異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。
出会い頭事故?人の話は良く聞きましょう
「カガリ・マサヤさん。助けてください。世界の危機なのです」
突如、真っ白な空間の全体に響き渡るような、美しい女性の声が木霊する。
「嫌ですけど」
僕は思わず即答していた。
生来の天邪鬼な部分が出てきてしまったようだ。というか、ここはどこだろう? 真っ白でふわふわした空間に、僕は自分の身体が無い事に気がついた。
えっ!? 慌ててもがこうとするが、そもそも手足が存在しない。視界を向けるという動作さえ、この何もない白い空間では本当に動いているのか不安を覚えるほどだ。
ああ、これは夢か、と納得する。
「えっ? いやいや、ちょっと待って下さいよ。せめてもう少し話ぐらい聞きましょう? お父さんお母さんにそう習いませんでしたか?」
そんな僕の焦燥感等は気付かれなかったようだ。余程重大な話しなのか、声の主は焦ったように諭してきた。
どう対応したらいいものか考えあぐねていると、適当に誤魔化せばいいか、という結論に至る。
「あいにく父も母も既に他界しておりまして」
「あっ、そうなのですね」
女性の声は若干申し訳なさそうに沈んでしまう。
「……辛いことを思い出させてしまってごめんなさ……いやいや、あなたのご両親生きてらっしゃるでしょ!」
鋭い突っ込みに、僕は思わず舌打ちをした。
「チッ」
「舌打ち! 今舌打ちしましたよね!? 私を誰だと思っているんですか!」
怒気を孕ませた言葉に、僕はあっさりと答える。
「いや、知りませんけど」
「私は正真正銘の女神様なんですから! とっても偉いんですから!」
あ、解った。この人きっと痛い人だ。相手にするだけ損のような気がする。
「はいはい、偉い偉い」
「そうでしょう、そうでしょう……って、畏敬の念が一粒も感じられませんよ!?」
「――っていうか話長いんで、そろそろ切っていいですか?」
「そんな携帯切るみたいに気軽に言わないで下さい!? もういいです、怒りました! あなたは強制転移させます! 説明も何もしてあげませんから」
気になる言葉が出てきたので、僕は言葉を発した。
「っていうか強制転移」
僕は自称女神様の言葉に不穏な気配を感じ取り、焦りながら話を聞こうとしようとしたが、時既に遅しのようだ。
「――ハイ、頑張って下さい! もう二度と話すこともないでしょうけどね! チートの説明もしませんからね!」
僕の言葉に被せるように、自称女神様は怒り心頭のご様子。
「待て、待って。いや待って下さい凄く嫌な予感が僕の頭をガンガン叩いて来るんでちょっと待って――」
「まーちーまーせーんー! さよなら!」
その言葉が引き金だったのか、真っ白な空間から急にぽいっと放り出されたような、急速にどこかへと落ちていく感覚が段々加速していき――やがて僕の意識は途切れた。
ゴトリ、と何かに身体がぶつかる。
「うっ……?」
混濁していた意識が戻っていく。
最初に感じたのは全身に渡る硬い石の感触。
どうやら僕は床に倒れ込んでいるらしかった。
未だに判然としないまぶたを無理やり開けて周囲を見渡す。
霧がかったようにもやが取り囲んでいて視界がほぼゼロだった。
「どこだ……? ここは……?」
もやの向こう側がざわざわと騒がしい。
僕は段々とようやく意識がハッキリとしてくる。
それに伴いもやの向こう側の喧騒がようやく聞き取れるようになっていた。
「何これ! 本当に成功したんでしょうね!?」
怒声とまでは行かないものの、苛立ったような、だけれども聞き惚れるような美しい声が木霊する。
「ま、間違いなく成功しています! このマナフィールドもすぐに晴れるはずなので……」
次は中年程の男の声が聞こえた。弁解するように慌てているが、自信なさげに言葉尻がしぼんでいる。
「――しかし……何という濃密なマナなのだ……可視化出来る程とは……」
彼等? の話している言葉は理解できる。日本語を話しているようだ。ただし、言葉は理解できてもその意味は全く判然としない。
マナ? なんだ、ゲームとかでは良く魔力のことをそう呼んでいたけど……。自称女神様とやらも何か言っていたような。
とにかく、硬い床に寝転んだままはごめんだったので、立ち上がった。ちょっとふらついたが、問題なく身体は動くようだった。
「見て! 誰かマナフィールドの向こう側にいるわ!」
『おおぉ……』
少女? の声に大きなどよめきが生まれた。僕は……確か、昨日暇つぶしにやっていた携帯ゲームをしたまま、自分の部屋のベッドで寝落ちしたはずだった。
決してこんな珍妙な場所で寝ていたわけではない。
そういえば、目を覚ます前に奇妙な夢を見たな。確か世界を救ってくれとかなんとか――そこまで思考がいきついたところで、あれだけ濃く張られていたもやが風で吹き散らされたようにさあっと消え失せていった。
「えっ?」
「はっ?」
前者は僕の声、後者は目の前の少女のもの。僕には今の状況が全く理解出来なかった。何しろ、ここは絶対に僕の部屋などではなく、何かの神殿を思わせる広大な石造りの建物で。
僕の眼前にいたのは見たこともない真っ赤な髪をした同年代くらいの美少女だったからだ。これも見たこともない衣装を着ていて、まるで中世ヨーロッパの貴族のような格好だ。それと一目で高級そうだというのが解る。いわゆる貴族……っぽい?
「く、黒髪に黒目……!?」
一方で少女は僕の容姿に驚愕したように目を見開いて、わなわなと震えている。落ち着いて見渡せば、周囲には中世ヨーロッパの修道服のようなものを来た人々が大勢いて、みな一様に少女と同じ反応を示していた。
「こ、ここは一体どこなんだ!?」
僕が少女に問いただすと、少女は我に帰ったようにはっとして、先程までの動揺を押し隠すように凛とした態度で返答した。
「ようこそ、異世界の勇者よ! ここはあなたがいた世界とは違う世界……私達はヴァールスと呼んでいる世界よ。そしてあなたこそが選ばれし異世界の勇者! しかも黒髪黒目だなんて、まるで伝説の再来だわ!」
少女が興奮したように紅潮した頬で一気にまくし立てるが、僕には言っていることの意味が全く理解できなかった。いや、本当はうっすらと感じ取っている。僕は、ラノベなどにありがちな異世界召喚をされてしまったのだと。
すると、さっきの女神様とやらも夢ではなく現実? しまった、やらかしてしまったかもしれない。
「さあ、伝説の勇者よ! ヴァールスの勇者であるこの私、リア・テレシーと共に復活した魔王を倒しに行きましょう!」
「普通に嫌なので他を当たって下さい!」
「えっ」
「えっ」
少女はうーんと考え込むような仕草をして、近くの修道服さんに話しかける。
「私、何か異世界の言葉を言い間違えたのかしら? 聞き間違えたのかしら?」
「いえ、意味は双方共に通じているようですが……」
困惑したような修道服さんの同意を得られて、うんうんと納得したような少女――リアは、仕切り直しとばかりに先程と同じポーズを取った。
「さあ、伝説の勇者よ! ヴァールスの勇者であるこの私、リア・テレシーと共に復活した魔王を倒しに行きましょう!」
「人違いです、僕は勇者なんかじゃないんで、それじゃ」
僕は思った。強烈に。
帰りたい、自分の家に、世界に帰りたいと。すると――。
「な、何このマナ反応は!?」
「わっ、何だ!? 僕の体が光ってる!?」
「ちょっとどういう事なの!? 誰か説明して!」
「我々にも未知の事象です、リア様、お気をつけ下さい!」
周囲の修道服さん達もあたふたと慌てていたが、一番驚いているのは他ならぬ僕自身だ。
「どんどん光が強く――うわっ!?」
直後、爆発したような光とともに僕の全身から一条の光が天を穿ち、僕の体は異世界ヴァールスから完全に姿を消した。
「つっ……ここは……僕の部屋???」
見渡すと、そこは見慣れた僕の家の僕の部屋だった。さっきまでのは何だったんだ? 白昼夢でも見たのだろうかと納得しかけた時に、それはいた。
「あつつ……まだ目がチカチカするわ……」
「へっ?」
「あら? えっ? こ、ここはどこ!?」
そう、見慣れた僕の部屋に見慣れない存在、自称異世界の勇者リア・テレシーが女の子ずわりで佇んでいたのだった。これが、僕こと 加賀理 雅也と、異世界の勇者リアとのファーストコンタクトだったのだ。
突如、真っ白な空間の全体に響き渡るような、美しい女性の声が木霊する。
「嫌ですけど」
僕は思わず即答していた。
生来の天邪鬼な部分が出てきてしまったようだ。というか、ここはどこだろう? 真っ白でふわふわした空間に、僕は自分の身体が無い事に気がついた。
えっ!? 慌ててもがこうとするが、そもそも手足が存在しない。視界を向けるという動作さえ、この何もない白い空間では本当に動いているのか不安を覚えるほどだ。
ああ、これは夢か、と納得する。
「えっ? いやいや、ちょっと待って下さいよ。せめてもう少し話ぐらい聞きましょう? お父さんお母さんにそう習いませんでしたか?」
そんな僕の焦燥感等は気付かれなかったようだ。余程重大な話しなのか、声の主は焦ったように諭してきた。
どう対応したらいいものか考えあぐねていると、適当に誤魔化せばいいか、という結論に至る。
「あいにく父も母も既に他界しておりまして」
「あっ、そうなのですね」
女性の声は若干申し訳なさそうに沈んでしまう。
「……辛いことを思い出させてしまってごめんなさ……いやいや、あなたのご両親生きてらっしゃるでしょ!」
鋭い突っ込みに、僕は思わず舌打ちをした。
「チッ」
「舌打ち! 今舌打ちしましたよね!? 私を誰だと思っているんですか!」
怒気を孕ませた言葉に、僕はあっさりと答える。
「いや、知りませんけど」
「私は正真正銘の女神様なんですから! とっても偉いんですから!」
あ、解った。この人きっと痛い人だ。相手にするだけ損のような気がする。
「はいはい、偉い偉い」
「そうでしょう、そうでしょう……って、畏敬の念が一粒も感じられませんよ!?」
「――っていうか話長いんで、そろそろ切っていいですか?」
「そんな携帯切るみたいに気軽に言わないで下さい!? もういいです、怒りました! あなたは強制転移させます! 説明も何もしてあげませんから」
気になる言葉が出てきたので、僕は言葉を発した。
「っていうか強制転移」
僕は自称女神様の言葉に不穏な気配を感じ取り、焦りながら話を聞こうとしようとしたが、時既に遅しのようだ。
「――ハイ、頑張って下さい! もう二度と話すこともないでしょうけどね! チートの説明もしませんからね!」
僕の言葉に被せるように、自称女神様は怒り心頭のご様子。
「待て、待って。いや待って下さい凄く嫌な予感が僕の頭をガンガン叩いて来るんでちょっと待って――」
「まーちーまーせーんー! さよなら!」
その言葉が引き金だったのか、真っ白な空間から急にぽいっと放り出されたような、急速にどこかへと落ちていく感覚が段々加速していき――やがて僕の意識は途切れた。
ゴトリ、と何かに身体がぶつかる。
「うっ……?」
混濁していた意識が戻っていく。
最初に感じたのは全身に渡る硬い石の感触。
どうやら僕は床に倒れ込んでいるらしかった。
未だに判然としないまぶたを無理やり開けて周囲を見渡す。
霧がかったようにもやが取り囲んでいて視界がほぼゼロだった。
「どこだ……? ここは……?」
もやの向こう側がざわざわと騒がしい。
僕は段々とようやく意識がハッキリとしてくる。
それに伴いもやの向こう側の喧騒がようやく聞き取れるようになっていた。
「何これ! 本当に成功したんでしょうね!?」
怒声とまでは行かないものの、苛立ったような、だけれども聞き惚れるような美しい声が木霊する。
「ま、間違いなく成功しています! このマナフィールドもすぐに晴れるはずなので……」
次は中年程の男の声が聞こえた。弁解するように慌てているが、自信なさげに言葉尻がしぼんでいる。
「――しかし……何という濃密なマナなのだ……可視化出来る程とは……」
彼等? の話している言葉は理解できる。日本語を話しているようだ。ただし、言葉は理解できてもその意味は全く判然としない。
マナ? なんだ、ゲームとかでは良く魔力のことをそう呼んでいたけど……。自称女神様とやらも何か言っていたような。
とにかく、硬い床に寝転んだままはごめんだったので、立ち上がった。ちょっとふらついたが、問題なく身体は動くようだった。
「見て! 誰かマナフィールドの向こう側にいるわ!」
『おおぉ……』
少女? の声に大きなどよめきが生まれた。僕は……確か、昨日暇つぶしにやっていた携帯ゲームをしたまま、自分の部屋のベッドで寝落ちしたはずだった。
決してこんな珍妙な場所で寝ていたわけではない。
そういえば、目を覚ます前に奇妙な夢を見たな。確か世界を救ってくれとかなんとか――そこまで思考がいきついたところで、あれだけ濃く張られていたもやが風で吹き散らされたようにさあっと消え失せていった。
「えっ?」
「はっ?」
前者は僕の声、後者は目の前の少女のもの。僕には今の状況が全く理解出来なかった。何しろ、ここは絶対に僕の部屋などではなく、何かの神殿を思わせる広大な石造りの建物で。
僕の眼前にいたのは見たこともない真っ赤な髪をした同年代くらいの美少女だったからだ。これも見たこともない衣装を着ていて、まるで中世ヨーロッパの貴族のような格好だ。それと一目で高級そうだというのが解る。いわゆる貴族……っぽい?
「く、黒髪に黒目……!?」
一方で少女は僕の容姿に驚愕したように目を見開いて、わなわなと震えている。落ち着いて見渡せば、周囲には中世ヨーロッパの修道服のようなものを来た人々が大勢いて、みな一様に少女と同じ反応を示していた。
「こ、ここは一体どこなんだ!?」
僕が少女に問いただすと、少女は我に帰ったようにはっとして、先程までの動揺を押し隠すように凛とした態度で返答した。
「ようこそ、異世界の勇者よ! ここはあなたがいた世界とは違う世界……私達はヴァールスと呼んでいる世界よ。そしてあなたこそが選ばれし異世界の勇者! しかも黒髪黒目だなんて、まるで伝説の再来だわ!」
少女が興奮したように紅潮した頬で一気にまくし立てるが、僕には言っていることの意味が全く理解できなかった。いや、本当はうっすらと感じ取っている。僕は、ラノベなどにありがちな異世界召喚をされてしまったのだと。
すると、さっきの女神様とやらも夢ではなく現実? しまった、やらかしてしまったかもしれない。
「さあ、伝説の勇者よ! ヴァールスの勇者であるこの私、リア・テレシーと共に復活した魔王を倒しに行きましょう!」
「普通に嫌なので他を当たって下さい!」
「えっ」
「えっ」
少女はうーんと考え込むような仕草をして、近くの修道服さんに話しかける。
「私、何か異世界の言葉を言い間違えたのかしら? 聞き間違えたのかしら?」
「いえ、意味は双方共に通じているようですが……」
困惑したような修道服さんの同意を得られて、うんうんと納得したような少女――リアは、仕切り直しとばかりに先程と同じポーズを取った。
「さあ、伝説の勇者よ! ヴァールスの勇者であるこの私、リア・テレシーと共に復活した魔王を倒しに行きましょう!」
「人違いです、僕は勇者なんかじゃないんで、それじゃ」
僕は思った。強烈に。
帰りたい、自分の家に、世界に帰りたいと。すると――。
「な、何このマナ反応は!?」
「わっ、何だ!? 僕の体が光ってる!?」
「ちょっとどういう事なの!? 誰か説明して!」
「我々にも未知の事象です、リア様、お気をつけ下さい!」
周囲の修道服さん達もあたふたと慌てていたが、一番驚いているのは他ならぬ僕自身だ。
「どんどん光が強く――うわっ!?」
直後、爆発したような光とともに僕の全身から一条の光が天を穿ち、僕の体は異世界ヴァールスから完全に姿を消した。
「つっ……ここは……僕の部屋???」
見渡すと、そこは見慣れた僕の家の僕の部屋だった。さっきまでのは何だったんだ? 白昼夢でも見たのだろうかと納得しかけた時に、それはいた。
「あつつ……まだ目がチカチカするわ……」
「へっ?」
「あら? えっ? こ、ここはどこ!?」
そう、見慣れた僕の部屋に見慣れない存在、自称異世界の勇者リア・テレシーが女の子ずわりで佇んでいたのだった。これが、僕こと 加賀理 雅也と、異世界の勇者リアとのファーストコンタクトだったのだ。
「異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
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