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異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。

N通-

加護と呪い

「うおおおお、リアよ! よくぞ、よくぞ戻ってきてくれた!!」

「ちょっ、お父様! そんなに強く抱きしめないで下さい、恥ずかしい!」

 場所はテレシー王国の王城、謁見の間。あの後やはりテバの街をかなり離れた所から僕の魔法を使い、テレシー王国へと戻ってきた。突如勇者二人が行方不明となったことでどうやら大騒ぎになっていたらしい。国王なんて涙を流しながら愛娘に頬ずりしている。……彼女の泣き虫ぐせは親譲りか? ちなみにモモはやはりこの場にはいない。今度はこの国のメイドさんと仲良く遊んでいるらしい。あの子は物怖じしない性格だな……。

「あなた、見苦しいですよ臣下の前で。その辺りにしておきなさい」

 ピシャっと言い放った王妃も、冷めた目で国王を見つめていたが、リアには内心の安堵が透けて見える態度だった。

「……しかし、そうですか。隣国のルーラン帝国の内乱を鎮めていたとは……。流石にわかりませんでした」

 それはそうだろう、ルーラン帝国に渡ってからまだ4、5日しか経っていない。それでは僕達の発見の報を受け取るだけでも手一杯だっただろう。

「突然行方不明になったかと思えば、ドラゴンの子を拾ってきて、隣国の内乱を鎮めて……。流石は勇者と言った所なのでしょうか」

 いや、どうなんだろう。全部流されるままに行動してきた気がしてならない。特にリアはあんまり考えて動いてないだろうからな……。

「お父様。そろそろ……」

「お、おお。名残惜しいが仕方がない」

 本当に残念そうな王様は放っておいて、僕達はこれまでの経緯を詳細に説明した。

「では、マサヤ殿の本当の力についてはルーラン皇帝には伝わっていないのですね?」

「ええ、何かと危険な力であることは自覚していますし、リアもそれは解ってくれていたようで」

「まあ! リアが賢くなったなんて……旅に出した甲斐があったというものです」

 王妃様は本当に驚いたように目元を拭って感動していた。それを見ていたリアは半目で王妃様を見つめる。

「お母様、後で親子水入らずのお話をする必要がありそうですね」

「私にはありませんよ? それよりも勇者の責務を全うなさい」

 にべもなくあしらわれ、不満顔のリアはさておいて、僕達は次の目的地を告げる。

「次は、北の国ルイアを目指そうかと思っています。リアも今の装備よりもいいものを手に入れれば、魔族との戦いに役に立つのは間違いありませんから」

 僕達の提案に、国王は先程までのゆるゆるな顔をきりっと引き締めて考え込む。

「ふむ、ルイアか……実はな、マサヤ殿。ルイアとは共同戦線を張っているとはいえ決して友好的な国とは言えないのだ」

 国王の意外な言葉に、僕は驚いた。

「えっ? そうなんですか?」

「うむ。元々彼女達は閉鎖的な民族でな。国としてはほぼ鎖国に近い政策を取っている。しかし魔族の侵攻が起きたために、致し方なく人間族と協力しているような状態だ」

「人間族……?」

 僕の疑問に気付いたのか、王様は、ああと納得したような顔で説明してくれた。

「マサヤ殿は知らなかったと思うが、ルイアは亜人族、エルフ達の国なのだ」

「エルフっていうと、耳長の種族ですかね?」

「ほう? 異世界にもエルフ族は存在するのかね?」

「いえ、伝説上の種族として物語にいるだけの存在ですね。この世界では実在するんですね、エルフ」

「うむ。彼女達は自然との融和を何よりも大切にしている。だから、自然を自分たちの手で作り変えしてしまう他の種族を毛嫌いしている風潮があってな。おかげで国境の混成軍でも度々衝突が起こっている始末だ」

 大体僕の想像通りの種族だったが、一つだけ気になる点があった。

「彼女達、と先ほどから仰ってますが、エルフは女性しかいないのですか?」

 それに対して、王様は唸るように答える。

「エルフ族の男は非常に生まれにくいらしくてな、それこそ男児が生まれただけで誉れ高い地位に位置づけられるくらいの女性社会らしい」

「へー、そうだったのね」

 感心したように頷いているリアに僕は突っ込まざるを得なかった。

「おい、隣国の姫。君は知ってて当然じゃないのか?」

「とととと、当然知ってたし? お、お父様が解説してくれたから思い出してただけだし?」

 絶対知らなかったな、これは。

「まあ、とにかく。エルフ族はその特性から他から血をもらってくる事を推奨していてな。何しろ、エルフの子は必ずエルフとして生まれる」

「え、でもそれだと父親の方はどうなるんです? 一緒に住むんですか?」

「いや、子供がある程度育ったら国を追われるらしい」

「えぇ……」

 どうやらエルフの社会は男に相当厳しいもののようだった。そんな国が本当に国宝の大剣を貸してくれるのかな?

「一応、エルフの女王宛に私から書状をしたためよう。仮にも共同戦線を張っている隣国の書状だ、無碍にはされないだろう」

 一応体裁は整えてくれるらしくて助かった。このまま何の準備もなく突入していったら間違いなく追い返されていたに違いない。

「ねえ、お父様。エルフの国には私だけで行った方が良くない?」

「だから陛下と呼べと……。しかし何故だ? マサヤ殿だって勇者なのだ、ぞんざいな扱いは受けないだろう」

「だ、だって……(また現地妻とか作られたら困るし)」

「何か言った、リア?」

「何でもないわ! とにかく、私一人で行きたい!」

 突然わがままを言い出したリアだったが、王妃様が冷ややかな目でそれを否定した。

「駄目です」

「何でよお母様!」

「あなた一人で行っても引っ掻き回して同盟に傷をつけるのが関の山。ここは冷静なマサヤ殿と行動を共にしなさい」

「一人娘に向かってあんまりな言い草!?」

 いや、王妃様の分析は極めて的を射ていると思う。それを僕は、先のルーラン帝国動乱で嫌というほど思い知った。

「というわけで、今後もリアの事を頼みましたよ、マサヤ殿」

「はい、お任せ下さい」

「むうううう!!」

 むくれているリアを引っ張って、謁見の間から退出する。その際に王様がかなり残念そうな顔をしていたのは見なかったことにした。

 その後、メイドさんと遊んでもらっていたモモを引き取って、眠れるにゃんこ亭へと顔を出しに行った。

「お帰りなさい、マサヤさん、もう私心配で心配で……!!」

 僕の顔を見るなり、半泣きで抱き付いてきたマールさん。

「突然目の前から姿を消して以来、私ずっとマサヤさんの事考えていたんですよ……」

「あー、いや。あの。ごめんなさい、勝手にいなくなってしまって。でもこの通り無事ですから、安心してください」

 ぽんぽんと背中を叩いてマールさんをなだめると、ようやく人心地ついたのか、マールさんが抱擁を解いてくれた。良かった。後もうちょっと続いていたら横で般若のような顔をしているリアが爆発していたかもしれない。

「ちょっと! 私も行方不明だったんですけど!」

「ああ、リア様もご無事で何よりです!」

 マールさんは本当にリアの心配もしていたのだろう、嬉しそうな顔をして彼女の手を取り、ぎゅっと握りしめた。

「え。あ、ああ。うん、ありがと……」

 こうなると、怒りのやり場が無くなってしまいなんともしまらない表情のリアが残される。そんなやり取りと見ていたモモが、指差して声を上げた。

「ああっ! おにーさんがたらしたマールさんなのです!」

「無駄に記憶力いいな!? 馬車の中での話覚えてたのか! 後たらしてないから! 誤解だから!」

 僕が必死に弁明するも、モモは良くわからないと言った表情でこてんと首を傾げるだけだった。吹き込んだ張本人をジト目で見つめると、リアは視線をそらしてぴーぴーと口笛を吹いて誤魔化している。

「ふふふ、可愛いお客様が増えましたね、お嬢ちゃんお名前は?」

「モモはモモなのです! よろしくなのですおねーさん! んん? でもそうするとおねーさんが二人になってしまうのです? んんん? うーん、それじゃあマールお姉さんなのです!」

「まあ、可愛らしい!」

 マールさんは感極まってぎゅっとモモを抱きしめた。やはり彼女の愛らしさは誰でも虜にしてしまうらしい。

「あらあら、騒々しいと思ったら帰ってきたのねー」

 と、そこへ店の女将さんであるメイヤさんが顔を出した。

「すみません、騒がしくしてしまって……」

 謝罪すると、メイヤさんは手のひらをひらひらと振って笑った。

「いいのよー、どうせお客さん来ないんだからー。ね、あなた」

「そうですな」

 いつの間にかジョスさんまで現れて、総出のお出迎えとなっていた。

「ところで本日はお泊りに?」

 メイヤさんに問われ、僕達は予定を伝えた。

「ええ、一泊だけして、それから北の国へと向かう予定です」

「えっ、一泊だけなんですか!?」

 マールさんが悲壮な表情で見つめてくるが、ここは仕方ない。

「はい、ですから今晩はよろしくお願いしますね」

「はいはいー、三名様ご案内ー。お部屋は一つでよろしいかしら?」

「「二つでお願いします!!」」

 僕とリアのピッタリ揃った声に、メイヤさんは笑いながら鍵を用意してくれた。メイヤさんも結構謎な人だよな……。鍵を受け取り、前と同じ部屋をあてがってもらった僕は一人ベッドでようやく一息つけた。

 エルフの国、か。どう考えても厄介事の匂いがしてくる。僕は、そう言えば、とふと思い至った事について考えた。

 どうもこの世界に来てから、日本への哀愁が薄れていっているような気がしてならない。家族に会いたいという気持ちはもちろんあるのだけれど、友人達までとなると何故かそこまでの思いがいたらないのだ。あれだけべったりくっついて来ていた妹の咲の事はもちろん心配なのだけど、それもどんどんと薄くなっていっているような――。

 そこまで考えて、ぞっとした。血の気が引いたと言ってもいい。

 これもひょっとして女神様の加護、リアの言う所の“呪い”の類なのかもしれない、と。ぼくに帰還の意識を薄れさせて、郷愁を忘れさせられているのだとしたら――。一体あの神様は何をさせたいのだろうか。どうも僕は、今一あのちょっと抜けてる神様を信用しきれてないようだった。

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