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異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。

N通-

女王はしたたかです。

 神樹。それは世界創造の時に誕生したと言われる始まりの生命。全ての命はここから生まれ、また死した命はここに還ると伝説にある。また、大気に満ちるマナを生み出しているのも神樹であり、神樹が失われると世界から魔法が消え失せるのだという。

 ……以上の説明を今リアから受けた。

「それで、そんな大事な樹を救って欲しいとは、どういうことなんですか?」

 僕達は今、応接室のような場所に通され、ソファーに身を沈めている。僕、リア、モモの順に座り、対面にティエル女王が座っていて、お茶で唇を湿らせてから彼女は口を開いた。

「実は、この神樹には聖剣が奉納されているのですが、最近その聖剣を狙った賊が現れるようになったのです」

「聖剣……? それって、もしかして!」

 期待のこもった眼差しをティエル女王に向けると、真剣な眼差しで頷いた。

「そうです。あなた方が届けてくださった、このテレシー国王の書状にある我が国の聖剣、“ウドゥルー”に危機が迫っています」

 リアと顔を見合わせ、また視線をティエル女王に戻した。

「具体的にはどういった危機なんですか?」

「聖剣“ウドゥルー”は、ただの剣ではなく、鍵なのです。この神樹の宮殿の最奥に安置……いえ、神樹に深く柄まで突き刺さっているのです。古いにしえの伝承では、資格あるもの以外がその聖剣を抜くと、神樹が死んでしまう、と言い伝えられています」

 まさにファンタジーな内容で、僕は不謹慎にも胸が踊ってしまう。

「最近、その聖剣を狙って引き抜こうとした賊が現れたのです。一応警備のものを増やしましたが、相手は相当な手練らしく、追い返すのがやっとという有様でして……」

 僕はかすかな疑問を抱いた。

「それって、別に撃退出来ているなら大丈夫なんじゃないですか?」

「そうもいかないのです。何しろもう100年近く狙ってきてますから、兵士の士気も下がっていく一方で……」

 時間の感覚の違いに僕達は仰天する。まさか、そんな長期間狙ってくる相手がいるとは思いもしなかった。

「しかし、長寿の民であるエルフはともかく、相手も相当長生きな種族なんですね……」

「ええ、私達もそこが気になって。もしかしたら彼女達かもしれない、と……」

 どうやらティエル女王は犯人に心当たりがあるらしい。

「誰なんですか?」

「ダークエルフと、一般的には呼ばれています。しかし肌が黒いだけのただのエルフの亜種族なんですけれど」

「仲が悪いんですか?」

 ティエル女王は困ったような笑みを浮かべて、説明してくれた。元々はエルフは多少の差異はあれど種族同士、この場合は部族同士と言った方が適切か、仲良く暮らしていたらしい。しかし、人間達の最近の文明化、発達具合を見て、若いエルフ達が中心になって国を起こすべしとなり、このルイア王国が誕生したそうだ。

 しかし、それはすんなりと行ったわけではないらしい。純血主義と呼ばれる、エルフの中でも最も過激な思想を持つ一派が頑として反対。ルイア王国の傘下に下るのすら拒否し、その部族だけが独立して生活していくようになった。それこそがダークエルフと呼ばれる種族とのこと。

「彼女達も極度の少子化で困っているはずなのに、エルフ以外の血を受け付けないと言って……。度々我が国の男子をさらっていくような真似もするので困っているのです」

 この人今さらっととんでもない事言ったぞ!

「そんな、人さらいじゃないですか! 取り返しに行かないんですか!?」

「それもまた困ったことなんです」

 ティエル女王は溜息をついた。曰く、さらわれた男子はみなとても大切に扱われているため、非常に居心地が良く帰りたくないと言い出す者がとても多いのだそうな。

「なんですか、そりゃ……」

 力が抜けた。と、僕はそこであることに気がついた。

「ティエル女王、まさか“積荷”の使い方って……」

「最悪、それを差し出して諦めてもらうつもりです」

 その瞳は冷徹な女王のそれになっていて、僕は憤りを感じずにはいられない。しかし、僕以上に怒りを覚えている人間がすぐ横にいた。

「何てことを!? あの子はモノ何かじゃないのよ!!」

 思わずソファーから立ち上がり、ティエル女王を睨むリア。僕は頭に手を当てて首を振る。

「勇者リアは“積荷”の中身について知っているような口ぶりですね?」

「あっ……」

 そう。僕達は彼の、トラムスの事を知っていてはいけないのだ。

「これは明確な契約違反、御者のドレンさんとやらにも事情を聞く必要がありそうですね」

「ド、ドレンさんは関係ないんです! 僕達が勝手に開けちゃって!」

「彼女はギルドから正式に依頼を受け、鍵も彼女が持っていたはずです。それなのに勝手に開けたのですか? どうやって?」

「う、うう……」

 ティエル女王は先程までののんびりした雰囲気を微塵も感じさせない、氷のような瞳でこちらを射抜いている。

 リアが泣きそうな表情で僕に助けを求めてきた。そんな顔をするぐらいならもっと考えてから話そうよ……。僕は、腹をくくった。

「すみません、契約を違反しました。しかし、これは僕達勇者の使命と考えています」

「使命……ですか」

 短く反芻するティエル女王に、僕は畳み掛けるように言い訳を並べ立てる。

「僕達はみすみす目の前で困難に陥っている人間を見過ごす事なんて出来ません。それが、勇者としての生き方だと、僕は思います」

「しかし行動にはそれ相応の責任が伴います。あなた方が勇者としての使命で動いたというのなら、勇者として責任を取って頂けますね?」

「はい。その賊とやらを捕らえ、もう二度とちょっかいを出せないようにします」

 まっすぐ見据えてくるティエル女王。以前のようにこちらの心の内を探られているんじゃないかとじっとりと汗がながれる。しかし、僕は嘘を言っているつもりは一切ない。

 不意に、ニッコリとティエル女王は微笑んだ。

「あーよかった。それでは快く引き受けてくださいますね? これで肩の荷が一つ下りました」

 とんとん、と肩を叩く真似をするティエル女王に唖然とした後、僕はわなわなと震え、そして叫んだ。

「は、ハメられたああああああああ!?」

「異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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