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異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。

N通-

意外な繋がりです。

 僕達一行は、遂に“最北の街”に辿り着いた。テレシー王国の最も北に位置する街で、隣国のルイア国との国境線にほど近い街でもあるそうだ。本当はちゃんとした名前がある街だったらしいけど、いつの間にか“最北の街”として定着してしまったらしい。

「はいはい、お客さん達、お疲れ様でした! 最北の街に到着だよー!」

 御者のお姉さんの掛け声に護衛の冒険者や客達が次々と馬車から出てくる。最後にリアに支えられてモモが降りて、馬車は空になった。

「お世話になりました」

 お姉さんにお礼をすると、彼女はきょとんとした顔でまじまじと僕の顔を見つめて来たが、すぐに笑いだす。

「あっははは! お礼を言うなんて変わってるねえ、あんたは。もし帰りにも会う事があったら、どうぞご贔屓ひいきに!」

 最後にちゃっかり営業をしてから、お姉さんは去っていく。残された人々はそれぞれ自分の目的に沿って散っていき、僕達は残された。

「それじゃあ、とりあえず宿でも取ろうか!」

「その前にお腹ぺこぺこよー」

「モモもお腹空いたのですー!」

 僕の号令に、二人から異議が出る。言われてみれば、彼女達は馬車の中で携帯食をつまんでいる程度だし、僕なんてそもそも何も口にしていない。時刻は夕方、これから食堂はどこもかき入れ時だろう。

「うーん、とは言っても先にフィジーを預けないといけないしなあ」

(私なら大丈夫ですよ。適当に街を回っています)

「いやいや、何言ってんの。人が手綱握ってない馬が自由に闊歩しちゃダメに決まってるでしょ」

 たまにフィジーは人間社会の事を理解してくれない時がある。馬だもんね。

(人間は不便ですね)

「馬も大概だと思うがなあ」

 等とフィジーとやりとりをしていると、我慢の限界に達したのかリアが暴れ始めた。

「お腹すいたお腹すいたお腹すいたー!!」

 地面に寝転んでジタバタと手足を動かすもんだから、服は汚れるわ周囲の視線を集めるわで散々だった。

「解った! とりあえず何か屋台で買ってくるから!」

 僕がすぐに降参すると、リアはピタッと暴れるのを止めて座りながら見上げてくる。

「……本当?」

「本当本当、だから少しの間だけフィジー見ておいて!」

「解ったのです!」

 モモに解られてしまった。フィジーにはかわいそうだが、少しの間の我慢だ、許してもらおう。

 二人にこの場を動かないように、良く言い含めてから僕は屋台で適当に串焼き(良くわからない肉だった)や、アポイの実やらを買い込んできた。

「ほら、二人共。これでも食べて落ち着いて」

 三人分を均等に分けて手渡すと、二人は目の色を変えて受け取る。

「わーい! 美味しそうね!」

「いい匂いがするのですー!」

 じゅるり、とヨダレが垂れているモモの口を手ぬぐいで拭うと、二人は声を揃えていただきます、と串焼きにかぶりついた。

「「おいしー!!」」

 どうやら満足してもらえる味だったようだ。僕も串焼きの味を堪能して、次にアポイの実を取り出した。名産ということで買ってきたのだが、これどう見ても……。

「あれ? いつもモモが食べていた実なのです!」

 そう、あの怪しいダンジョンの木になっていた実こそがアポイの実だったらしい。以前にリアは食べて平気そうにしていたし、そもそも名産というくらいだから美味しいのだろう。

「まあ! もう一回食べてみたいと思ってたのよね! へー、これがアポイの実なんだ。いただきまーす」

 リアに合わせて僕もその実にかじりついた。すると、シャクシャクとした歯ざわりと溢れんばかりの甘みと酸味が口の中に広がり、非常に美味な果実である。でもこれどこかで食べた味だな……。

「あっ、これリンゴによく似てるんだ!」

「リンゴ? 何それ?」

「なのです?」

 当然異世界の果物の名称など知るはずもないリアとモモに問われ、僕は説明する。

「僕の世界にある果物だよ。その味にとても良く似てるんだ。美味しいよ」

「へー! 異世界にも似たようなものがあるのね。驚きだわ」

「モモも食べてみたいのですー!」

「今度、機会があればね」

「やったのです!」

 流石に彼女の要望を叶えるために街のど真ん中、しかも夕飯時にマナの枯渇を引き起こすわけにはいかない。

「じゃあ、今度こそ宿を探そう」

 リアとモモは素直に頷いて、僕達は宿場町のように中級の宿を探して街をさまよった。そうすることおよそ10分ほど、いい塩梅の宿を探し当て、カウンターへと近づく。カウンターには受付専用の女の人が立っており、僕達が入ると笑顔で出迎えてくれた。

「いらっしゃいませー、眠れる子獅子亭へようこそ!」

「……えっ? 今なんて言いました?」

「ですから、眠れる子獅子亭ですよ、お客さん」

 物凄い既視感を覚えた僕は、念の為に訊ねる事にした。

「あの、もしかしてジョスさんをご存知ですか?」

 すると女の人の反応は予想以上だった。

「まあまあ! あなたジョスおじさんのお知り合いなんですか!? 元気にしてました!?」

 カウンターから身を乗り出す勢いの彼女に、僕は腰が引けながらも応対する。

「え、ええ。今は王都で眠れるにゃんこ亭という宿屋を経営していますよ」

「そうなんですか……あのジョスおじさんが……。メイヤさんやマールも元気にしてますか?」

「ええ、特にマールさんは元気過ぎるくらいで……」

 彼女の奇行の数々を思い出して若干懐かしさを覚えるのは、まだちょっと早すぎるかな?

「あの女、マサヤに色目を使うのよ!!」

 物思いに気を取られていると、リアが憤慨した様子で告げ口をする。

「リア、余計な事言わないで……」

「あはは、マールらしいわね。大方お兄さんがマールの事手助けしてあげたりしたんじゃない? あの子惚れっぽいから」

「よく解りますね……」

「だって従姉妹だもの、そりゃ解るわよ」

「えっ!?」

 よくよくみると、確かにマールさんに似ていなくもない。

「ミイ、お客さんなのかい!?」

 よく通る女性の声が、カウンターの奥から響いてきた。

「お母さん! ジョスおじさんのお知り合いが来てるの!」

「なんだって! あの弱虫ジョスの知り合いだって!?」

 どすどすと足音を鳴らして現れたのは、ミイと呼ばれた受付の人をそのまま横に大きくしたような女性だった。

「おっきいのです!」

「こら、モモ!」

 慌ててモモの口をリアが塞ぐが時既に遅し。ギロリ、と眼光鋭くモモを見つめていたかと思うと……。

「あはははは! そんな直球で言われたのは久しぶりだねえ、前の男は腕をへし折ってやったけど!」

 笑っていた。どうやらモモは子供ということで許してもらえたらしい。

「どうも、ウチの子が失礼をしまして」

「いいさいいさ、子供なんだからしょうがないよ。それで、ジョスから伝言でもあるのかい?」

 片目を閉じてウィンクをしてくる彼女に、僕は年に似合わず様になっているな、等と失礼な事を考えながら否定した。

「いえ、ここには本当に偶然入っただけでして。まさかジョスさんの親戚の宿屋とは思いませんでした」

「そうかい、これも創造の神様のお導きかねえ。ジョスの知り合いだっていうんなら、特別に値引いてやろうじゃないか!」

 剛毅ごうきな女将さん(恐らくはそうだろう)の言葉に、僕達は恐縮してしまう。

「そんな、悪いですよ!」

「いいさ、その代わり、後でジョスの話しを聞かせてくれないかい? アイツったら、家を飛び出して行ったきり手紙一つ寄越しやしないんだから」

「あー……まあ、そういう事でしたら」

 ミイさんが、ニコリと微笑んでもう一度繰り返した。

「それでは改めまして、ようこそ眠れる子獅子亭へ!」

「異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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