異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。
時には見栄も必要です
案内された裏庭に到着すると、マールさんは仕事があるというので戻っていった。裏庭は10メートル四方の広さがあり、訓練には丁度良い大きさだと感じる。
「さて、それじゃあ魔法の練習をするわね!」
「うん、よろしくお願いします!」
僕の師匠役が出来るのがそんなに嬉しいのか、リアのドヤ顔が全く崩れない。
「さて、マサヤ。あなた魔力の流れを感じる事は出来るかしら?」
「うーん、今までやってみたことないから解らないな」
「でしょうね。じゃあまずはそこからやってみましょうか!」
というわけで、リアとの魔法練習が始まった。
「最初は体の中を流れる何かを感じ取る事から始めるの! 受け売りだけどね!」
リアの教師ということは王族の家庭教師なのだからさぞかし優秀な人材だったに違いない。僕はリアの残念な所を差し引いても物覚えは悪くない所を認めているので、素直に言葉に従った。
体の中を流れる……。血液のような感覚だろうか?
「意識をお腹に集中しながら、そこから全身を巡っていく何かをイメージすると掴みやすい……はずよ!」
ちょっとリアの言葉が怪しくなってきたが、言われた通りに目を閉じお腹に意識を集中する。すると、今まで感じたことのない不思議な感触がお腹を中心に脈動するように全身へと意識が移っていくのが解る。
「あっこれかな?」
「えっ嘘っ!? 私でも1時間くらいかかったのに!?」
「うーん、多分。これを、手のひらに集中して……」
お腹からの脈動が激しくなり、右手へと実態のない熱のようなものが集まっていく。僕は無意識に何を言うべきかを悟り、目を開き、手を水平にかざして手のひらを垂直に立て、唱えた。
「火よ」
ぼぉうっ!! と人の等身程もある炎が出現し、赤々と燃え盛って消える事無く留まっていた。それと同時に、自分の中の何かが吸い取られていくように外へと抜け出していくのを感じる。
「ちょ、ちょっと! 止めて止めて!!」
「えっ!?」
リアの悲鳴に、僕は集中を切らしてしまい、瞬く間に炎が消失した。何故止めたのかと文句を言ってやろうとしたが、それよりも早くリアが駆け寄ってくる。
「あ、あなた何考えてるの!? 初回であんな大きな炎出して魔力が枯渇したらどうするのよ!!」
「えっ、あっ」
「大丈夫? 気分が悪いところはない? 頭痛は?」
矢継ぎ早の質問にたじたじだったが、リアが真剣に僕の身を案じてくれているのが解るので、丁寧に答えていく。
「大丈夫、気分が悪いとか体調がよくないことはないよ」
「はあぁぁぁ……本当にビックリしたわ! あんなの、初めてで使う魔法じゃないわよ!」
リアは心底疲れたように溜息をつき、ぶちぶちと僕に文句を言ってきた。
「大体、何よあの詠唱! 生活魔法でもないのに、あんな単純な言葉で魔法が現れるなんて……やっぱり、創造神様のご加護の一つなのかしら」
「それは解らないけど、なんとなく頭に浮かんだ言葉をそのまま発したら出来ちゃったんだ」
僕の言葉に、リアは呆れたようにぽかんと口を開けた。
「出来ちゃったって……。そうね、マサヤだものね」
「ちょっと待って、その“リアだから”みたいに言われるのは聞き捨てならないな」
「それこそ待ちなさいよ!? 何、その定番のセリフみたいに思われてたの私!?」
リアが細かい事を指摘してくる。
「それにしても、これならもう全属性の魔法も何となくで使えちゃいそうね」
「そうだ、あれ試してみよう!」
「アレ?」
「そうそう。魔力を……集中して……」
一度覚えた感覚のためか、先程よりもよりスムーズに魔力が集中される。
「クリーン!」
僕がその詠唱を唱えると、ブワッと僕を中心に足元から光輪が際限なく広がっていき、あちこちから戸惑いの叫び声が上がる。
「な、なんだ、急にすっきりしたぞ!?」
「あれ? ほつれてた所が直ってるわ!」
「なんか体がぽかぽかする! でもいい気持ちだわー」
表通りからのそんな騒々しさが伝わってきて、僕は額にたらりと冷や汗をかいていた。
「ク、クリーン出来たよ?」
「出来たよ? じゃないでしょ!? どんだけ魔力無駄遣いしてるの、マサヤはっ!? こんな超広範囲クリーンなんて聞いたこともないわ! それに、服の修繕て何よ? クリーンにそんな効果ないわよ!?」
テンション高くガーガーと喚くリアに苦笑しながらも、僕は割と気軽に考えていた。だって、出来ちゃったもんは仕方がない。
「あのね、マサヤ。魔法を使うには周囲のマナと共に本人の魔力が削られるの。周辺のマナは自然界から勝手に供給されるから、普通の魔法なら何しても心配ないわ。あなたの例のアレ以外はね」
するりと嫌味を言われたがスルーした。
「でも、魔力は別。これは未だにどういう力なのか解ってないけど、私達の中に“ある”のは確実な力なの。それが、さっきの体の中を循環している力なのだけど……マサヤの魔力は同列のはずの勇者の私に比べても桁外れに凄いみたいね」
「そっか。じゃあ僕は後方支援、リアは前衛でいいよね」
「あなた仮にも男でしょう!? 自分が前に出るって考えはないの!?」
「うん」
「えっ!? ないの!?」
「うん」
「マサヤ、あなたって人は……」
だって、仕方ないじゃないか。今のメンバーだとどう考えてもリアの方が剣術、体力、耐久性に優れているのだから、前衛が二人で突撃なんてしたら目も当てられない。そのような事をとうとうと説明したら、リアは何だか騙されたような顔になりながらも渋々納得してくれた。
「だから僕は後方からリアを守るためにも、魔法を極めてだね……」
そう得意気に話していた時、またしても例の悪寒が背中を走り抜けた。
「リア、離れて!」
「はっ?」
叫ぶと同時に僕はリアから一気に距離を取った。次の瞬間。オレンジ色の雷光が僕の全身を貫いて、パリパリっと少量の帯電を残して消え去った。
「えええええ!?」
「ま、またか……」
クリーンで綺麗にしたばかりなのに、僕はバッタリと芝生に倒れる。
「な、何なの? これも神罰ってやつなの?」
「そ、そうなんだ……僕が道義にもとる事をしたら創造の女神様が罰を与えるって……」
「なあんだ、じゃあマサヤが悪いんじゃない! 言われてみれば、さっきのもあなたが悪かったしね!」
いや、でもパーティの編成としてレベルも技術も下の僕とダブルで前衛をやれとか酷くないですか? ないですか、そうですか。僕は諦めの境地で、リアに前言を撤回する羽目になった。
「あつつ……何か慣れてきたのか回復が早いな」
「一応聞くけど、大丈夫?」
何だかんだと言って心配してくれるリアは本当にいい子だ。僕も自分の考えを、自分自身で改める事にした。
「リア、さっきの話だけど、やっぱり二人で攻めをする編成にしよう
」
「マサヤ!」
「やっぱり、男なら女の子を守れるぐらい強くなくちゃね」
「そうこなくちゃ!」
どこぞのフェミニスト団体や人権派とやらに文句を言われそうだが、ここは異世界なのだ。女の子のために張る見栄もあったっていいじゃないか。事実、リアはこんな事であんなに嬉しそうに笑ってくれているんだから、ちょっとの苦労くらい安いものだと思おう。
「さて、それじゃあ魔法の練習をするわね!」
「うん、よろしくお願いします!」
僕の師匠役が出来るのがそんなに嬉しいのか、リアのドヤ顔が全く崩れない。
「さて、マサヤ。あなた魔力の流れを感じる事は出来るかしら?」
「うーん、今までやってみたことないから解らないな」
「でしょうね。じゃあまずはそこからやってみましょうか!」
というわけで、リアとの魔法練習が始まった。
「最初は体の中を流れる何かを感じ取る事から始めるの! 受け売りだけどね!」
リアの教師ということは王族の家庭教師なのだからさぞかし優秀な人材だったに違いない。僕はリアの残念な所を差し引いても物覚えは悪くない所を認めているので、素直に言葉に従った。
体の中を流れる……。血液のような感覚だろうか?
「意識をお腹に集中しながら、そこから全身を巡っていく何かをイメージすると掴みやすい……はずよ!」
ちょっとリアの言葉が怪しくなってきたが、言われた通りに目を閉じお腹に意識を集中する。すると、今まで感じたことのない不思議な感触がお腹を中心に脈動するように全身へと意識が移っていくのが解る。
「あっこれかな?」
「えっ嘘っ!? 私でも1時間くらいかかったのに!?」
「うーん、多分。これを、手のひらに集中して……」
お腹からの脈動が激しくなり、右手へと実態のない熱のようなものが集まっていく。僕は無意識に何を言うべきかを悟り、目を開き、手を水平にかざして手のひらを垂直に立て、唱えた。
「火よ」
ぼぉうっ!! と人の等身程もある炎が出現し、赤々と燃え盛って消える事無く留まっていた。それと同時に、自分の中の何かが吸い取られていくように外へと抜け出していくのを感じる。
「ちょ、ちょっと! 止めて止めて!!」
「えっ!?」
リアの悲鳴に、僕は集中を切らしてしまい、瞬く間に炎が消失した。何故止めたのかと文句を言ってやろうとしたが、それよりも早くリアが駆け寄ってくる。
「あ、あなた何考えてるの!? 初回であんな大きな炎出して魔力が枯渇したらどうするのよ!!」
「えっ、あっ」
「大丈夫? 気分が悪いところはない? 頭痛は?」
矢継ぎ早の質問にたじたじだったが、リアが真剣に僕の身を案じてくれているのが解るので、丁寧に答えていく。
「大丈夫、気分が悪いとか体調がよくないことはないよ」
「はあぁぁぁ……本当にビックリしたわ! あんなの、初めてで使う魔法じゃないわよ!」
リアは心底疲れたように溜息をつき、ぶちぶちと僕に文句を言ってきた。
「大体、何よあの詠唱! 生活魔法でもないのに、あんな単純な言葉で魔法が現れるなんて……やっぱり、創造神様のご加護の一つなのかしら」
「それは解らないけど、なんとなく頭に浮かんだ言葉をそのまま発したら出来ちゃったんだ」
僕の言葉に、リアは呆れたようにぽかんと口を開けた。
「出来ちゃったって……。そうね、マサヤだものね」
「ちょっと待って、その“リアだから”みたいに言われるのは聞き捨てならないな」
「それこそ待ちなさいよ!? 何、その定番のセリフみたいに思われてたの私!?」
リアが細かい事を指摘してくる。
「それにしても、これならもう全属性の魔法も何となくで使えちゃいそうね」
「そうだ、あれ試してみよう!」
「アレ?」
「そうそう。魔力を……集中して……」
一度覚えた感覚のためか、先程よりもよりスムーズに魔力が集中される。
「クリーン!」
僕がその詠唱を唱えると、ブワッと僕を中心に足元から光輪が際限なく広がっていき、あちこちから戸惑いの叫び声が上がる。
「な、なんだ、急にすっきりしたぞ!?」
「あれ? ほつれてた所が直ってるわ!」
「なんか体がぽかぽかする! でもいい気持ちだわー」
表通りからのそんな騒々しさが伝わってきて、僕は額にたらりと冷や汗をかいていた。
「ク、クリーン出来たよ?」
「出来たよ? じゃないでしょ!? どんだけ魔力無駄遣いしてるの、マサヤはっ!? こんな超広範囲クリーンなんて聞いたこともないわ! それに、服の修繕て何よ? クリーンにそんな効果ないわよ!?」
テンション高くガーガーと喚くリアに苦笑しながらも、僕は割と気軽に考えていた。だって、出来ちゃったもんは仕方がない。
「あのね、マサヤ。魔法を使うには周囲のマナと共に本人の魔力が削られるの。周辺のマナは自然界から勝手に供給されるから、普通の魔法なら何しても心配ないわ。あなたの例のアレ以外はね」
するりと嫌味を言われたがスルーした。
「でも、魔力は別。これは未だにどういう力なのか解ってないけど、私達の中に“ある”のは確実な力なの。それが、さっきの体の中を循環している力なのだけど……マサヤの魔力は同列のはずの勇者の私に比べても桁外れに凄いみたいね」
「そっか。じゃあ僕は後方支援、リアは前衛でいいよね」
「あなた仮にも男でしょう!? 自分が前に出るって考えはないの!?」
「うん」
「えっ!? ないの!?」
「うん」
「マサヤ、あなたって人は……」
だって、仕方ないじゃないか。今のメンバーだとどう考えてもリアの方が剣術、体力、耐久性に優れているのだから、前衛が二人で突撃なんてしたら目も当てられない。そのような事をとうとうと説明したら、リアは何だか騙されたような顔になりながらも渋々納得してくれた。
「だから僕は後方からリアを守るためにも、魔法を極めてだね……」
そう得意気に話していた時、またしても例の悪寒が背中を走り抜けた。
「リア、離れて!」
「はっ?」
叫ぶと同時に僕はリアから一気に距離を取った。次の瞬間。オレンジ色の雷光が僕の全身を貫いて、パリパリっと少量の帯電を残して消え去った。
「えええええ!?」
「ま、またか……」
クリーンで綺麗にしたばかりなのに、僕はバッタリと芝生に倒れる。
「な、何なの? これも神罰ってやつなの?」
「そ、そうなんだ……僕が道義にもとる事をしたら創造の女神様が罰を与えるって……」
「なあんだ、じゃあマサヤが悪いんじゃない! 言われてみれば、さっきのもあなたが悪かったしね!」
いや、でもパーティの編成としてレベルも技術も下の僕とダブルで前衛をやれとか酷くないですか? ないですか、そうですか。僕は諦めの境地で、リアに前言を撤回する羽目になった。
「あつつ……何か慣れてきたのか回復が早いな」
「一応聞くけど、大丈夫?」
何だかんだと言って心配してくれるリアは本当にいい子だ。僕も自分の考えを、自分自身で改める事にした。
「リア、さっきの話だけど、やっぱり二人で攻めをする編成にしよう
」
「マサヤ!」
「やっぱり、男なら女の子を守れるぐらい強くなくちゃね」
「そうこなくちゃ!」
どこぞのフェミニスト団体や人権派とやらに文句を言われそうだが、ここは異世界なのだ。女の子のために張る見栄もあったっていいじゃないか。事実、リアはこんな事であんなに嬉しそうに笑ってくれているんだから、ちょっとの苦労くらい安いものだと思おう。
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