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異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。

N通-

深夜の可愛い

 眠れるかーっ!!

 と、ココロの中でだけ叫んでおく。僕達は今、三人で川の字になって眠っていた。僕、モモ、リアの順番だ。モモをクッションにすることで幾分かマシになっているとはいえ、すぐそばに美少女が二人眠っているこの状況では鋼の精神力が試されている。本当は僕は床で寝るつもりだったのだが、それをモモは愚かリアまで反対したので仕方なくベッドに寝ることになったのだった。

 モモはすっかりぐっすり眠っているようで、すーすーと規則正しい寝息が聞こえる。モモはおてんばだが寝相は良いようだ。さっきから身じろぎもせずにずっと深い眠りに落ちていた。

 悶々としていると、もぞもぞとモモの向こう側が動いた気がした。

「ねえ……マサヤ、起きてる?」

 モモの寝息に負けない位の、リアの小さな声だったが、僕の耳には確かに届いた。僕もまた同じ位の声量で答える。

「起きてるよ……どうしたの、リア」

「マサヤ、本当は怒ってる……?」

「えっ?」

 思いがけない言葉に、僕はリアの方を振り向いた。するとリアもこちらを向いていて、その目がしっかりと合う。

「よくよく考えたら、マサヤは普通の平民だったわけでしょ。それをこっちの都合で連れてきて……色んな事件に巻き込んで。私、ちっともマサヤの事を考えてなかったなって……」

「おいおい、急に何を言い出すんだよ、リア。僕は納得してこの旅についてきてるんだよ? それをリアの事恨んでるとか、そんな事はないよ。たまに腹立つからお仕置きはするけど」

 お仕置きの言葉にリアはビクッと肩を跳ねさせた。

「らしくないな、急にどうしたんだい?」

 これまた自分らしくもない優しい言葉をかけると、リアはちょっとだけ布団で顔を隠して、答えた。

「だ、だって……私、こんな風に男の子と一緒に寝るなんて初めてだから……どうせなら、普段言えない事も伝えておきたいなって……」

 何それ、めっちゃ可愛いんですけど! 言ってから恥ずかしくなったのか、月明かりでも見えるくらいにリアはかあっと頬を赤くして布団をイジイジと触っていた。

「……そっか。じゃあ僕も普段は言えない事、言うよ」

「えっ?」

 ただ彼女に触発されただけじゃない。僕は、彼女に心の底で思っていることを少しだけ明かした。

「全く、君はいつもドジばっかりで、おまけに無鉄砲でときには冷酷で……」

「な、何よ……悪口ばかりじゃない」

「……でも、僕はいつもそんな君に助けられているんだよ」

「ふぇ?」

「いつでも明るく、元気で、真っ直ぐで。僕はそんな君の生き方が羨ましいし、見習いたいと思っている。僕は、自分で思っている以上に意気地がないし、はっきり言って弱い。でもリアはそんな僕を邪魔者扱いせずに一緒に戦ってくれるじゃない。だから、僕はこの旅を安心して続けられるんだ」

 言ってることは至極情けないことだけれど。これが僕の本心だった。ただの高校生だった僕には出来る事は少ない。幾ら女神様のチートをもらったって、使いみちを誤れば大変な事になる。そんな心の弱い僕を、リアは、いつだって引っ張って行ってくれるのだから。

 僕の言葉を聞き終えたリアは、頭まで布団を被って小声で何事か喚いていたが、くぐもってよく聞き取れなかった。

 それからは二人共無言になり、いつしか意識が闇に落ちていった。その間際、僕は慈しみを持った声でありがとう、とお礼を言われた気がしたが、きっと気のせいだろう。

 
 一夜明けて。今日も快晴、素晴らしい出発日和だ。

「おはよう、マサヤ」

「ああ、おはようリア」

 僕よりも先に起きていたのだろう、リアはちょっとはにかんだ笑顔だった。僕達の間で眠っているモモは未だにスースーと大人しく眠っている。

「ほら、モモ。朝だよ」

 僕は彼女の身体をゆさゆさと揺らすと、覚醒を促した。やがて寝ぼけ眼をごしごしとこすりながら、モモがゆっくりと起き出してくる。まだぼんやりとした顔をしていたが。段々と目の焦点が合ってきてがばっと布団から抜け出した。

「マサヤ、リア、おはようなのです!」

「ああ、おはようモモ」

「モモ、おはよう!」

 三人で挨拶を交わし、僕達の新しい一日がスタートする。

「さ、二人共身支度をして、今日は“最北の街”を目指してまた馬車に乗るからね」

 それを聞いたモモはテンションが一気に上ったのか、ばんざーいと手をあげて大喜びだった。

「わーい、馬車なのですー!」

 そこでドンッとお隣さんから壁を殴る音が聞こえてきた。

(朝っぱらからうるせーぞ!)

「「す、すみません」」

 隣人に怒られた為に静かに準備を始める僕ら。一応同じ部屋で着替えをしている。リア達が着替えている間は、僕は後ろを見て決して振り向くなと厳命されている。それなら外に出てようかと提案したのだが、なぜだか却下された。本当に女心は解らない。

「さ、もういいわよ」

 ようやくか、と振り向いたら、モモとリアは見慣れない髪飾りを身に着けていた。

「あれ? その髪飾りどうしたの?」

「き、気付いてくれたんだ」

「そりゃ気付くさ、よく似合ってるよ」

 素直に褒めると、リアは耳まで真っ赤にしてしまった。そんなに恥ずかしがるなら着けなければいいのでは、と思ったが口に出すと何か取り返しのつかない事になりそうだったので自重した。

「モモは? モモはどうなのですマサヤ!」

「ああ、モモもよく似合ってるよ」

「ありがとうなのです!」

 純真なモモの笑顔に再起動したリアは、早速下の食堂に行って朝食を取ろうと誘ってきた。確かに、昨日の晩は疲れからか早々に寝てしまった為にお腹がぺこぺこだ。

「それじゃ、朝食をとったら北行きの馬車を探すよ!」

「「おー!!」」

 こうして、僕達の歩みは遅いながらも着実に目的地に近づいていくのであった。

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