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異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。

N通-

ギルドでの戸惑い

「って意気込んでいたけど、とりあえずギルド行くんだったよな」

「マサヤってば子どもみたいにはしゃいじゃって、恥ずかしいわ!」

「うるさいな、いいじゃないか。生まれて始めて魔法が使えるようになったんだから」

 僕の浮かれっぷりをからかってくるリアをいなしつつ、僕達は冒険者ギルドへと向かった。昨日アルノさんから明日の朝には用意できるはずだと聞いていたからだ。

 時刻は昼前の中途半端な時間になってしまったので、冒険者ギルドの中は人が少ない。カウンターに並んでいる人間も然程おらず、二人ばかり順番を待っていたらすぐにアルノさんのカウンターへとたどり着けた。

「いらっしゃいませ! ご用件は昨日のゴブリンの魔石の換金引取でよろしいですか?」

 花のような笑みで出迎えてくれるアルノさん。やっぱり美人だ。

「さっきは子どもみたいかと思ったら妙な色気出しちゃって、本当にマサヤってば節操ないのね!」

「人を女たらしみたいに言うの止めてくれない? 僕がいつ色気を出したんだよ」

 腕組みをしジト目で睨んでくるリアに、僕が言い返すとすかさず反論してきた。

「宿屋のマール、メロメロだったじゃないの」

「あれは、ただ恩に着てそれを返してくれてるだけだろう?」

「だったら! なんで! 一番の功労者の私に対する態度がなってないのよ!」

「そう言えば!?」

「気付きなさいよ!?」

 うーむ、あの宿屋謎が多いな? 等とリアとやりあっていると、目の前からゴホン、と咳払いが聞こえてきた。

「あ、すみませんアルノさん。勝手に話始めてしまって」

「それはいいんですけど、その、マールさんというのはどなたですか?」

「私達が泊まっている宿屋の娘よ! すーぐマサヤを誘惑するんだから!」

 その言葉に、アルノさんからピキッと何かがひび割れるような音が聞こえたような。

「あの、アルノさん?」

「なんでしょう、マサヤさん」

「何か怒ってませんか?」

「そんな、何故一介の受付嬢である私が怒らなくてはならないんですか?」

「そう言えばそうですね。気のせいでした」

「引っ込むの早くないですか!?」

 アルノさんが得体の知れない衝撃を受けているように見えるが、何故かは解らない。

「ダメよ、マサヤにそんな回りくどい事をしても効果ないわよ」

 珍しくアルノさんに同情するような眼差しを向けるリアに応えるように、アルノさんもはぁと悩ましげな溜息を零した。

「どうやらそのようですね。全く、これは幸か不幸か解りませんね……」

 謎の女性陣の結束に首を傾げながらも、僕達は本来の用件を切り出した。

「あの、それで鑑定結果についてはどうなってますか?」

「あっそうでしたね」

 アルノさんはさっと仕事の顔に切り替わると、一旦置くへと引っ込んでからまた戻ってきた。その手には小袋が握られていた。

(やっぱりゴブリンだとそんなに金額いかなかったのかな?)

 内心ちょっと残念だけど、宿代の足しになるならいいだろう。元々僕のレベリングが目的でもあったのだから、もらえるだけラッキーくらいの気持ちでいたほうがよさそうだ。

「では、ご確認ください。ゴブリン百二十匹の報酬、銀貨3枚です」

「えっ!? そんなにもらえるんですか!?」

「ええ、何しろ数が数でしたから……途中鑑定士が投げ出しそうになったくらいで」

 苦笑しながらも、手渡してくれた袋の中身をリアと一緒に覗き込む。そこには確かに銀貨が三枚入っていた。

「「おおおおおおお!!」」

 思わず二人でテンションが上がる。何しろ始めての報酬なのだ、これでテンションが上がらないほうがおかしい。そんな風に喜びを分かち合っていた僕達だったが、どこにでも無粋者というのはいるものだ。

「おいおい、ガキがそんな大金必要ねえだろ? 俺がもらってやるから寄越しな」

 明らかに人相の悪い禿頭の冒険者が、テンプレのように絡んできた。っていうかこいつはバカなのか? この辺でリアにケンカ売るなんて頭がおかしいとしか思えない。

「おい、よく見たらそっちの嬢ちゃん上玉じゃねえか。ちょっくら俺達と遊ぼうぜ!」

 バカの仲間らしき二人が後ろから姿を現した。もうこの時点で明らかに気分を害されたリアの機嫌がどんどん悪くなっていく。

「ってわけだ、ガキ。お前に用はねえから金と女置いて帰んな」

 帰れって言われてもね……。

「生憎、僕にはまだ帰れない事情があってね。それとアンタ達みたいな下品な輩にリアは相応しくないと思うよ!」

「マサヤ!」

 リアが歓喜の声を上げて笑う。それが気に食わなかったのか、禿頭の男が無言で拳を僕の頬に叩きつけてきた。衝撃でたたらを踏んだものの、不意打ちの割に痛みが全然ない。不思議に思っていると、禿頭の男が腕を抑えて呻いていた。

「ぐあぁぁあ! なんだこのガキ、おかしいぞ!?」

「おいおい、グラダ。何遊んでんだよ?」

「遊んでねえよ! おい、このガキやっちまえ!」

 おいおい、ギルド内で堂々と殺人宣言しちゃったぞこいつ。

「ギルド内での私闘は厳禁です! 余りにも目に余ります、衛兵に通報しますよ!?」

 アルノさんが精一杯の虚勢を張って懸命にも擁護してくれたが、こいつらはそれすら理解出来ない程のバカだったらしい。

「衛兵が怖くて冒険者なんてやってられるか! っらぁ!」

 後ろにいた二人の男のウチの一人がショートソードを思い切り振り下ろす。僕の体は自動的に腰のロングソードを抜いて打ち合い、火花が散った。

「な、なんだこのガキ!?」

「だから言ったろ、普通じゃねえんだ! 遊びは終わりだ!」

「それはこっちのセリフなんだけど」

「あ?」

 リアの体がブレた。そうとしか見えない程の速度であの大剣を真上に振り抜いた状態で、静止する。時間にしてわずか数秒、そして絶叫がギルド内に響き渡った。

「ぎゃあああああっ!? 腕がっ!? 俺の腕がああああぁぁっ!!」

 ゴロンと、禿頭の男の腕が床に転がる。

「これは正当防衛よ。そうよね、アルノさん」

「は、はい……ギルドはこの件に関して一切関知しません」

「そう。じゃあ遠慮なく」

 再びリアの体がブレ、真上からギルドの床板をめくり上がらせる程振り下ろし、今度は反対側の腕を切り落とした。

「あ……がぁ……」

 禿頭の男は余りの激痛からか、白目を抜いて倒れ込んだ。これを見ていた後ろの二人は、すっかり顔を青くして尻込みする。

「お、俺達は関係ねえ! グラダの野郎が……!」

「言い訳無用」

 リアはまたしても俊足で男たちの背後に回り込むと、大剣をフルスイングして二人の男の膝下を消し飛ばした。

「ぎゃああああああああ!!」

「あ、足が……足がああああああ!!」

 二人は地面をのたうち回り、顔面は痛みと恐怖と涙と鼻水とヨダレでぐちゃぐちゃに崩れていた。リアは、そんな三人を見ても眉一つ動かすこと無く冷めた目で見下ろしていた。

「大方、最近王都に入ってきたばかりの余所者でしょう。アルノさん、衛兵に突き出しておきなさい」

「は、はいッ! かしこまりました」

 目の前で起きた惨劇にも動揺を抑えようと必死に努力しているようだったが、アルノさんの声は震えていた。

「さ、マサヤ。今日の依頼を探しましょう?」

「……リ、リア。君は……これを見て何とも思わないのか?」

「マサヤ、言ったはずよ。これは正当防衛だと。この世界ではね、弱い者を食い物にするクズが沢山いるの。そういう奴は早目に潰しておかないと犠牲者が出るのよ。マールみたいにね」

 確かにマールさんとの出会いも似たようなものだった。だが、アッチはまだ形無き神の分体とやらだったから、まだ何も感じずにいられたのかもしれない。

 でも。僕が本当に怖かったのは。

 この光景を見ても、それを至極当然の事として受け入れようと働きかける僕自身の心の動きだった。

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