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異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。

N通-

謎は一つ解けた?

 夜もふけ、併設されている食堂で食事を終え、他の客もほとんどはけてきた頃、僕とリアはモモを寝かしつけた後、ミイさんとそのお母さんと席を並べていた。

「挨拶がまだだったね。私はジャスティン。この宿の女将をやっているよ」

「僕はマサヤ・カガリです」

「私はリア・テレシーよ!」

 リアが名乗った途端、ガタガタ、とミイさんとジャスティンさんが席を鳴らす。

「て、テレシーって……もしかして王族の方なのかい!?」

「流石に最北の街とはいえ、王族の名前くらいは解るのね。そうよ、私は一応第一王女って立場なの。でも、その前に間違えないで欲しいのは、ここにいるのは冒険者であり勇者でもあるリアだってこと」

 リアの念押しに、ミイさんとジャスティンさんははーと感心したようにまじまじとリアを見つめる。

「そういや、王女様は勇者様でもあるって有名だったねえ。そうかい、あんた……いえ、あなた様が勇者様なんですね」

 急に言葉を改めた女将さんに、リアはちょっとぶすっとした顔を作ってもう一度同じことを繰り返す。

「だから間違えないで。ここにいるのは冒険者のリア。勇者のリアなの。赤い死神の勇者リアとは私の事よ!」

 まだ覚えてたのか、その二つ名。

「はは、なるほど、解ったよ。それじゃあリアって呼ばせてもらうね」

「本物の王族の方を見るのは初めて! でも気取らない所が素敵ですね!」

 女将さんは流石にこういう客商売をしてるだけあって肝っ玉が据わっているのか、すぐにリアの要望を汲んだ。ミイさんもちょっと敬語が抜けきっていないが、リアは満足したようだ。

「それで、ジョスとはどこで知り合ったんだい?」

 僕とリアは、およそ2ヶ月間王都の宿屋を経営しているジョスさんの事を根掘り葉掘り聞かれた。メイヤさんやマールさんの事も。

「なるほどねえ……まさかくたばっているとは思っていなかったけど、王都で宿屋を開くなんて、無茶したもんだね」

「ねえ、リア。やっぱり王都の土地って高いの?」

「……多分」

 頼りにならない。そこへすかさず女将さんが声を荒げた。

「高いなんてもんじゃないよ! ウチが王都で店舗を構えようとしたら、それこそ借金でもしなけりゃ無理ってもんさ!」

「「あ」」

 ここで謎が一つ解けた。どうしてあんな額の借金をしていたのか。お世話になっているとはいえ、お金の話にまで踏み込むのは良くないと何となく敬遠していたのだが、僕とリアは話を聞いて察してしまった。

「なるほどねえ、その借金を文字通り叩き切ったのがリア様なんですねー」

 ミイさんが少し憧れを混ぜた眼差しでリアを見ていると、彼女は胸を張っていつもの調子で応じる。

「そうなるわね!」

「悪徳とはいえ借金全部ちゃらにされて、金貸しの方もさぞや痛い目を見ただろうね」

 一方の女将さんは借金取りの方に若干同情的だった。そうか。一応膨らんでいたとはいえ元の額も決して安いものじゃなかった。僕達はたまたま居合わせて、それから宿屋に居着いていたけど、もしかしたら報復に来てもおかしくはなかったんじゃないだろうか?

「ねえ、リア。上手くルイア国の事が片付いたら、借金取りの事をもうちょっと詳しく調べたほうがいいと思う」

「そうね、私達がいないことに気付いて妙なちょっかいかけるかもしれないしね」

 リアと相談していると、女将さんが急に頭を下げた。

「不出来な弟だけれど、それでも家族なんだ。私からもお願いするよ!」

「私からもお願い! メイヤさんやマールの事、助けてあげて!」

「任せなさい! ここに勇者が二人もいるんだから、出来ないことなんてあんまりないのよ!」

 はりきって請け負うリアに、僕は勘弁して欲しい気持ちでいっぱいになった。だから、君は本当に僕の正体をバラさないと死んでしまう病なのか?

「勇者が二人って、マサヤも勇者なのかい?」

「……はい。勇者やってます」

 これ自分で言うの相当恥ずかしいんだからな! リアはいつも気にせずに堂々と宣言してるのが全く信じられない。

「へー! へー! ねえねえ、マサヤさんのご出身は?」

 ミイさんが食いついてきたので、致し方なく本当の事を答える。

「……異世界です」

「えー!? 凄い、異世界なんて本当にあるんだ! ふーん……」

 驚いた後に、じろじろと全身を、特に顔のあたりを凝視されている気がする。すると何かの勘が働いたのか、リアが不機嫌になってその視線を手で遮った。

「ちょっと、マサヤは私のパートナーなんだから、手を出しちゃダメよ!」

「あはは、人聞きが悪いですよ勇者様。手を出すなんてそんな、ねえ? そういうのは殿方の方から誘って貰わないと……」

 ミイさんはそう言いながら流し目を送って、妖艶な雰囲気を醸し出していた。これはいわゆる大人の色気というヤツだろうか。
 余り感じた事のない感覚にドギマギしていると、パンッと景気の良い音がしてミイさんの後頭部がはたかれていた。

「お客さんに色目使うんじゃないよ! 全く、誰に似たんだか……」

「ご、ごめんなさいお母さん……」

 割といい音がしたので、かなり涙目で痛そうにしているミイさん。

「それじゃあ夜も更けたことだ、王都に帰ったら、ジョスの弱虫野郎にたまには便りを寄越せって言っておいてくれないかねえ」

「いいですよ、お伝えしておきます」

「それじゃあ二人とも、おやすみなさい。良い夢を!」

 二人と別れた後、モモが寝ている部屋へと戻ってくる。僕達はまたしても一室しか借りられなかったが、今度は前ほど緊張はしていなかった。もう慣れてしまったのかな?

 二人で背中を向けて寝間着に着替えると、リアは何の抵抗もなくモモの右横に入り込んだ。僕も同じようにモモの左横に入り込む。

「おやすみ、マサヤ。明日も早いから今日はすぐ寝ちゃいましょう」

「そうだね、リア。おやすみなさい」

 そして、僕はすぐに眠りに落ちたと思ったら、いきなり世界が真っ白に染まっていた。

「は――?」

 そこはかつて見たことがある光景で、そこにいた人――いや、神様も前回と同じ姿で優雅に椅子に腰掛けてニコリと微笑んできていた。

「ようこそ、マサヤさん。あなたが来るのを待っていましたよー」

 創造の女神様と僕は再び出会ったのだ。

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