一斉に取り囲んだ。抜剣した剣先をこちらに向け、口角泡を飛ばす勢いで怒鳴る。
「貴様らっ、我が国の、引いては世界の要たる神樹の聖剣を、こともあろうに、お、お、折るとはあぁぁっ!?」
「おいっ、リア、どういうことだっ!? 何か話してたんじゃなかったのかよ!!」
「ちょっと力の入れ方を間違えたみたいね」
「軽いっ!? そんな言葉で済む問題かっ!?」
僕らが言い合っている最中、ティエル女王が非常に困ったような顔で近づいてきた。
「まさか、聖剣が折れるなんて予想外ですねー。確かにこれではダークエルフ達も盗む事は出来なくなりましたが……」
僕は脂汗をダラダラ流しながら、ティエル女王にたずねた。
「あ、あの、これで神樹が死んでしまうなんてことは……」
「わかりません、まさに前代未聞ですし、こうなっては女王権限でもっても無罪放免とはいきませんねー」
困りました、と言わんばかりに溜息をつくティエル女王。
女王と入れ替わるように衛士達に完全に取り囲まれ、押さえつけられる僕達。
「大人しくしろ、貴様らの沙汰さたは追って女王陛下から下されるだろう!」
その日。僕とリアとモモは神樹の最下層にある牢屋にぶち込まれる事になったのだった。
どうしてこうなった。
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