異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。
宿を探そう!
結局枯渇したマナとやらが復活するまでに夕方までかかった。これは覚えておくべき事じゃないかな? 大体どの程度でマナが復活するのか、把握しておいて損はないだろう。
「いやー、今日はいっぱい狩れたわね! マサヤ!」
「そうだね! リアさんあなたやりすぎでしたけどね!?」
「なんでよ! 魔石いっぱい集まって嬉しいじゃない!」
「加減ってもんを知れって言ってんですけどね!」
「これだから異世界人は……」
「脳筋勇者に言われたかないわっ!」
やいのやいの言いながら、僕達は冒険者ギルドの受付カウンターまで戻ってきていた。丁度冒険者たちが帰ってくる時間なのか、ギルドの受付には行列が出来ていた。
「ああ、この時間は混むんだね」
「そりゃあ、みんな夜になる前に換金とかしたいでしょうからね」
「リアが真っ当なこと言ってる!」
「いい加減私への認識について改める気はないの!?」
等とリアをからかいながら並ぶこと一〇分程で、アルノさんのカウンターへと辿り着いた。僕達を見ると、顔を綻ばせて迎えてくれるアルノさん。
「まあ、お二人ともご無事でなによりです。常設任務のゴブリン退治でしたよね? どうでしたか、初めての実戦は」
僕は正直に言うことも出来ずに曖昧な笑みでお茶を濁した。それをアルノさんがどう受け取ったのか、少しだけ陰った顔をしたが、すぐにそれを打ち消して努めて明るい声で成果の確認を促してくる。
「それでは、退治したゴブリンの魔石はお持ちですか? 今回は戦闘訓練のみと仰ってましたけど……」
「あるわよいっぱい!」
「まあ、それはギルドとしても助かります。ではこちらのカウンターへと出して頂けますか?」
その言葉に、僕は思わず渋面を作ってしまった。リアも自信満々だった笑みが固まっている。その意味が解らず、アルノさんは小首を傾げた。
「どうしました? やはり今回は魔石を取り損ねたのでしょうか?」
「いっぱいあるって言ってるじゃないの。その……いっぱい、あるのよ」
どんどん尻すぼみになっていくリアの言葉だったが、僕はその気持が解った。どうせまた目立つことをしたら折檻されるのを恐れてなのだろう、ビクビクしながら僕の様子をうかがってくる。
「はあ、とりあえずどれぐらいの量があるのでしょうか?」
「数え切れないくらい……かしら」
リアの返答に、まさか、とアルノさんは顔を引くつかせた。察しのいい人である。
「その、このカウンターには乗り切らないかと……」
僕のダメ押しの発言に、アルノさんは何もかもを悟ったような笑みを浮かべた。
「それでしたら、ちょっと奥の倉庫へご案内しますね。こちらへどうぞ」
キビキビと歩くアルノさんに先導されて、ギルドの奥にある倉庫とやらへと連れられていく。そこでは、様々な人が魔物の解体や素材の鑑定を行っていたりとした、雑然とした空間だった。広さは学校の体育館程だろうか? その一画に設けられているやたら広いテーブルへと僕達は案内された。
「ここは、本来小型の魔物の解体スペースなんですけど……。魔石、出して頂けますか?」
これなら大丈夫だろう。リアと二人頷き合い、リアの持っているアイテムボックスを下に向けて底面をパンパンと叩いた。そしてアイテムボックスからドザーとものすごい勢いで落ちていく魔石。ついにはテーブルにに乗り切らなかった分が数個地面にコロンと落ちてしまった。何事かと倉庫内の視線を一手に集める。
「これまた馬鹿げた数ですね……東平原のゴブリン絶滅してるんじゃないですか?」
ちょっと冷めた目で僕達を睨むアルノさんにビクッと肩を震わせる二人。
「はぁ……まあ、いいでしょう。とりあえず個数を計算して鑑定しますので相応のお時間をいただきますけどよろしいですね?」
「「は、はい!」」
有無を言わさない圧力を感じた僕達は肯定する以外の選択肢を持っていなかった。
二人で倉庫から出てきた途端にはあっと気の抜けた吐息が漏れる。
「あの、アルノ? って人、中々やるわね……勇者の私に全く物怖じしない態度だったし」
「あの人もリアの扱い方を解ってきたってことじゃないのかな」
「それどういう意味!?」
「君はいつもやりすぎなんだよ! もうちょっと自重を覚えるべきだ!」
等と怒鳴り合いをしていると、気がつけば衆目を集めていた。僕達は途端に黙り込むとずんずか進んでギルドを出て行く。
「で、これからどうするのよ」
「とりあえず宿を取ろうかと思うんだけど……、リアは実家に帰る?」
王城はすぐそこなのだから、わざわざお金を使う必要もないだろうと提案したのだが、リアは駄々っ子のようにいやいやと首を振って否定した。
「絶対にいやっ! 出立してすぐに家に帰るだなんて、お父様に面目が立たないわ!」
「いや、あの王様なら喜ぶんじゃないかと思うけど……」
「そ、それにお母様が怖いし……」
本音はどうやらそっちのようだ。
「ふう、仕方ない。それじゃあ良さげな宿を探すとするか」
「そうね! 勇者の私にふさわしいグレートな宿がいいわね!」
「そんなお金ないの! リアさんあなた節約って言葉知ってますかね!?」
「じょ、冗談よ、冗談」
俺の剣幕に恐れを為したのか、リアは目の前で手を振り振り冷や汗をかいていた。
「とは言っても、町中の事は余り詳しくないんだよなあ。アルノさんに聞いておけば良かったかな」
しかし今更忙しいであろう所に舞い戻って宿をたずねるのは格好悪い。しばらく、大通りをブラブラとリアと二人で歩いているとガタンっ! と不穏な音が一本筋の入った道から聞こえてきた。
「今のは……あっ、リア!?」
「行くわよ、マサヤ!」
その顔はキラキラと輝いていて、厄介事が起きている事を確信した上で首を突っ込みたくて仕方ないと雄弁に物語っていた。走り出したリアに続き、僕も音を頼りに駆け抜ける。
「いやっ、離して下さいっ!」
「そうはいかねえ、こっちゃ払うもん払ってもらってねえんだ、とっとと言うこと聞きやがれ!」
「そうだぜー、マール。もういい加減諦めて素直になれよ。なあに、奴隷落ちだけは勘弁してやるからよ。まあ、奴隷のほうがマシな生活になるかもしれねえけどな? いっひっひ」
もう遠くに聞こえる会話だけで大体の事情を察せられるほど酷い内容だった。義憤に駆られたのか、リアはスピードを上げて騒動の渦中に飛び込んでいく。
「そこまでよっ! その子を離しなさい!!」
「なんだあ、おめえ達は、邪魔すんな!」
「そーそー、俺達は真っ当な商売の範疇でやってんの。嘘だと思うならそこのマールに聞いてみな」
チンピラ風のノッポとチビの二人が促すと、マールと呼ばれた人は叫び声を上げた。
「嘘です!! ちょっとお金を借りただけなのに、それが何十倍にもなって払えなくなって……利子ですら払えない状況に追い込まれてるんですっ!」
「なーに言ってんだ、こっちにはちゃんと証文があるんだよ。ほれ」
チンピラのノッポの方がピラッと広げた紙には何が書いてあるのか僕に解らなかったが、リアにはしっかり読めたようだ。内容を理解して顔をしかめている。
「……本当にそう書かれているわね」
「そんなはずありません! きっと証文をすり替えたんです!」
「契約魔法は使ったの?」
リアの問に、マールさんは顔を俯かせてしまった。
「それは……少額だったものですから、契約魔法はいらないって説得されて……」
「おいおい、俺たちゃ親切で言ってやったんだぜ? それを人聞きの悪いように言ってもらっちゃ困るなあ」
あくまでも自分たちが有利である事を誇示するチビのチンピラの言葉に、リアはニヤリと笑った。
「そう、証文もある、契約としては取り交わされている……だから何?」
「「は?」」
えっ? と僕までチンピラと同じようにリアを見る。
「そんなことこの赤い死神勇者 リア様には関係のないことよ!」
「あ、赤い死神だって!? どんな揉め事も圧倒的暴力で粉砕するっていうあの……!」
流石のチンピラ達もリアの悪名を聞いて腰が引けている。こういう時には役に立つんだな、二つ名って。
リアは、ザンッと大剣を振り回してから構え、有無を言わさぬスピードでノッポのチンピラに斬りかかる!
「は、はああっ!?」
突然の奇行に叫び声しか上げられないノッポは、手にしていた証文とやらをアッサリと切り裂かれてへたり込んだ。
「あ、あ、あんた頭イカれてるのか?! 証文は契約の紙、エディ神の加護があるんだぞ!?」
切り裂かれた証文はぼっと燃えだすと、黒い炎を立ち上らせて、やがてそれが空中で渦を作り、段々とその大きさを増していった。そして、その渦の中心から地の底から響き渡るような恐ろしい声が響き渡る。
『我が契約を邪魔したものは何者ぞ……』
「言わんこっちゃねえ! もうこうなったら俺らは知らねえからな!」
チンピラ二人はマールさんを突き飛ばすように逃げ出し、リアは傲岸不遜といった態度で黒い渦と相対する。僕は、突き飛ばされたマールさんに駆け寄るとその体を支えた。
「だ、大丈夫ですか?」
「え、ええ。私は大丈夫です」
「そんな事言って、震えてるじゃないですか」
僕の指摘にマールさんは青かった顔に少し赤みをさして、ぎゅっと抱き付いてきた。思わず声を上げそうになったが、恐怖に震えている女の人を突き放せようはずもなく、そのままの体制でリアを振り返る。
「エディ神なんて、創造神様の下っ端じゃないの! 創造神様の加護をもらっている私に勝てるとでも思っているのかしら!?」
『何だと……創造神の加護を持つ者が何故我が契約の邪魔をする』
「エディ神は契約と平等の神だったはず。今じゃ性根の悪い奴らに利用されるだけのしがない神様よね!」
『我を侮辱するか!』
「やる気? 私に勝てる気でいるなら大間違いよ!」
僕はもう、事の推移を見守っていくことしか出来ない。
「気をつけて、リア!」
「任せなさい……って、何やってんのマサヤ!? 私がこれから決戦しようって時に!?」
「そこを今怒るの!? ほ、ほら! 何か攻撃されようとしてる! 前見て、前!」
「あとで覚えてなさいよ、マサヤ!」
『我が威容をその身に受けて滅するがいい!!』
「どうせ分体の一つのクセに粋がるんじゃないわよ! いくわよ!」
「いやー、今日はいっぱい狩れたわね! マサヤ!」
「そうだね! リアさんあなたやりすぎでしたけどね!?」
「なんでよ! 魔石いっぱい集まって嬉しいじゃない!」
「加減ってもんを知れって言ってんですけどね!」
「これだから異世界人は……」
「脳筋勇者に言われたかないわっ!」
やいのやいの言いながら、僕達は冒険者ギルドの受付カウンターまで戻ってきていた。丁度冒険者たちが帰ってくる時間なのか、ギルドの受付には行列が出来ていた。
「ああ、この時間は混むんだね」
「そりゃあ、みんな夜になる前に換金とかしたいでしょうからね」
「リアが真っ当なこと言ってる!」
「いい加減私への認識について改める気はないの!?」
等とリアをからかいながら並ぶこと一〇分程で、アルノさんのカウンターへと辿り着いた。僕達を見ると、顔を綻ばせて迎えてくれるアルノさん。
「まあ、お二人ともご無事でなによりです。常設任務のゴブリン退治でしたよね? どうでしたか、初めての実戦は」
僕は正直に言うことも出来ずに曖昧な笑みでお茶を濁した。それをアルノさんがどう受け取ったのか、少しだけ陰った顔をしたが、すぐにそれを打ち消して努めて明るい声で成果の確認を促してくる。
「それでは、退治したゴブリンの魔石はお持ちですか? 今回は戦闘訓練のみと仰ってましたけど……」
「あるわよいっぱい!」
「まあ、それはギルドとしても助かります。ではこちらのカウンターへと出して頂けますか?」
その言葉に、僕は思わず渋面を作ってしまった。リアも自信満々だった笑みが固まっている。その意味が解らず、アルノさんは小首を傾げた。
「どうしました? やはり今回は魔石を取り損ねたのでしょうか?」
「いっぱいあるって言ってるじゃないの。その……いっぱい、あるのよ」
どんどん尻すぼみになっていくリアの言葉だったが、僕はその気持が解った。どうせまた目立つことをしたら折檻されるのを恐れてなのだろう、ビクビクしながら僕の様子をうかがってくる。
「はあ、とりあえずどれぐらいの量があるのでしょうか?」
「数え切れないくらい……かしら」
リアの返答に、まさか、とアルノさんは顔を引くつかせた。察しのいい人である。
「その、このカウンターには乗り切らないかと……」
僕のダメ押しの発言に、アルノさんは何もかもを悟ったような笑みを浮かべた。
「それでしたら、ちょっと奥の倉庫へご案内しますね。こちらへどうぞ」
キビキビと歩くアルノさんに先導されて、ギルドの奥にある倉庫とやらへと連れられていく。そこでは、様々な人が魔物の解体や素材の鑑定を行っていたりとした、雑然とした空間だった。広さは学校の体育館程だろうか? その一画に設けられているやたら広いテーブルへと僕達は案内された。
「ここは、本来小型の魔物の解体スペースなんですけど……。魔石、出して頂けますか?」
これなら大丈夫だろう。リアと二人頷き合い、リアの持っているアイテムボックスを下に向けて底面をパンパンと叩いた。そしてアイテムボックスからドザーとものすごい勢いで落ちていく魔石。ついにはテーブルにに乗り切らなかった分が数個地面にコロンと落ちてしまった。何事かと倉庫内の視線を一手に集める。
「これまた馬鹿げた数ですね……東平原のゴブリン絶滅してるんじゃないですか?」
ちょっと冷めた目で僕達を睨むアルノさんにビクッと肩を震わせる二人。
「はぁ……まあ、いいでしょう。とりあえず個数を計算して鑑定しますので相応のお時間をいただきますけどよろしいですね?」
「「は、はい!」」
有無を言わさない圧力を感じた僕達は肯定する以外の選択肢を持っていなかった。
二人で倉庫から出てきた途端にはあっと気の抜けた吐息が漏れる。
「あの、アルノ? って人、中々やるわね……勇者の私に全く物怖じしない態度だったし」
「あの人もリアの扱い方を解ってきたってことじゃないのかな」
「それどういう意味!?」
「君はいつもやりすぎなんだよ! もうちょっと自重を覚えるべきだ!」
等と怒鳴り合いをしていると、気がつけば衆目を集めていた。僕達は途端に黙り込むとずんずか進んでギルドを出て行く。
「で、これからどうするのよ」
「とりあえず宿を取ろうかと思うんだけど……、リアは実家に帰る?」
王城はすぐそこなのだから、わざわざお金を使う必要もないだろうと提案したのだが、リアは駄々っ子のようにいやいやと首を振って否定した。
「絶対にいやっ! 出立してすぐに家に帰るだなんて、お父様に面目が立たないわ!」
「いや、あの王様なら喜ぶんじゃないかと思うけど……」
「そ、それにお母様が怖いし……」
本音はどうやらそっちのようだ。
「ふう、仕方ない。それじゃあ良さげな宿を探すとするか」
「そうね! 勇者の私にふさわしいグレートな宿がいいわね!」
「そんなお金ないの! リアさんあなた節約って言葉知ってますかね!?」
「じょ、冗談よ、冗談」
俺の剣幕に恐れを為したのか、リアは目の前で手を振り振り冷や汗をかいていた。
「とは言っても、町中の事は余り詳しくないんだよなあ。アルノさんに聞いておけば良かったかな」
しかし今更忙しいであろう所に舞い戻って宿をたずねるのは格好悪い。しばらく、大通りをブラブラとリアと二人で歩いているとガタンっ! と不穏な音が一本筋の入った道から聞こえてきた。
「今のは……あっ、リア!?」
「行くわよ、マサヤ!」
その顔はキラキラと輝いていて、厄介事が起きている事を確信した上で首を突っ込みたくて仕方ないと雄弁に物語っていた。走り出したリアに続き、僕も音を頼りに駆け抜ける。
「いやっ、離して下さいっ!」
「そうはいかねえ、こっちゃ払うもん払ってもらってねえんだ、とっとと言うこと聞きやがれ!」
「そうだぜー、マール。もういい加減諦めて素直になれよ。なあに、奴隷落ちだけは勘弁してやるからよ。まあ、奴隷のほうがマシな生活になるかもしれねえけどな? いっひっひ」
もう遠くに聞こえる会話だけで大体の事情を察せられるほど酷い内容だった。義憤に駆られたのか、リアはスピードを上げて騒動の渦中に飛び込んでいく。
「そこまでよっ! その子を離しなさい!!」
「なんだあ、おめえ達は、邪魔すんな!」
「そーそー、俺達は真っ当な商売の範疇でやってんの。嘘だと思うならそこのマールに聞いてみな」
チンピラ風のノッポとチビの二人が促すと、マールと呼ばれた人は叫び声を上げた。
「嘘です!! ちょっとお金を借りただけなのに、それが何十倍にもなって払えなくなって……利子ですら払えない状況に追い込まれてるんですっ!」
「なーに言ってんだ、こっちにはちゃんと証文があるんだよ。ほれ」
チンピラのノッポの方がピラッと広げた紙には何が書いてあるのか僕に解らなかったが、リアにはしっかり読めたようだ。内容を理解して顔をしかめている。
「……本当にそう書かれているわね」
「そんなはずありません! きっと証文をすり替えたんです!」
「契約魔法は使ったの?」
リアの問に、マールさんは顔を俯かせてしまった。
「それは……少額だったものですから、契約魔法はいらないって説得されて……」
「おいおい、俺たちゃ親切で言ってやったんだぜ? それを人聞きの悪いように言ってもらっちゃ困るなあ」
あくまでも自分たちが有利である事を誇示するチビのチンピラの言葉に、リアはニヤリと笑った。
「そう、証文もある、契約としては取り交わされている……だから何?」
「「は?」」
えっ? と僕までチンピラと同じようにリアを見る。
「そんなことこの赤い死神勇者 リア様には関係のないことよ!」
「あ、赤い死神だって!? どんな揉め事も圧倒的暴力で粉砕するっていうあの……!」
流石のチンピラ達もリアの悪名を聞いて腰が引けている。こういう時には役に立つんだな、二つ名って。
リアは、ザンッと大剣を振り回してから構え、有無を言わさぬスピードでノッポのチンピラに斬りかかる!
「は、はああっ!?」
突然の奇行に叫び声しか上げられないノッポは、手にしていた証文とやらをアッサリと切り裂かれてへたり込んだ。
「あ、あ、あんた頭イカれてるのか?! 証文は契約の紙、エディ神の加護があるんだぞ!?」
切り裂かれた証文はぼっと燃えだすと、黒い炎を立ち上らせて、やがてそれが空中で渦を作り、段々とその大きさを増していった。そして、その渦の中心から地の底から響き渡るような恐ろしい声が響き渡る。
『我が契約を邪魔したものは何者ぞ……』
「言わんこっちゃねえ! もうこうなったら俺らは知らねえからな!」
チンピラ二人はマールさんを突き飛ばすように逃げ出し、リアは傲岸不遜といった態度で黒い渦と相対する。僕は、突き飛ばされたマールさんに駆け寄るとその体を支えた。
「だ、大丈夫ですか?」
「え、ええ。私は大丈夫です」
「そんな事言って、震えてるじゃないですか」
僕の指摘にマールさんは青かった顔に少し赤みをさして、ぎゅっと抱き付いてきた。思わず声を上げそうになったが、恐怖に震えている女の人を突き放せようはずもなく、そのままの体制でリアを振り返る。
「エディ神なんて、創造神様の下っ端じゃないの! 創造神様の加護をもらっている私に勝てるとでも思っているのかしら!?」
『何だと……創造神の加護を持つ者が何故我が契約の邪魔をする』
「エディ神は契約と平等の神だったはず。今じゃ性根の悪い奴らに利用されるだけのしがない神様よね!」
『我を侮辱するか!』
「やる気? 私に勝てる気でいるなら大間違いよ!」
僕はもう、事の推移を見守っていくことしか出来ない。
「気をつけて、リア!」
「任せなさい……って、何やってんのマサヤ!? 私がこれから決戦しようって時に!?」
「そこを今怒るの!? ほ、ほら! 何か攻撃されようとしてる! 前見て、前!」
「あとで覚えてなさいよ、マサヤ!」
『我が威容をその身に受けて滅するがいい!!』
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