異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。
まさかの異世界ドッキリ?
僕達が連れてこられたのは先の儀式場とやらから随分と階段を下っていった先にある、白亜の大宮殿だった。荘厳なその威容は、見るものに圧倒的な畏敬の念を抱かせる。
「これスカイツリーより凄くない?」
「ん? そうかしら? そんなに大したものじゃないわよ」
半ばぼけっとした僕に、リアは実になんでもない事のように言ってのける。
「こんな大きなお城でも、窮屈に感じる事もあるんだから……」
その小さな呟きは、リアの隣にいた僕にしか聞こえなかったようだ。言葉の中に含まれる哀愁については、敢えて触れないようにした。
ひたすら歩かされ、階段を登ったりいくつもの廊下を抜けては扉をくぐり、謁見の間とやらにようやく辿り着いた時にはもう既にくたくたになっていた。
「この先に国王陛下がおわしますから、無礼な振る舞いは極力謹んでくださいね」
僧侶の一人、デクスタと呼ばれていたおっちゃんがこそっと耳打ちしてきた。まあ、流石に異世界のこととはいえ、無礼な真似なんて出来るわけないんだけど。
「お父様……陛下はそんな細かい事気にしないわよ? さ、行きましょ」
あくまで軽いノリのリアの言葉に従って良いものか、悩んで思わずデクスタさんを振り返ると無言で首を横に振っていた。ですよねー。
重厚そうなドアが開かれ、扉の向こうの室内から大きな声で口上が述べられた。
「勇者様御一行! おなーりー!」
偉い人になど会った事のない僕は、相当緊張していたのだと思う。だから、次の僕の行動は責められるいわれはない。はずだ。
(さっ、行くわよ)
颯爽と歩くリアにとぼとぼと言った感じで着いていく僕。これ、どう見ても好印象にはならないと思うけど仕方ない。高校生に何を求めているのだ。王様との謁見の仕方なんて授業で習わなかったぞ。
なんて益体もないことを考え、リアの背中だけをなるべく見つめて、彼女が片膝立ちになり頭を垂れた所で、慌ててその横に並んで同じように片膝立ちになって頭を垂れた。
「うむ、よくぞ参られた、異世界の勇者よ」
「えっ?」
気のせいか、物凄く聞き覚えのある声が……。
「面をあげよ」
「はっ!」
凛とした声で応じるリアの真似をして、声を張り上げ視線も上げるその先にいたのは――。
「えっ!? と、父さん!?」
僕は思わず立ち上がって叫んでしまっていた。だって、そこにいたのは豪奢な服や王冠を頭に載せ威厳漂う雰囲気を醸しているのだが、どう見ても僕の父親、加賀理 譲二だったのだから。
「……。どうされた、異世界の勇者殿」
「えっ、いや、だって……ええっ!? ど、どういうことなのさ父さん!?」
相変わらず事態が飲み込めていない僕は混乱していたが、それ以上に周囲のざわめきが段々と大きくなって行く。そしてふと、そのとうさん(?)の横にいる綺麗な女性が真っ赤な顔で怒りに震えているのに気付いた。
「アナタ、一体どういう事かしら? 市井でオイタでもしたのですか?」
極寒のような冷たい声音で自然に手を王様の肩に置くが、その手がミシミシと凄まじい音を立てていて、父さん(?)の額に脂汗が浮いている。
「わ、私は知らぬ! 勇者殿、幾らなんでもおふざけが過ぎるぞ!」
「っていうか、母さんまで!?」
僕の声に、今度は母さん(?)が怪訝な顔をして僕を見詰める。
「……私は男の子を産んだ覚えがないのですが、何故そのような事を?」
「で、でも……どう見ても俺の父さんと母さんだし……そ、そうだこれ!」
僕は混乱する頭の中で、スマホを取り出して家族で撮った写真を選択し、王様に近付こうとしたが、ガッと後ろから肩を掴まれた。
「ちょっと! 幾らなんでもこれ以上は見過ごせないわ! マサヤ、あなたどうしたの!?」
「リア! これを見てくれよ!」
「何よ……って、ええっ?! こ、ここに描かれてるの、お父様とお母様じゃない!」
スマホの画面を食い入るように見つめたリアだったが、すぐに跳ねるように顔を上げて王の下へと駆ける。
「こ、これを御覧くださいお父様!」
「公式の場では陛下と呼べと……まあ良い。で、これが何だというのだ……こ、これはワシとマルガリタと勇者殿ではないかっ!? 見たこともない衣装を着ているが、ワシらはこのような絵を描かれた覚えなどないぞ!? しかも、絵というには余りにも精緻な……」
驚愕している父さん?王様?えーいややこしい、王様に、僕はスマホの説明をする。
「それは風景を切り取って保存することの出来る道具です。そして、そこに映っているのは僕の父さん、譲二と母さん、麻里です」
「うぅむ……不思議な事もあるものだのお、このような奇縁に恵まれようとは」
立派なあごひげをしごきながら、唸り声を上げる王様の後ろから、王妃様もまたスマホを覗き込んで目を丸くしている。
「失礼を承知でお訊ねしますが、あなたがたと僕の両親は別人……なのでしょうか?」
「ふむ、これだけ似ていると疑うのも無理はないだろうが、我は確かにこの国に生まれ、異世界に行ったことはもちろんない。それは妻のマルガリタも同じことだ」
王様の言葉に、王妃様も上品に頷き肯定する。
「そうですか……。皆さん、王様、大変お騒がせして申し訳ありませんでした」
「よいよい。しかしこの道具は面白いものだな。ワシらを写し撮ることも可能か?」
「あ、もちろんです。(一応充電器とソーラーバッテリーも持ってきて正解だったな)」
「ではワシとマルガリタ、リアを写し取ってみせてはくれぬか!」
王様が子供のように興奮しながら玉座から身を乗り出している。
「じゃあリア、とりあえず渡してくれる?」
「あ、うん……」
素直に返してくれたリアに微笑み、僕は三人をカメラに収める。
「あ、もうちょっと寄って頂いて良いですか? そうそう、それぐらいですね。では、取ります」
パシャッという音と共に写真は無事取れた。それを再びリアに渡すと、リアは驚きながらもすぐに王様にそれを差し出す。
「ほおお! これ凄い! 一瞬でワシらを切り取るとは、素晴らしい魔法の道具だな!」
「魔法ではなく科学なんですが……ま、まあいいでしょう」
ひとしきり写真を回し見して楽しんだ後、左右に立ち並んでいた人々の一人うおっほん。とわざとらしく咳払いをして、じろりと王族の方々を見詰める。
「お、おほん。それでは勇者リア、と、そちは何と言う?」
「は、僕の名前は加賀理 雅也です」
「では、改めて仕切り直しといこうか。思わぬ事態に少々驚いたが、これから話す事はこの国の国難に関すること。しかと聞き届けよ」
「は、はい」
そして僕とリアは再び跪いて、体裁を整えるのだった。
「これスカイツリーより凄くない?」
「ん? そうかしら? そんなに大したものじゃないわよ」
半ばぼけっとした僕に、リアは実になんでもない事のように言ってのける。
「こんな大きなお城でも、窮屈に感じる事もあるんだから……」
その小さな呟きは、リアの隣にいた僕にしか聞こえなかったようだ。言葉の中に含まれる哀愁については、敢えて触れないようにした。
ひたすら歩かされ、階段を登ったりいくつもの廊下を抜けては扉をくぐり、謁見の間とやらにようやく辿り着いた時にはもう既にくたくたになっていた。
「この先に国王陛下がおわしますから、無礼な振る舞いは極力謹んでくださいね」
僧侶の一人、デクスタと呼ばれていたおっちゃんがこそっと耳打ちしてきた。まあ、流石に異世界のこととはいえ、無礼な真似なんて出来るわけないんだけど。
「お父様……陛下はそんな細かい事気にしないわよ? さ、行きましょ」
あくまで軽いノリのリアの言葉に従って良いものか、悩んで思わずデクスタさんを振り返ると無言で首を横に振っていた。ですよねー。
重厚そうなドアが開かれ、扉の向こうの室内から大きな声で口上が述べられた。
「勇者様御一行! おなーりー!」
偉い人になど会った事のない僕は、相当緊張していたのだと思う。だから、次の僕の行動は責められるいわれはない。はずだ。
(さっ、行くわよ)
颯爽と歩くリアにとぼとぼと言った感じで着いていく僕。これ、どう見ても好印象にはならないと思うけど仕方ない。高校生に何を求めているのだ。王様との謁見の仕方なんて授業で習わなかったぞ。
なんて益体もないことを考え、リアの背中だけをなるべく見つめて、彼女が片膝立ちになり頭を垂れた所で、慌ててその横に並んで同じように片膝立ちになって頭を垂れた。
「うむ、よくぞ参られた、異世界の勇者よ」
「えっ?」
気のせいか、物凄く聞き覚えのある声が……。
「面をあげよ」
「はっ!」
凛とした声で応じるリアの真似をして、声を張り上げ視線も上げるその先にいたのは――。
「えっ!? と、父さん!?」
僕は思わず立ち上がって叫んでしまっていた。だって、そこにいたのは豪奢な服や王冠を頭に載せ威厳漂う雰囲気を醸しているのだが、どう見ても僕の父親、加賀理 譲二だったのだから。
「……。どうされた、異世界の勇者殿」
「えっ、いや、だって……ええっ!? ど、どういうことなのさ父さん!?」
相変わらず事態が飲み込めていない僕は混乱していたが、それ以上に周囲のざわめきが段々と大きくなって行く。そしてふと、そのとうさん(?)の横にいる綺麗な女性が真っ赤な顔で怒りに震えているのに気付いた。
「アナタ、一体どういう事かしら? 市井でオイタでもしたのですか?」
極寒のような冷たい声音で自然に手を王様の肩に置くが、その手がミシミシと凄まじい音を立てていて、父さん(?)の額に脂汗が浮いている。
「わ、私は知らぬ! 勇者殿、幾らなんでもおふざけが過ぎるぞ!」
「っていうか、母さんまで!?」
僕の声に、今度は母さん(?)が怪訝な顔をして僕を見詰める。
「……私は男の子を産んだ覚えがないのですが、何故そのような事を?」
「で、でも……どう見ても俺の父さんと母さんだし……そ、そうだこれ!」
僕は混乱する頭の中で、スマホを取り出して家族で撮った写真を選択し、王様に近付こうとしたが、ガッと後ろから肩を掴まれた。
「ちょっと! 幾らなんでもこれ以上は見過ごせないわ! マサヤ、あなたどうしたの!?」
「リア! これを見てくれよ!」
「何よ……って、ええっ?! こ、ここに描かれてるの、お父様とお母様じゃない!」
スマホの画面を食い入るように見つめたリアだったが、すぐに跳ねるように顔を上げて王の下へと駆ける。
「こ、これを御覧くださいお父様!」
「公式の場では陛下と呼べと……まあ良い。で、これが何だというのだ……こ、これはワシとマルガリタと勇者殿ではないかっ!? 見たこともない衣装を着ているが、ワシらはこのような絵を描かれた覚えなどないぞ!? しかも、絵というには余りにも精緻な……」
驚愕している父さん?王様?えーいややこしい、王様に、僕はスマホの説明をする。
「それは風景を切り取って保存することの出来る道具です。そして、そこに映っているのは僕の父さん、譲二と母さん、麻里です」
「うぅむ……不思議な事もあるものだのお、このような奇縁に恵まれようとは」
立派なあごひげをしごきながら、唸り声を上げる王様の後ろから、王妃様もまたスマホを覗き込んで目を丸くしている。
「失礼を承知でお訊ねしますが、あなたがたと僕の両親は別人……なのでしょうか?」
「ふむ、これだけ似ていると疑うのも無理はないだろうが、我は確かにこの国に生まれ、異世界に行ったことはもちろんない。それは妻のマルガリタも同じことだ」
王様の言葉に、王妃様も上品に頷き肯定する。
「そうですか……。皆さん、王様、大変お騒がせして申し訳ありませんでした」
「よいよい。しかしこの道具は面白いものだな。ワシらを写し撮ることも可能か?」
「あ、もちろんです。(一応充電器とソーラーバッテリーも持ってきて正解だったな)」
「ではワシとマルガリタ、リアを写し取ってみせてはくれぬか!」
王様が子供のように興奮しながら玉座から身を乗り出している。
「じゃあリア、とりあえず渡してくれる?」
「あ、うん……」
素直に返してくれたリアに微笑み、僕は三人をカメラに収める。
「あ、もうちょっと寄って頂いて良いですか? そうそう、それぐらいですね。では、取ります」
パシャッという音と共に写真は無事取れた。それを再びリアに渡すと、リアは驚きながらもすぐに王様にそれを差し出す。
「ほおお! これ凄い! 一瞬でワシらを切り取るとは、素晴らしい魔法の道具だな!」
「魔法ではなく科学なんですが……ま、まあいいでしょう」
ひとしきり写真を回し見して楽しんだ後、左右に立ち並んでいた人々の一人うおっほん。とわざとらしく咳払いをして、じろりと王族の方々を見詰める。
「お、おほん。それでは勇者リア、と、そちは何と言う?」
「は、僕の名前は加賀理 雅也です」
「では、改めて仕切り直しといこうか。思わぬ事態に少々驚いたが、これから話す事はこの国の国難に関すること。しかと聞き届けよ」
「は、はい」
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