異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。

N通-

日の光の下へ

「それにしてもっ……! この道っ、本当に合ってるんでしょうねっ!?」

「間違いない……よっ!!」

「がんばってー!」

 現在僕達は戦闘の真っ只中、モモは応援に勤しんでいる。

「ここのモンスターちょっとレベル高くない!?」

「うーん、アンデッド系のモンスターが多い階層なのかなっと!!」

 僕が前衛、真ん中にモモ、後衛をリアが担当してくれている。この配置は下から上がってくるモンスターが多いため、火力の高いリアを後衛に配置してなぎ倒してもらっている状態だ。

「これじゃあ、魔石とってる、暇もないっ!」

「そんなこと言ってる場合じゃ、ないでしょっ!」

 しかし勿体無い。高経験値のモンスターが多いためか、僕のレベルは現在ガンガン上がっている。こうも連戦が続いてもスタミナが保っているのは、認めたくないがルッケインさんの特訓の成果と言えるだろう。

「見えたぞ、出口だ!!」

 出口までの道のりにはもうモンスターは残っていない。僕はモモのそばに行って体を担ぎ上げると一気に走り抜けた。

「わーい! ぐるぐるするー!」

 この子は大物なのだろうか。モンスターに恐怖することもなく、担がれてる今も大はしゃぎで笑っている。

「マサヤ!」

「リア、早く!」

 リアが迫ってくる四、五体のスケルトングループを一気に叩き割り、駆け上がってくる。出口までもう少し!

 光差す出口を駆け抜けた勢いでそのまま何メートルか進んでしまう。薄暗いダンジョンから日の下に出たことで目が明順応するまでの間、軽い痛みを感じる程だった。

「マサヤ!? 敵がまだ追ってきてる!」

「ええっ!? ダンジョンのモンスターって外まで出てくるの!」

「そりゃ壁があるわけじゃなし、当たり前じゃないの!」

 そこはファンタジーのお約束で結界とか何とかあって欲しかった!

「モモ、ここに隠れてて!」

「はいですー!」

 モモは言いつけどおりなるべく縮こまった体勢で木陰に隠れた。遅れてやってきたリアが、ぞろぞろと団体さんを引き連れてやってくる。僕はこちらに向かって走ってくるリアと交差するように突撃し、中央を一点突破しつつ何体かを撃破し、反転。

「やああぁぁぁぁ!!!」
「うおおおおぉぉ!!!」

 そのまま同じように反転したリアと共に挟撃して、殲滅した。

「はぁっ、はぁっ……」

「ふぅーっ! ちょっとはいい運動になったわね!」

 爽やかな汗を拭うリアとは対象的に、僕はもう汗だくだった。どう考えてもリアの方が僕の倍はモンスターを相手にしていたというのに、何故なのか。脳筋だからか。

「二人とも凄いのです! あんなにいっぱいの危ない人達をたくさんやっつけたのです!」

 モモさん大興奮。

「まあね、私達はほら、勇者だからね!」

「ゆーしゃ凄いのです!」

「は、ははは……」

 はしゃぎ合ってるリアとモモを横目に、僕は地面に座り込んだ。正直、きつかった。まさか浅い階層にあれ程のモンスターが沸いてるとは思いもしなかったんだよなあ。

「まあでも、外には出れたね」

「なのです! これがお外なのです! 凄いのです!」

 モモさん更に大興奮。

「天井がとっても高いのです?」

「あれは空っていうのよ。天井じゃないの。どこまでもどこまでも続いていて、果てはないのよ」

 流石に成層圏を抜けたら宇宙だよ等と無粋な事は言わない。

「ほわあーーー」

 あんぐりと口を開けて空を眺めるモモ。くるくると見回しては、あれは何かとリアを質問攻めにしていた。

「あれ? あれはね、太陽っていうのよ」

「すっごく明るいのです……ぽわぽわー……」

「ちょっ! モモ、太陽はあんまり見ちゃダメだよ! 目が潰れちゃう!」

 僕の警告にモモはビクッと反応して手で目を覆った。

「た、太陽怖いのですー!!」

「ちょっとマサヤ、モモを脅かさないでよね!」

「いや、ホントの事だし……」

「はぁ? 聞いたことないわよ、そんな話!」

 そりゃあまあ医療がそれほど発達してないような世界だしなあ。そう思うのも納得か。

「ちなみにこの世界って丸い玉みたいになってるって知ってる?」

 好奇心からそう尋ねてみると、ささっとリアがよってきた。ぽんぽんと肩を叩くと、哀れみの混じった目で小声で囁いてくる。

「マサヤ、あんまりそんな事言うと頭がおかしいと思われるから、モモにも悪影響があるしもう言わないようにね」

 やっぱり、宇宙とかはまだ早すぎたか。

「さてと、マサヤ、これからどの方角に行く?」

 見渡すと、ここは山の麓のようで背後には連峰がそびえ立ち、正面には草原が広がっている。

「リア、この地形に近い場所って解る?」

「解るわけ無いでしょ!」

「だよねー」

 ガックリと肩を落とす。まあ土台どこに飛ばされたかもわからないのだ、期待する方がおかしい。

「とりあえず、街道らしきものが彼方に見えるからあれ目指そうか」

「そうね!」

「はいなのです!」


 街道まで何の問題もなく辿り着き、三人並んでテクテクと道を歩いて行く。天気は快晴、どこかで鳥の鳴き声が聞こえたり、実に平和な道中だった。

「……平和だなー」

「そうねー」

「なのですー」

「きゃああああぁぁぁ!!」

 その時、絹を引き裂くような悲鳴が青空に吸い込まれていった。

「ちょっとリア、いきなり変な声あげないでよ」

「私じゃないわよ!」

「じゃあモモかい?」

「なのです?」

 いや、解ってはいるんだ。前方から凄い勢いで砂煙を上げながら何者かに追われている馬車があることくらい。

「助ける?」

 念のためにリアに聞くと、リアは何を馬鹿な事をと言わんばかりに胸を張った。

「あったりまえでしょ! 私たちは勇者なんだから!!」

「はいはい。モモ、危ないから離れて丸まってて」

「ハイなのです!」

 モモは素直ないい子だなあ。テテテと街道を離れ、丸まって頭だけを茂みから出してこっちの様子をうかがっていた。

「さて、やりますか」

 これも定番と言えば定番のイベント、こなさないといけないのだろう。

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