異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。
この世界のこと。
「すみません、一般的な貨幣価値について教えて欲しいんですけど」
「異世界の勇者様ですもんね、解らなくても仕方ないですね」
アルノさんはちょっと苦笑しながらも教えてくれるらしい。優しい。
「ちょっと! 何でパートナーの私に聞かないの!?」
「リアさんあなた人の話聞いてました!? 金銭感覚おかしいって指摘されたばっかりですよねえ!?」
「うぐぐ……」
唸りながらも適切な反論を思いつかなかったのか、リアは黙り込んでしまった。よし、ポンコツ勇者はこれでいい。
「えーと、貨幣価値でしたね、それではご説明しますね」
アルノさんの話をまとめると、貨幣は以下のようになっているらしい。
聖金貨 白金貨100枚分
白金貨 金貨100枚分
金貨 銀貨100枚分
銀貨 銅貨100枚分
銅貨 一番下の基本貨幣
大体パン三つとリンゴ一つの値段が(そんなセットは売ってないみたいだけど)銅貨6,7枚くらいらしい。
冒険者の一般的な収入はFランクの依頼だと(依頼によるけども)一回大体銅貨10枚とかなので、Fランクでも食べていくだけなら問題ないらしい。
「ねえ、リア」
「何かしら、マサヤ」
「リアって粗食に耐えられるの……?」
お城で贅沢な食事に慣れていれば、冒険者としての料理なんて受け付けないと思うんだけど。しかし予想とは裏腹に、リアはふふんと胸を張って自慢し始めた。
「私はしょっちゅうお城抜け出して買い食いしてたのよ? 市井の食事なんてもう慣れっこよ!」
「まあ、そこで駄々こねられても食い物は沸いて出てこないから、安心と言えば安心なんだけど……」
全然褒められた行為ではないので、俺もアルノさんも苦笑するしかなかった。
「で、では早速依頼を受けられますか? あちらの掲示板に貼り付けてある依頼で、自分のランクに適合した依頼でしたら剥がしてこちらへお持ちください」
「なるほど、解りました」
「あ、そうそう。注意点がありまして。もし依頼の達成を失敗した場合はポイントが下がって、Fランク以下になってしまうとギルド除名後一年間は依頼を受ける事が出来なくなるペナルティがありますので、くれぐれもご注意くださいね。それと、一応ランクは同ランクか、一つ上のランクのものしか受けられないのでこれもご注意ください」
ふむふむ、なるほど。上級者が初心者の依頼を奪わないようにするためなんだろうな、きっと。
「それじゃあリア、初めての依頼見てみようか!」
「そうね!」
柄にもなくちょっとワクワクしてきた。何しろようやく異世界らしい要素の冒険に出られるのだ。リアと二人うきうきしながら掲示板を眺める。今は人の少ない時間らしく、運のいいことに掲示板の前に人はほとんどいない。
「えーと、どれどれ……」
「これ! これにしましょう、マサヤ!」
「はやっ!? ちゃんと依頼見たの!?」
「失礼ね、見たわよ!」
いいから、と指さされた先にあった依頼は、ゴブリンの討伐依頼、3匹から、というものであった。但し書きに常設依頼と書いてある。
「あ、それは常設依頼ですので剥がさなくても大丈夫ですよ!」
アルノさんがカウンターから身を乗り出して教えてくれた。なるほど、こういう依頼もあるのか。
「で、ゴブリンて強さどうなの」
「駆け出しの冒険者でも退治できるわ! でも囲まれたりするとやっかいな相手ね。一応粗末な武器防具はつけてるから、油断したら怪我するかもって感じかしらね。ま、私には関係ないけどね!」
「ですよねー」
脳筋の加護がついてるリアならば一人でも何とかしてしまいそうだ。
「討伐ってことは、相手を殺さないといけないんだよね?」
「そりゃそうでしょ」
「リアは怖くないの?」
「私は騎士団の討伐任務について回った事もあるから平気よ?」
この世界は、やっぱり相手の生命を奪うことに対しての忌避感が乏しいのだろう。そうしないと生きていけない世界なんだ。現代日本でのほほんと暮らしてきた僕に、果たして見た目が人型に近い生物を殺す事なんて出来るんだろうか……。
「どうしたの、マサヤ。……不安なの? やっぱりやめておきましょうか?」
リアが俺のことをきづかってくれたが、それをやんわりと断った。
「ううん、大丈夫。これぐらいは慣れないと、この世界で生きていくことはできないと思うから」
「じゃあこの依頼受けるわよ、いいわね?」
「うん、やろう!」
「そうこなくっちゃ!」
満面の笑みで答えるリア。アルノさんのところへ二人で行って、依頼の内容について確認する。
「はい、それではゴブリンの討伐ですね。魔物は体内に魔石を持っているので、その魔石を持ってきて頂ければ討伐証明となります。魔物によって魔石の位置は違いますが、大体は体の中心、生物で言えば心臓の位置にあるのが多いですね」
「あの、もしかして倒した魔物を解体しないといけないってことですか?」
「解体せずに持ってきて頂いても構いませんけど、その場合は解体料が別途かかってきます。ただ、ゴブリンはともかく素材がお金になる魔物もいますので、必ずしも損ってことはないんですけどね」
「ちなみにリアは解体の経験は……?」
「あるわけないじゃない!」
だから自身満々に言うことかっ!」
「……すみません、解体の仕方を解説してる教本みたいなものってありますか?」
「ギルドでは月に二回、初心者向けの講習を開催しているのでそれを受けるのも良いと思いますよ。ただ、次の開催は一週間後なんですよね……」
ちなみに、この世界は一週間は七日、四週間で一ヶ月、一二ヶ月で一年と、地球とほぼ変わらない暦で動いているらしい。
案の定、王女様はそれを聞いて即決した。
「待てないわ! どうせやるしかないんだから、最初は慣らしってことで戦闘の経験だけでも積みましょ!」
「待って、倒した獲物はどうするつもり?」
すごい嫌な予感しかしない。
「? 全部持ってくるけど?」
やっぱりか!
「うん、止めておこう?」
「何でよ!」
「町中を血まみれの死体持って歩くなんて狂気の沙汰だわ!?」
「あの、ギルドとしても何体もの獲物の死体をそのまま持ってこられると清掃とかも大変なので遠慮して頂けると……」
「あっ、そうだわ! 私いいもの持ってる!」
またいらんことを思いついたのか、リアは顔を輝かせてゴソゴソとカバンを漁る。
「じゃじゃーん! アイテムボックスよー!」
「おー! 異世界のアイテムっぽい!」
ド定番なアイテムが出てきたので思わず拍手。しかし、それに血相を変えたのはアルマさんだった。
「リ、リア様!? こんな所でそんな国宝級のアイテムを出しては……!?」
「えっ? これってそんな凄いモノなんですか?」
「大貴族や豪商が手に入れるのにも苦労する代物と言えば解っていただけますか?」
「バカ! すぐしまえ!!」
「な、なによぅ。別に見せるくらいいいじゃないの……」
文句を言いながらゴソゴソとしまうリアを中心に、ギルド内に不穏な空気が立ち込める。中には血走った目でリアのカバンを見詰めてる者もおり、それはそれは胃に穴が空きそうな緊張感が支配した。
「でもこれ、お父様からもらったもので既に持ち主登録も済ませてるから、盗られても使えないわよ?」
「そういうものなのか……もし持ち主が死んだ場合は?」
「前の持ち主……つまりお父様が継承することになるわね」
その言葉に、ようやくギルド内の空気が弛緩した。あ、危ない所だった……。もし持ち主が死んだ場合は最初に受け取ったものが所有者に変更されるとかだったら、ころしてでもうばいとる が実行されていたかもしれないのだ。っていっても、この国でリアに敵う相手がいるとは思えないが……。
「さ、それじゃ行きましょマサヤ!」
まるで何事もなかったかのように元気に出発を告げるリアを慌てて追い掛け、僕はこの先も波乱万丈な予感しかしなかった。
「異世界の勇者様ですもんね、解らなくても仕方ないですね」
アルノさんはちょっと苦笑しながらも教えてくれるらしい。優しい。
「ちょっと! 何でパートナーの私に聞かないの!?」
「リアさんあなた人の話聞いてました!? 金銭感覚おかしいって指摘されたばっかりですよねえ!?」
「うぐぐ……」
唸りながらも適切な反論を思いつかなかったのか、リアは黙り込んでしまった。よし、ポンコツ勇者はこれでいい。
「えーと、貨幣価値でしたね、それではご説明しますね」
アルノさんの話をまとめると、貨幣は以下のようになっているらしい。
聖金貨 白金貨100枚分
白金貨 金貨100枚分
金貨 銀貨100枚分
銀貨 銅貨100枚分
銅貨 一番下の基本貨幣
大体パン三つとリンゴ一つの値段が(そんなセットは売ってないみたいだけど)銅貨6,7枚くらいらしい。
冒険者の一般的な収入はFランクの依頼だと(依頼によるけども)一回大体銅貨10枚とかなので、Fランクでも食べていくだけなら問題ないらしい。
「ねえ、リア」
「何かしら、マサヤ」
「リアって粗食に耐えられるの……?」
お城で贅沢な食事に慣れていれば、冒険者としての料理なんて受け付けないと思うんだけど。しかし予想とは裏腹に、リアはふふんと胸を張って自慢し始めた。
「私はしょっちゅうお城抜け出して買い食いしてたのよ? 市井の食事なんてもう慣れっこよ!」
「まあ、そこで駄々こねられても食い物は沸いて出てこないから、安心と言えば安心なんだけど……」
全然褒められた行為ではないので、俺もアルノさんも苦笑するしかなかった。
「で、では早速依頼を受けられますか? あちらの掲示板に貼り付けてある依頼で、自分のランクに適合した依頼でしたら剥がしてこちらへお持ちください」
「なるほど、解りました」
「あ、そうそう。注意点がありまして。もし依頼の達成を失敗した場合はポイントが下がって、Fランク以下になってしまうとギルド除名後一年間は依頼を受ける事が出来なくなるペナルティがありますので、くれぐれもご注意くださいね。それと、一応ランクは同ランクか、一つ上のランクのものしか受けられないのでこれもご注意ください」
ふむふむ、なるほど。上級者が初心者の依頼を奪わないようにするためなんだろうな、きっと。
「それじゃあリア、初めての依頼見てみようか!」
「そうね!」
柄にもなくちょっとワクワクしてきた。何しろようやく異世界らしい要素の冒険に出られるのだ。リアと二人うきうきしながら掲示板を眺める。今は人の少ない時間らしく、運のいいことに掲示板の前に人はほとんどいない。
「えーと、どれどれ……」
「これ! これにしましょう、マサヤ!」
「はやっ!? ちゃんと依頼見たの!?」
「失礼ね、見たわよ!」
いいから、と指さされた先にあった依頼は、ゴブリンの討伐依頼、3匹から、というものであった。但し書きに常設依頼と書いてある。
「あ、それは常設依頼ですので剥がさなくても大丈夫ですよ!」
アルノさんがカウンターから身を乗り出して教えてくれた。なるほど、こういう依頼もあるのか。
「で、ゴブリンて強さどうなの」
「駆け出しの冒険者でも退治できるわ! でも囲まれたりするとやっかいな相手ね。一応粗末な武器防具はつけてるから、油断したら怪我するかもって感じかしらね。ま、私には関係ないけどね!」
「ですよねー」
脳筋の加護がついてるリアならば一人でも何とかしてしまいそうだ。
「討伐ってことは、相手を殺さないといけないんだよね?」
「そりゃそうでしょ」
「リアは怖くないの?」
「私は騎士団の討伐任務について回った事もあるから平気よ?」
この世界は、やっぱり相手の生命を奪うことに対しての忌避感が乏しいのだろう。そうしないと生きていけない世界なんだ。現代日本でのほほんと暮らしてきた僕に、果たして見た目が人型に近い生物を殺す事なんて出来るんだろうか……。
「どうしたの、マサヤ。……不安なの? やっぱりやめておきましょうか?」
リアが俺のことをきづかってくれたが、それをやんわりと断った。
「ううん、大丈夫。これぐらいは慣れないと、この世界で生きていくことはできないと思うから」
「じゃあこの依頼受けるわよ、いいわね?」
「うん、やろう!」
「そうこなくっちゃ!」
満面の笑みで答えるリア。アルノさんのところへ二人で行って、依頼の内容について確認する。
「はい、それではゴブリンの討伐ですね。魔物は体内に魔石を持っているので、その魔石を持ってきて頂ければ討伐証明となります。魔物によって魔石の位置は違いますが、大体は体の中心、生物で言えば心臓の位置にあるのが多いですね」
「あの、もしかして倒した魔物を解体しないといけないってことですか?」
「解体せずに持ってきて頂いても構いませんけど、その場合は解体料が別途かかってきます。ただ、ゴブリンはともかく素材がお金になる魔物もいますので、必ずしも損ってことはないんですけどね」
「ちなみにリアは解体の経験は……?」
「あるわけないじゃない!」
だから自身満々に言うことかっ!」
「……すみません、解体の仕方を解説してる教本みたいなものってありますか?」
「ギルドでは月に二回、初心者向けの講習を開催しているのでそれを受けるのも良いと思いますよ。ただ、次の開催は一週間後なんですよね……」
ちなみに、この世界は一週間は七日、四週間で一ヶ月、一二ヶ月で一年と、地球とほぼ変わらない暦で動いているらしい。
案の定、王女様はそれを聞いて即決した。
「待てないわ! どうせやるしかないんだから、最初は慣らしってことで戦闘の経験だけでも積みましょ!」
「待って、倒した獲物はどうするつもり?」
すごい嫌な予感しかしない。
「? 全部持ってくるけど?」
やっぱりか!
「うん、止めておこう?」
「何でよ!」
「町中を血まみれの死体持って歩くなんて狂気の沙汰だわ!?」
「あの、ギルドとしても何体もの獲物の死体をそのまま持ってこられると清掃とかも大変なので遠慮して頂けると……」
「あっ、そうだわ! 私いいもの持ってる!」
またいらんことを思いついたのか、リアは顔を輝かせてゴソゴソとカバンを漁る。
「じゃじゃーん! アイテムボックスよー!」
「おー! 異世界のアイテムっぽい!」
ド定番なアイテムが出てきたので思わず拍手。しかし、それに血相を変えたのはアルマさんだった。
「リ、リア様!? こんな所でそんな国宝級のアイテムを出しては……!?」
「えっ? これってそんな凄いモノなんですか?」
「大貴族や豪商が手に入れるのにも苦労する代物と言えば解っていただけますか?」
「バカ! すぐしまえ!!」
「な、なによぅ。別に見せるくらいいいじゃないの……」
文句を言いながらゴソゴソとしまうリアを中心に、ギルド内に不穏な空気が立ち込める。中には血走った目でリアのカバンを見詰めてる者もおり、それはそれは胃に穴が空きそうな緊張感が支配した。
「でもこれ、お父様からもらったもので既に持ち主登録も済ませてるから、盗られても使えないわよ?」
「そういうものなのか……もし持ち主が死んだ場合は?」
「前の持ち主……つまりお父様が継承することになるわね」
その言葉に、ようやくギルド内の空気が弛緩した。あ、危ない所だった……。もし持ち主が死んだ場合は最初に受け取ったものが所有者に変更されるとかだったら、ころしてでもうばいとる が実行されていたかもしれないのだ。っていっても、この国でリアに敵う相手がいるとは思えないが……。
「さ、それじゃ行きましょマサヤ!」
まるで何事もなかったかのように元気に出発を告げるリアを慌てて追い掛け、僕はこの先も波乱万丈な予感しかしなかった。
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