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異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。

N通-

心の中

 馬車が高級だと、乗り心地まで違うんだなと言うことを僕は実感していた。何しろ、ほとんど揺れらしきものを感じないのだ。

「凄い馬車ですね……」

「あら、ありがとうございます。これも我が国の職人達ががんばって作ってくれた魔道具の一種なんですよ」

「えっ、これ魔道具なんですか!?」

 魔道具で馬車作るって、どれだけ凄いんだルイア王国は。驚いている僕に、リアがこそって耳打ちしてきた。

(ルイア王国は魔道具の一大生産地として有名なのよ。古代の技術も継承されているから、ここでしか生産出来ない魔道具も多いの)

 なるほど、よく解ったんだけど耳がこそばゆいからそんなに引っ付かないで欲しい。その様子を見ていたティエル女王は微笑ましそうににこにこしている。

「あらあら、勇者様方は大変仲がいいのねー。妬けちゃうわー」

 全く悪意なく言っているのだろうけど、僕は余りの恥ずかしさに顔が熱くなった。隣のリアも真っ赤にしている。照れている僕らに、モモが大きな声を上げた。

「二人はとっても仲良しなのですー!」

「あらあら、そうなのねー。ウチの国の子達大丈夫かしら?」

「あのー、ルイア王国は排他的って聞いてたんですけど……」

 僕の疑問に、ちょっと小首を傾げてティエル女王は困ったように頬に手を当てて答える。

「排他的……昔はそうだったのよね。でも、それじゃあ一族が衰退していくばかりだって声が大きくなって、今じゃもう逆に……」

「逆に……何ですか?」

「うふ、それは国についてからのお楽しみよー」

 そこはかとない不安を掻き立てる女王の笑顔に、僕は苦笑するしかなかった。

「ところで、この子はドラゴン様の加護を受けているようですね?」
 ふと、ティエル女王は隣に座っているモモの頭を撫でながらズバリと言い当てる。それに驚きながらも、僕らは頷いてモモを預かるに至った経緯を説明した。もちろん、ドラゴンの寿命の事は隠しながら。

「なるほど、そのような事情があったのですね。それでこの子はどうするおつもりなのです?」

「一緒に旅を続けようと思います。誰かに預けるのもどうかと悩みましたけど……、でも、僕は彼女と一緒にいたいですから」

「マサヤ! モモを置いてくのです!?」

 話半分に聞いていたモモが、急に反応して僕にガバッとしがみついてきた。

「置いていったりしないよ? だから安心して」

「なのですー」

 モモは安心した顔ですりすりと僕の胸に顔を埋めてくる。それがちょっとくすぐったいけれど、可愛いからたまらない。横から視線を感じたのでチラと確認すると、リアがむくれていた。おいおい、子どもに対抗心燃やさないでよ……。

「あらあら、勇者様はおモテになるのですね。流石です」

「何が流石かはわかりませんが、その勇者様っていうのはやめて頂けませんか? 僕は平民ですし……」

 正直、女王と呼ばれる程偉い人に様づけで呼ばれる度に恐縮してしまう。すると女王様は意外そうな顔をしたが、すぐに柔和な笑顔になった。

「マサヤ殿は謙虚ですねえ。でもあなた方は人類の“希望”なのですよ? 崇敬の念を抱かれるのは必然かと」

 ティエル女王様の目が、真っ直ぐに僕を見据えて僅かに光った……気がした。“希望”という言葉が、ずっしりと重く肩にのしかかってくる。今まではお気楽な旅をしてきたが、この先はより過酷になっていくだろう。親しくなった人、お世話になった人も今やたくさん出来た。

 その人達が魔族やモンスターに蹂躙されたらと考えると、言いようのない不安感が僕を押しつぶそうと、逃げ出させようと囁いてくる。

(お前は所詮ただの高校生、何が出来るっていうんだ? ほら見てみろよ。お前が情けないばかりにみーんな死んでしまった)

 嫌だ。見たくない

(現実を見ろ! お前が助けに来るのを待って、信じて、苦しんで死んでいった人間たちを見ろ!)

 違う、皆まだ生きている!

(お前が弱かったから皆死んだ! 認めろ、自分の弱さを! そしてすぐに異世界に帰れ!)

 帰れない、帰れるわけがない! 僕は勇者なんだ、みんなのことを絶対に守ってみせるんだ!

(弱いくせに?)

 なら強くなってやる。誰も彼も、リアもモモも、みんなみんな守れるくらいに強くなってやる。勇者として、この剣と共に!

(その強がりがいつまで続くかな)

「続くさ、いつまでも。僕には頼りになる仲間達がいるんだから!!」

 僕の声に、ビクッとリアとモモが反応した。

「マ、マサヤ? どうしたの急に……? ボーッとし始めたと思ったら急に大声を上げたりして」

「えっ? 僕ぼーっとしてた?」

「ええ、呼びかけても曖昧な返事しかしないし……」

「マサヤ、大丈夫なのです?」

「ああ、大丈夫だよモモ」

 しかし今のは何だったんだ、幻覚……なんだろうか。すると、正面にいるティエル女王と目があった。彼女は目を伏して、そのまま頭を深く下げる。

「えっ!? じょ、女王様!?」

 いきなりの行動に慌てていると、女王は驚くべきことを明かした。

「ごめんなさい、マサヤ殿。あなたの心を覗き込んで試してしまいました。傷つけてしまったこと、深くお詫びします」

「試した……? じゃあさっきのは幻覚じゃなくて」

「そうです、私の精神魔法です。あなたの勇者としての資質を知りたかったのです」

「何てことを!」

 ガタリ、と音を鳴らして怒りに身を震わせるリアが女王を糾弾する。

「本人の許可もなく心を覗くだなんて、幾らティエル女王でも許されることではありませんよ!?」

「このお詫びはいかようにも。今は、とにかく、あなたの心のありようを知れて良かったと思います」

 後悔の念と、同じくらいの喜びを混ぜた複雑な表情でティエル女王は僕を見つめる。

「僕に、勇者の資質はありましたか?」

 穏やかに尋ねる僕に、横にいたリアがまたしても声をあげようとしたが、それを手を上げて止める。

「ええ。あなたは今は弱い。まだまだ蕾の状態でしょう。でもその蕾はすぐに大輪の花を咲かせると信じられました」

 女王の答えに、僕は静かに目を閉じ、呟いた。

「良かったです――」

「ふんっ」

 リアはご機嫌ななめのまま、席に座り直した。どうやらまだ女王の行為を許す気にはなれないのだろう。だが彼女は優しい子だ。すぐにティエル女王と仲直りしてくれると、僕は信じている。

「さあ、そろそろ夕飯時ですね。食事の用意は我々がしますので――」

 ティエル女王の言葉を遮って、僕は提案する。

「あの、良かったら僕らの方で用意させてもらえませんか? ティエル女王には折角ですから、僕が作ったものを振るわせて欲しいんです。こんな機会はもうないでしょうし」

 僕が作る、と聞いた女王はぱああと顔を輝かせる。

「いいのですか! それではマサヤ殿のお料理を頂きたく思います!」

 まるでモモのようなはしゃぎっぷりに、僕は笑みを浮かべて承りました、とかしこまってお辞儀をした。

 その日の晩ごはんは女王どころか騎士のみんなにも大好評で、僕の鼻も高かった。何しろ家ではずっと母親と共にずっと家事をやっていたのだ、料理の腕にはちょっとした自信がある。

 そう言えば、と僕は思い出した。妹の咲の奴はもうそろそろこちらの世界へと着いたのだろうか、と――。

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