異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。
うっかりにはご注意を
それからの僕の日常はすっかり変わってしまった。
まずは起床時間が早くなり、王都内をランニングした後ルッケインさんと稽古(と言う名の一方的な嬲りだあれは)をした後、ようやく宿に戻ってリアと共に朝食を取り、昼間はせこせことレベル稼ぎ。そして帰ってきてギルドで換金した後はまたルッケインさんの所で技術を学び、へとへとになって宿に戻ってリアと騒がしい夕食を食べ、その後は自室で文字と魔法の勉強……。
かくして、二ヶ月も王都でレベル上げに勤しんでいたのであった。その期間で読み書き出来るようになった自分凄くない? と自画自賛してしまうけれど、いつもながら難解な文字と格闘しているとある時一気に目が覚めたように全ての文字がすんなりと頭に入ってくるようになったのだ。まあ、原因には心当たりがある。おそらくこれも女神様のご加護のおかげなんだろう。
そんな日々を過ごしていた日の事。朝食の席でリアが爆発した。
「ちょっとマサヤ! あなた私のパートナーとしての自覚あるの!?」
立ち上がるなりフォークで僕を指す。行儀が悪いからおやめなさい。
「ちょっとちょっと、リア、落ち着いて。どうしたのさ」
「どうしたもこうしたも、最近のマサヤってばずっとルッケインの相手してるか部屋に閉じこもってゴソゴソしてるだけじゃないの! もっと私とのコミュニケーションも必要だと思わない!?」
「全然?」
「即答!? むきいいいいぃぃぃ!!」
歯をむき出しにして威嚇してくるリアを、どうどうとなだめつつ最近の行動を思い浮かべる。
「……昼間はレベリングの狩りで一緒にいるじゃん」
「そういうことじゃないの! もっと私と一緒に冒険したいとか思わないの!?」
ふむ、言われてみれば僕もここ最近ルーチンワーク化してきた生活に飽きてきてるというのも確かだ。成長がきちんと解るのはいいことなのだが、達成感としては薄い。現在、僕のレベルはようやく15、リアは34だ。この調子では魔王軍どころか在野の盗賊にすら下手したら負ける。
「私は、冒険がしたいのよっ!!」
「うん、リアの言いたいことはよくわかったよ。じゃあ、どこかのダンジョンにでも潜る?」
「いいわね、それ! ダンジョン、ダンジョンに行きましょう!」
「解った、ダンジョンはどこにあるのか調べて……?」
迂闊だった。そうとしか言いようがない。僕は、無意識に“リアの願い”を“了承してしまった”のだ。
「マ、マズイ!?」
「えっ、あなたまさか!?」
リアの予感は大当たり、僕の体から閃光が迸り、リアとともに宿屋から姿を消した。
「う……?」
強い光に刺し貫かれて痛みの残る目をしぱしぱさせながら周囲を見回す。そこはうっすらと壁面が光っている謎の空間だった。
「ここは……?」
多少怯えたように、リアは僕に体を寄せるとぎゅっと服の袖を掴んできた。と、そこへ天井から雫が垂れて床に跳ねた音にリアが思いっきり動揺した。
「ひゃあっ!?」
ブチィッ! あわれ僕の服の袖はリアの有り余るパワーで引きちぎられてしまった。もしアレが僕の肉だったとしたら……考えるだに恐ろしい。
「大丈夫、リア、落ち着いて。水が跳ねただけだから」
「わ、解ってたわ!」
嘘だ。
「ここ、窪み? みたいになってるのね」
リアの言うとおり、今僕達がいる場所は丸くくり抜かれたような窪みの中にいるようで、一箇所だけ出入り口のようにぽっかりと穴が空いている。
「どうやら冒険は出来そうだね、全く何の準備もしてないけど! あはは!」
「笑ってる場合かーっ!? ここがどこのダンジョンで何回層なのかも解らないのよ!?」
「とりあえずお腹が空く前に帰れるといいなあ」
「マサヤ、あなた……こんな状況で良くのんきにそんな事言えるわね」
普段のリアからは意外な程に悲観的になっているようだ。もちろん僕だって馬鹿みたいに楽天的に考えているわけではない。しかしここでまごまごしていても、無駄に時間が過ぎるのもまた事実だった。
「ここで考え込んでいても仕方ないよ、リア、覚悟を決めていこう」
「う、うん……」
流石にここでリアを先頭に出すほど僕は鬼ではない。先陣を切って空いている穴から外に出てみると……。
「こ、これは……」
「なに、ここ……」
そこは森だった。しかし外ではなく、うっすら見える天井はごつごつとした岩肌が覆っている。しかし、この空洞らしき森の広さはかなり果てしなくて、奥の方は霧がかっていて先が全く見えない。
「ここは本当にどこなんだ……」
「解らない……けど、もうこうなったら進むしかないわね!」
余りの途方もなさに逆に開き直れたようだ。リアはいつもの調子を取り戻し、背中の大剣をを構えて警戒しながら進むことを選んだようだ。
「今頃宿屋の周辺は生活魔法も使えなくて大変な事になってるんだろうな……」
「人が折角やる気出してるのに変な事言って削がないでくれるかしら!?」
何事も気負い過ぎは良くないよ、と僕は言いたかったに違いない。多分。きっと。メイビー。
「じゃ、出発しようか。リアは後方を警戒して。僕が前衛に出るから」
「了解、行きましょう」
邪魔なツタや背の高い雑草などを切り払い、しばらく道なき道を進む。
「ねえ、リア。ところでダンジョンってやっぱり魔物とかいるの?」
「もちろん、というかダンジョンの魔物が本場と言っても過言ではないわ。地上の魔物とは強さが段違いよ。その分、魔石も高く売れるんだけどね」
ふむ、しかして僕のレベルは15、まだまだ初級冒険者の域を出ない。本格的に戦闘となれば、やはりリアに頼る事になるだろう。
「この“どこかのダンジョン”って、本当にどこなんだろうなあ」
「もしかして未発見のダンジョンだったりして」
「そうするとどうなるの?」
「自力で脱出出来なかったら二人で野垂れ死にね」
「「あっはっはっ」」
「って笑えるかーっ!!」
リアの突っ込みが炸裂した所で、僕はふと足を止めた。
「どうしたのよ、急に」
「道がある……」
「えっ!?」
僕達の目の前には、確かに人の手が入って二人なら並んで歩けるほどの道が整備されていた。
「ということは、誰かしらがここに来たことがあるということだ。もしくは――」
「もしくは?」
リアの問いかけに、僕は有り得ないかなと思いながらその可能性絵を伝えた。
「ここにまだ、人がいるか」
その時、ペタンペタンと道を歩く音が聞こえてくる。道の先は相変わらずの霧で相手が何者か解らない。
「リア、戦闘体勢!」
「りょーかい!」
リアは、大剣を構え、僕がロングソードを抜き払って、足音の持ち主を待ち構えていると――。
「あれ? お兄さん達は誰なのです?」
「え?」
「は?」
おんなのこが あらわれた!
どうする?
まずは起床時間が早くなり、王都内をランニングした後ルッケインさんと稽古(と言う名の一方的な嬲りだあれは)をした後、ようやく宿に戻ってリアと共に朝食を取り、昼間はせこせことレベル稼ぎ。そして帰ってきてギルドで換金した後はまたルッケインさんの所で技術を学び、へとへとになって宿に戻ってリアと騒がしい夕食を食べ、その後は自室で文字と魔法の勉強……。
かくして、二ヶ月も王都でレベル上げに勤しんでいたのであった。その期間で読み書き出来るようになった自分凄くない? と自画自賛してしまうけれど、いつもながら難解な文字と格闘しているとある時一気に目が覚めたように全ての文字がすんなりと頭に入ってくるようになったのだ。まあ、原因には心当たりがある。おそらくこれも女神様のご加護のおかげなんだろう。
そんな日々を過ごしていた日の事。朝食の席でリアが爆発した。
「ちょっとマサヤ! あなた私のパートナーとしての自覚あるの!?」
立ち上がるなりフォークで僕を指す。行儀が悪いからおやめなさい。
「ちょっとちょっと、リア、落ち着いて。どうしたのさ」
「どうしたもこうしたも、最近のマサヤってばずっとルッケインの相手してるか部屋に閉じこもってゴソゴソしてるだけじゃないの! もっと私とのコミュニケーションも必要だと思わない!?」
「全然?」
「即答!? むきいいいいぃぃぃ!!」
歯をむき出しにして威嚇してくるリアを、どうどうとなだめつつ最近の行動を思い浮かべる。
「……昼間はレベリングの狩りで一緒にいるじゃん」
「そういうことじゃないの! もっと私と一緒に冒険したいとか思わないの!?」
ふむ、言われてみれば僕もここ最近ルーチンワーク化してきた生活に飽きてきてるというのも確かだ。成長がきちんと解るのはいいことなのだが、達成感としては薄い。現在、僕のレベルはようやく15、リアは34だ。この調子では魔王軍どころか在野の盗賊にすら下手したら負ける。
「私は、冒険がしたいのよっ!!」
「うん、リアの言いたいことはよくわかったよ。じゃあ、どこかのダンジョンにでも潜る?」
「いいわね、それ! ダンジョン、ダンジョンに行きましょう!」
「解った、ダンジョンはどこにあるのか調べて……?」
迂闊だった。そうとしか言いようがない。僕は、無意識に“リアの願い”を“了承してしまった”のだ。
「マ、マズイ!?」
「えっ、あなたまさか!?」
リアの予感は大当たり、僕の体から閃光が迸り、リアとともに宿屋から姿を消した。
「う……?」
強い光に刺し貫かれて痛みの残る目をしぱしぱさせながら周囲を見回す。そこはうっすらと壁面が光っている謎の空間だった。
「ここは……?」
多少怯えたように、リアは僕に体を寄せるとぎゅっと服の袖を掴んできた。と、そこへ天井から雫が垂れて床に跳ねた音にリアが思いっきり動揺した。
「ひゃあっ!?」
ブチィッ! あわれ僕の服の袖はリアの有り余るパワーで引きちぎられてしまった。もしアレが僕の肉だったとしたら……考えるだに恐ろしい。
「大丈夫、リア、落ち着いて。水が跳ねただけだから」
「わ、解ってたわ!」
嘘だ。
「ここ、窪み? みたいになってるのね」
リアの言うとおり、今僕達がいる場所は丸くくり抜かれたような窪みの中にいるようで、一箇所だけ出入り口のようにぽっかりと穴が空いている。
「どうやら冒険は出来そうだね、全く何の準備もしてないけど! あはは!」
「笑ってる場合かーっ!? ここがどこのダンジョンで何回層なのかも解らないのよ!?」
「とりあえずお腹が空く前に帰れるといいなあ」
「マサヤ、あなた……こんな状況で良くのんきにそんな事言えるわね」
普段のリアからは意外な程に悲観的になっているようだ。もちろん僕だって馬鹿みたいに楽天的に考えているわけではない。しかしここでまごまごしていても、無駄に時間が過ぎるのもまた事実だった。
「ここで考え込んでいても仕方ないよ、リア、覚悟を決めていこう」
「う、うん……」
流石にここでリアを先頭に出すほど僕は鬼ではない。先陣を切って空いている穴から外に出てみると……。
「こ、これは……」
「なに、ここ……」
そこは森だった。しかし外ではなく、うっすら見える天井はごつごつとした岩肌が覆っている。しかし、この空洞らしき森の広さはかなり果てしなくて、奥の方は霧がかっていて先が全く見えない。
「ここは本当にどこなんだ……」
「解らない……けど、もうこうなったら進むしかないわね!」
余りの途方もなさに逆に開き直れたようだ。リアはいつもの調子を取り戻し、背中の大剣をを構えて警戒しながら進むことを選んだようだ。
「今頃宿屋の周辺は生活魔法も使えなくて大変な事になってるんだろうな……」
「人が折角やる気出してるのに変な事言って削がないでくれるかしら!?」
何事も気負い過ぎは良くないよ、と僕は言いたかったに違いない。多分。きっと。メイビー。
「じゃ、出発しようか。リアは後方を警戒して。僕が前衛に出るから」
「了解、行きましょう」
邪魔なツタや背の高い雑草などを切り払い、しばらく道なき道を進む。
「ねえ、リア。ところでダンジョンってやっぱり魔物とかいるの?」
「もちろん、というかダンジョンの魔物が本場と言っても過言ではないわ。地上の魔物とは強さが段違いよ。その分、魔石も高く売れるんだけどね」
ふむ、しかして僕のレベルは15、まだまだ初級冒険者の域を出ない。本格的に戦闘となれば、やはりリアに頼る事になるだろう。
「この“どこかのダンジョン”って、本当にどこなんだろうなあ」
「もしかして未発見のダンジョンだったりして」
「そうするとどうなるの?」
「自力で脱出出来なかったら二人で野垂れ死にね」
「「あっはっはっ」」
「って笑えるかーっ!!」
リアの突っ込みが炸裂した所で、僕はふと足を止めた。
「どうしたのよ、急に」
「道がある……」
「えっ!?」
僕達の目の前には、確かに人の手が入って二人なら並んで歩けるほどの道が整備されていた。
「ということは、誰かしらがここに来たことがあるということだ。もしくは――」
「もしくは?」
リアの問いかけに、僕は有り得ないかなと思いながらその可能性絵を伝えた。
「ここにまだ、人がいるか」
その時、ペタンペタンと道を歩く音が聞こえてくる。道の先は相変わらずの霧で相手が何者か解らない。
「リア、戦闘体勢!」
「りょーかい!」
リアは、大剣を構え、僕がロングソードを抜き払って、足音の持ち主を待ち構えていると――。
「あれ? お兄さん達は誰なのです?」
「え?」
「は?」
おんなのこが あらわれた!
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