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異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。

N通-

朝食は講義の後で?

 翌朝。異世界に来てからは初めての朝だった。ベッドは多少固いものの寝る分には申し分なく、爽快な朝と言える。と、そこへドアをノックする音が響く。

「はい、どちら様ですか?」

「私よ、私」

「私私詐欺ならお引き取りください」

「何寝ぼけてるの! ドア壊すわよ!?」

「やめて壊さないで!? すぐに出るから!」

 万が一ドアを壊してジョスさんに修理を依頼するなんて情けない事はしたくない。

「おはよう、リア」

 朝から疲れた顔で迎えると、リアは正反対の明るい笑顔で応える。

「おはよう、マサヤ! って、あなたもしかしてクリーン使ってないの?」

「あ、そう言えばそんな魔法あったね。それってどうやって覚えるの?」

「あーら、マサヤさんてばそんな事も知らないのねえ! いいわー、と・く・べ・つに私が教えてあげてもいいわよ!」

「君は一体どこまでドS女だよ!?」

「あら、人を変態趣味みたいに言わないでよ。ちゃんと教えてあげるんだから」

「へーへーそりゃありがとうございます」

「ところでマサヤは魔法適正は何があるの?」

 また解らない言葉が出てきたぞ。

「その魔法適正って何さ」

 すると、リアはうっかりしていたとでも言うようにぽんと手をたたく。

「あ、そっか。マサヤは異世界人だから洗礼も受けてないのよね。今日は最初に洗礼を受けに行くのがいいと思うわ」

「うーん、よくわからないけど続きは朝食を食べながらにしないか?」

「それもそうね」

 というわけで一旦はリアにクリーンの魔法をかけてもらい、支度をして食堂へと向かった。

「あ……おはようございますマサヤさん! と勇者様」

「ちょっと、ついでみたいに言うのやめてもらえないかしら」

「あら、私としたことがついうっかり」

 一階に降りて早々にこれである。マールさんは何かとリアの事を邪険に扱うし、リアもリアでそれに反発してすぐに頭に血を上らせるし。二人の相性が悪いんだろうなあ。

「マールさん、朝食をお願いしたいんですけど」

 割と強引に割って入って、話を変える。

「ああ、そうでしたね。朝食はメニューが固定なので、席に座ってお待ちくださいね」

「はい、解りました。ほら、リア。行こうよ」

「命拾いしたわね!」

 朝から物騒な事を言わないで欲しい。流石にマールさんも冷や汗をかいて逃げるように奥へと引っ込んでいったじゃないか。案内役がいなくなってしまったので、適当な席に着いて辺りを見回すと僕達以外に客がいない。朝食はどうもサービスでしかやってないみたいだし、泊り客もいなければ当然と言えば当然か。

 しかし何でこの宿こんなに人気がないんだろう? ジョスさんやメイヤさんの人当たりも悪くないし、立派な看板娘もいる。夜にはそこそこ食事目当てのお客さんも来るのに、不思議で仕方がない。

「ちょっと、マサヤ! 話し聞いてる!?」

「あ、ごめんごめん。それでなんだっけ」

「だから、洗礼を受けに神殿に行かないといけないのよ。マサヤの魔法適正を調べるためにね」

「その神殿っていうのは、王都にあるの?」

「もちろん、聖教会の神殿は各国の王都にあるし、小さな教会もよっぽど辺鄙な開拓地以外は建ってるのが普通って聞いたわ」

 ふむ、なるほど。僕は宗教に関しては余りいい現代地球のイメージから余りいい感情を持ってはいないが、その聖教会とやらがこの世界で一般的に普及しているらしかった。

「その洗礼? っていうのついて教えてくれる?」

「いいわよ。洗礼っていうのは、普通5歳になったら、誰でも聖教会で受けられるの。その時に自分の魔法適正も一緒に神託で授かるのよ。ちなみに私は勇者だからか、全属性持ちだけどね!」

 流石勇者補正、チートにも程がある。

「属性ってのは何種類あるのかな」

「そうね、地、水、火、風、聖、闇、無の7属性あるわ。この世界の曜日の元にもなってるでしょ?」

 でしょ、と言われてもこの世界の曜日についてまでは知らなかった。なるほど、つまり全属性持ちということは7つの属性を持っているということなんだな。

「それじゃあ、その属性の適正があったら魔法が使えるようになるの?」

「そうね、基本的には一般人で2個もあれば十分凄いわね。貴族でも4個の属性持っていれば良い方じゃないかしら?」

「え、ちょっとまって、魔法属性って血統で決まるの?」

「うーん、難しい事は解らないけど貴族の方が属性持ちが多いのは確かよね」

 と、そこへ朝食のパンとスープ、リンゴを持ってきたマールさんが話しに加わる。

「貴族の方は、魔法属性の多い方をお嫁やお婿に迎えるのが一種のステータスになっておりまして、平民でも魔法属性が多い人は貴族へ嫁いだりすることも良くあるんですよ」

「へえー、そうなんですか。じゃあ全属性持ちのリアなんて引っ張りだこなんじゃ……」

「そうですね、普通ならそうなんでしょうけど、何しろ勇者としての使命を持っておられますから。国王様が勇者様への求婚の類を出すのは罰するとお触れまで出しているので、このままだと勇者様は結婚は難しいかと……」

 ふと、リアが以前に呟いていた言葉が蘇る。籠の鳥とは正にこのことか。誰とも幸せになれないなんて、こんな悲しい事はないだろう。リアにだって自由恋愛をする権利位あると僕は思う。

「リアはリアだ。結婚の道具にならなくて良かったって考えたらいいんじゃない?」

「……マサヤ」

「それに、魔王を倒してしまえば後は自由なんだろう?」

「……そうね! 魔王なんて私達でちょいちょいとやっつけて、残りの人生好きに生きていくわ!」

 と、話がまとまりかけた所でマールさんが爆弾を投げつけてきた。

「あ、でもマサヤさんも勇者様なのでしたらもしかして結婚も出来てしまうかもしれないのでは……」

「「えっ」」

 僕とリアが結婚? いや、いやいや。それはないでしょ。僕そもそも異世界人だし。こっちの人間と子どもが出来るかも怪しいのに、そんな事有り得ない。そのような事を言い訳がましくまくし立てると、リアがキョトンとした顔で返してきた。

「伝説の初代勇者様も異世界人だったけど、ヴァールスに残って結婚してたわよ? その子孫の一族の国が今でもあるわけだし」

「えっ!? そうなの!?」

「っていうか、この国がそうなんだけど」

 って、この国初代勇者が興した国だったのかよ!

「魔族領との境目の土地なんて誰も欲しがらなかったから、勇者様はまた魔族たちがよからぬ事を考えないか心配してこの地に国を興し、監視の役目を請け負ったって伝説には残ってるわね」

 リアの説明に、何故この国が勇者召喚を行ったのか初めて理解した。リアと初めて会った時に伝説の再来だのなんだのと騒いでいたのは、このせいだったんだな。

「……その割には王族の方々の髪とか目の色は黒が全く入ってなかったような?」

 国王様も王妃様も、僕の両親に激似だったけど唯一の違いと言えば髪色と瞳の色だった。国王様は白銀色だったし、王妃様はリアと同じ燃えるような赤髪だったのだ。

「それが、初代様以降は黒髪黒目の人間が王家には入ってこなくて血が薄くなってしまって。今ではヴァールスの人間と変わりない程に薄まってしまっていると言われているわ」

 というか、こんな国の重要事項を町中の宿屋で話してて問題にならないんだろうか? ……まあ、リアがそこまで考えていないというのは重々承知しているけども。

「でも、マサヤさんがどんな属性を持っているのか楽しみですね!」

「そうね! まあ私には敵わないでしょうけどね!」

「いつも一言多いんだよ、リアは」

「でもこれから私はー、マサヤの魔法の師匠になるわけだしー、敬ってもらわないとね!」

 ドヤ顔で嬉しそうに笑うリアに、僕はこれからの生活について暗澹あんたんたる気持ちを抱えずにはいられなかった。

「さ、早速食べたら出発しましょ!」

 リアの一言で、ようやく朝食の事を思い出した僕は、ちょっと固めのパンをかじりつつ上機嫌なリアに溜息をついたのだった。

「異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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