異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。
子ども達のケンカ
「それで、君名前は?」
「無礼だぞ! 僕は高貴な身分なんだぞ、何しろエルフの男なんだから!」
うわあ、これは実に面倒くさい手合だ。少年は年の頃10歳前後かな? 綺麗に整えられた肩まである緑髪に、高級な洋服に身を固め、今はふんぞり返るように両手を組んで僕達を見上げている。
「どうしてこーきな身分なのです?」
そこへ物怖じしない性格のモモが質問しにいった。
「そ、それはそう決まってるからだ!」
「どうして決まってるのです? おとーさんからはそんな事習わなかったのです! ねえねえ、どうしてこーきだと無礼なのです?」
この年頃の子どもにはありがちななんでなんでを繰り出すモモ。しかし今までそんな事僕達にはしなかったような……。なんだろう、同年代にシンパシーでも感じたのだろうか。
「な、なんなんだこの女は! 女は僕のために尽くすものだろお!」
「どうして女だと尽くさないとダメなのです?」
「だから、そう決まってるんだよ、エルフの決まり何だよ!」
「モモはエルフじゃないのです。ドラゴンの子どもなのです」
「はん、何嘘ついてるんだよ、ドラゴンの子どもって、どう見ても人間じゃないか!」
「モモは嘘ついてないのです!」
「嘘つき! 嘘つき!」
「うー……、うー……!」
完全に子どもの喧嘩だった。そろそろ止めようかと思った所で、先にモモの我慢の限界が着てしまったようだ。
「嘘じゃないのですううぅぅぅ!!」
泣き叫んだモモは、口から炎のブレスを真上に向かって吹き出す。
『グルオオォォォォ!!』
空を焦がす熱波が、僕達の肌を炙る。それを間近で見せつけられたエルフの子は尻もちをついて震えていた。ブレスを吹き終えると今度は男の子のマネをして、腕組みをして彼を見下ろした。
「ほら! モモは嘘つきじゃないのです!!」
「お……お前一体なんなんだよ……!」
恐怖に震えながら、エルフの子はモモに問い質す。
「だからドラゴンの子どもなのです。おとーさんはすごーく強いドラゴンなのです!」
「ほ、本当なのか……」
少なくとも自分では敵わないと悟ったのか、さっきのまでの威勢はどこへやら、しょんぼりとした表情でノロノロと起き上がるエルフの子。
「それで、お名前は何て言うのです? モモはモモなのです」
「ぼ、僕はツァル・トラムス。トラムス家の一人息子だ」
なるほど、トラムス君ね。ツァルは言いにくいからな……。モモは何を思ったのか、トラムスの手を取ってブンブン振っている。
「これでモモ達は仲良しなのです」
「は、はあ? 何で僕が人間の女と仲良くしなきゃいけないんだ!」
「仲良しはなんでダメなのです?」
「なんでって、だからそれは――ちょっと、見てないでお前らも助けろよ!」
完全に傍観者に徹していた僕達は、まず一番最初にモモの所へ行く。リアは目線で手加減するように言ってきたが、今回ばっかりはちょっと厳し目に言い聞かせないといけない。
「モモ、君は僕との約束を破ったね?」
「あ、あぅ……」
「約束、覚えてる?」
「丸焼きはダメ……なのです。でもモモは丸焼きにはしてないのです」
まさかあのモモが反論してくるとは。子どもは日々成長していくんだな、なんて生意気にも思いながら、それでも僕はなるべく怖い顔を作ってモモを見下ろす。
「でも一つ間違えたらこの子は取り返しのつかない事になってたよね?」
固い声音で問い詰めると、モモは「う、うぅー……」と唸りながら縮こまる。
「モモ、自分が悪かったときはどうするか、教えたよね」
モモは、目に涙を貯めてうつむき、小さく震える声で謝罪した。
「ごめんなさいなのです……」
モモの心からの反省を受け取った僕は、それでもまだ表情を崩さないまま、もう一度約束を交わす。
「次からは約束、守れるね?」
「はいなのです……」
これでモモはもう同じ失敗はしないと信じてあげよう。
「それじゃあ、次は彼にも謝るんだ。驚かしてごめんなさいって」
モモは素直に、言われたとおりの言葉でトラムスに謝る。
「トラムス、驚かしてごめんなさいなのです」
「お……おう。もう、いいよ」
僕に怒られている所を見て、トラムスも多少怯えてしまったのか、素直に受け入れた。改めて二人は握手をして、何とも言えない空気の中トラムスは一応落ち着いたようだ。
「それでトラムス。僕の名前はマサヤ・カガリ。異世界からやってきた勇者だ」
「えっ? ゆ、勇者!?」
僕の肩書に面食らって、目を丸くしてるトラムス。
「そう。それでこっちは――」
「自分で言うわ。初めまして、トラムス。私はリア・テレシー。今代の勇者であり、テレシー王国の第一王女よ」
その名前を聞いたトラムス少年の反応は激的だった。
「勇者リア!? あの赤い死神の勇者!! す、凄い、本物なの!?」
それは憧れの英雄に直面した、純粋に少年らしいきらきらと輝いた顔をして、畏敬の念を込めて熱く見詰めている。その視線が心地よかったのか、リアは胸を張って答える。
「そうよ、私こそが赤い死神の勇者なんだから!」
「ぼ、僕、あなたのファンなんです! ずっとあなたみたいな強い人に憧れていて……!」
興奮したように捲し立てるトラムスに、リアはサービスのつもりか握手をしてあげる。それから、更に大剣を使った高速の剣舞を見せ、トラムス少年は大興奮だった。
「凄い凄い! 本物だ! 本物の勇者リアだ!」
どうやら彼の事は、リアに任せてしまえば良さげだ。僕はドレンさんと顔を見合わせると、やれやれと一緒のタイミングで首を振った。
「無礼だぞ! 僕は高貴な身分なんだぞ、何しろエルフの男なんだから!」
うわあ、これは実に面倒くさい手合だ。少年は年の頃10歳前後かな? 綺麗に整えられた肩まである緑髪に、高級な洋服に身を固め、今はふんぞり返るように両手を組んで僕達を見上げている。
「どうしてこーきな身分なのです?」
そこへ物怖じしない性格のモモが質問しにいった。
「そ、それはそう決まってるからだ!」
「どうして決まってるのです? おとーさんからはそんな事習わなかったのです! ねえねえ、どうしてこーきだと無礼なのです?」
この年頃の子どもにはありがちななんでなんでを繰り出すモモ。しかし今までそんな事僕達にはしなかったような……。なんだろう、同年代にシンパシーでも感じたのだろうか。
「な、なんなんだこの女は! 女は僕のために尽くすものだろお!」
「どうして女だと尽くさないとダメなのです?」
「だから、そう決まってるんだよ、エルフの決まり何だよ!」
「モモはエルフじゃないのです。ドラゴンの子どもなのです」
「はん、何嘘ついてるんだよ、ドラゴンの子どもって、どう見ても人間じゃないか!」
「モモは嘘ついてないのです!」
「嘘つき! 嘘つき!」
「うー……、うー……!」
完全に子どもの喧嘩だった。そろそろ止めようかと思った所で、先にモモの我慢の限界が着てしまったようだ。
「嘘じゃないのですううぅぅぅ!!」
泣き叫んだモモは、口から炎のブレスを真上に向かって吹き出す。
『グルオオォォォォ!!』
空を焦がす熱波が、僕達の肌を炙る。それを間近で見せつけられたエルフの子は尻もちをついて震えていた。ブレスを吹き終えると今度は男の子のマネをして、腕組みをして彼を見下ろした。
「ほら! モモは嘘つきじゃないのです!!」
「お……お前一体なんなんだよ……!」
恐怖に震えながら、エルフの子はモモに問い質す。
「だからドラゴンの子どもなのです。おとーさんはすごーく強いドラゴンなのです!」
「ほ、本当なのか……」
少なくとも自分では敵わないと悟ったのか、さっきのまでの威勢はどこへやら、しょんぼりとした表情でノロノロと起き上がるエルフの子。
「それで、お名前は何て言うのです? モモはモモなのです」
「ぼ、僕はツァル・トラムス。トラムス家の一人息子だ」
なるほど、トラムス君ね。ツァルは言いにくいからな……。モモは何を思ったのか、トラムスの手を取ってブンブン振っている。
「これでモモ達は仲良しなのです」
「は、はあ? 何で僕が人間の女と仲良くしなきゃいけないんだ!」
「仲良しはなんでダメなのです?」
「なんでって、だからそれは――ちょっと、見てないでお前らも助けろよ!」
完全に傍観者に徹していた僕達は、まず一番最初にモモの所へ行く。リアは目線で手加減するように言ってきたが、今回ばっかりはちょっと厳し目に言い聞かせないといけない。
「モモ、君は僕との約束を破ったね?」
「あ、あぅ……」
「約束、覚えてる?」
「丸焼きはダメ……なのです。でもモモは丸焼きにはしてないのです」
まさかあのモモが反論してくるとは。子どもは日々成長していくんだな、なんて生意気にも思いながら、それでも僕はなるべく怖い顔を作ってモモを見下ろす。
「でも一つ間違えたらこの子は取り返しのつかない事になってたよね?」
固い声音で問い詰めると、モモは「う、うぅー……」と唸りながら縮こまる。
「モモ、自分が悪かったときはどうするか、教えたよね」
モモは、目に涙を貯めてうつむき、小さく震える声で謝罪した。
「ごめんなさいなのです……」
モモの心からの反省を受け取った僕は、それでもまだ表情を崩さないまま、もう一度約束を交わす。
「次からは約束、守れるね?」
「はいなのです……」
これでモモはもう同じ失敗はしないと信じてあげよう。
「それじゃあ、次は彼にも謝るんだ。驚かしてごめんなさいって」
モモは素直に、言われたとおりの言葉でトラムスに謝る。
「トラムス、驚かしてごめんなさいなのです」
「お……おう。もう、いいよ」
僕に怒られている所を見て、トラムスも多少怯えてしまったのか、素直に受け入れた。改めて二人は握手をして、何とも言えない空気の中トラムスは一応落ち着いたようだ。
「それでトラムス。僕の名前はマサヤ・カガリ。異世界からやってきた勇者だ」
「えっ? ゆ、勇者!?」
僕の肩書に面食らって、目を丸くしてるトラムス。
「そう。それでこっちは――」
「自分で言うわ。初めまして、トラムス。私はリア・テレシー。今代の勇者であり、テレシー王国の第一王女よ」
その名前を聞いたトラムス少年の反応は激的だった。
「勇者リア!? あの赤い死神の勇者!! す、凄い、本物なの!?」
それは憧れの英雄に直面した、純粋に少年らしいきらきらと輝いた顔をして、畏敬の念を込めて熱く見詰めている。その視線が心地よかったのか、リアは胸を張って答える。
「そうよ、私こそが赤い死神の勇者なんだから!」
「ぼ、僕、あなたのファンなんです! ずっとあなたみたいな強い人に憧れていて……!」
興奮したように捲し立てるトラムスに、リアはサービスのつもりか握手をしてあげる。それから、更に大剣を使った高速の剣舞を見せ、トラムス少年は大興奮だった。
「凄い凄い! 本物だ! 本物の勇者リアだ!」
どうやら彼の事は、リアに任せてしまえば良さげだ。僕はドレンさんと顔を見合わせると、やれやれと一緒のタイミングで首を振った。
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