異世界でニートは英雄になる
第九話 彼は彼女に憤怒する
カリンからビンタをくらったタイガは直ぐに部屋を出て、カリンが着替え終わるのを待っていた。廊下にいる間、先程の光景が頭の中でチラつき、ずっと一人で悶えてた。
「は、入っていいですよ」
中から聞こえた声にタイガは一度冷静になるも、先程の出来事の後では緊張する。一度大きな深呼吸してドアノブに手をかけ、開けた。そこには食事に行った時の服とは違い、桃色のパジャマだった。タイガは暫く見とれ、何かを思い出してカリンの前に立つ。
「ど、どうしたの?」
そして――
「申し訳御座いませんでした!!」
日本の礼式の一つ、『土下座』をした。驚いたカリンはタイガに頭を上げさせるが、それでもタイガは頭を上げず、寧ろ床に頭を打ち付けていた。それは反省の意を示して――
――くそ! 本人を前にしたらさっきの光景が鮮明に蘇る! 嬉しい、嬉しいけど今はダメだ!!
いなかった。まだそういう経験がないタイガにとっては辛い現状だった。
タイガが落ち着きを取り戻したところで、カリンは口を開いた。
「確かに、ノックをしなかったタイガもタイガですが、一方的に悪い訳ではありません。鍵をしなかったのと、はしたない行動をとった私にも非はあります。なのでこの件は終わりにしましょう」
笑顔で言うカリン。だが、タイガの頭の中はまだ悶えていた。
――いや、終わりにしてくれんのは嬉しいんだけど……後ろ姿ではあるが俺はカリンの裸を見ているのであって……
カリンはそれで良いのか? と考えているタイガを見て、カリンは首を傾げていた。
「カリンちゃん。もう少し女の子だというプライドを持とうよ……」
ペルもタイガと同じ考えに辿り着いたらしく、カリンに呆れながら言う。
「それでは、もう夜も遅いですし、今日は寝ましょう。タイガも色々あって疲れているでしょう?」
部屋の時計を見ると、二二時を超えていた。今までの生活をしていたタイガならまだ起きている時間だが、カリンの言う通り波瀾万丈な一日だったため、目を閉じれば直ぐに寝られそうだった。
――今更だけど、スマホの時計もこの世界時間になっているのか……玄関で何があったんだよ……あれ?
「あのさ、カリン」
「はい? 何ですか?」
タイガは布団に入ろうとしているカリンに聞いた。
「俺、何処で寝れば良い?」
そう、この部屋にベッドは一つだけだ。そのベッドはカリンが使うとして、タイガは何処で寝れば良いのだろうと今になって気付いた。
そしてカリンは斜め上の答えを出す。
「何言っているんですか? タイガもここに寝るんですよ?」
カリンがポンポンと叩いた場所――ベッドだった。
タイガは驚きを通り越して、呆れていた。こいつは危機感がないのか、と。
「あのさぁカリン。俺男、カリンは女。アーユ-アンダースタンド?」
「その『あーゆーあんだーすたんど』と言う意味は分かりませんが、タイガは男性、私は女性。それぐらいは分かりますよ?」
――分かってて何故それを提案した……
もうダメだ――タイガはそう思うと、昼間にレニグルで買った黒マントをハンガーから外し、それを掛け布団替わりにしてソファーで横になった。
「た、タイガ? 何故そこで寝るんですか?」
天然なのかバカなのか、タイガのとった行動の意味を分かっていないカリンがタイガの下に行く。
「私、何かタイガを怒らせるような事しましたか? でしたら謝ります。なのでそこに寝ないで……」
「なぁカリン」
タイガはカリンの言葉を遮り、口を開いた。そして体を起こし、ベッド替わりにしていたソファーに座る。
「何でお前は見ず知らずの俺を同じ部屋に泊め、見ず知らずの俺に裸を見られ、見ず知らずの俺と一緒に寝ようとするんだ?」
「え……」
普通の声で話していたタイガだが、カリンの反応でスイッチが入ったのか、声のトーンが少しずつ低くなる。
「お前、どんな神経しているんだ? 俺は偶然お前を助けた。お前にとって俺は命の恩人なのかもしれない。だがそれ以前に、俺達は赤の他人だ。食事に関しては俺が我が儘を言ったからしょうがないとして、普通赤の他人を同じ部屋に泊め、赤の他人に裸を見られたのにも関わらず、その男を同じベッドで寝させるか?」
タイガは止まらない。カリンはタイガの話を聞きながらも、俯いている。
「この際だからはっきり言っておく。お前は危機感が足りない! お前は昼間襲われた。それも男に。もし、俺がお前と同じベッドで寝て俺がお前を襲ったらどうする!? お前は一生男と言う生物に恐怖を覚えながら生活していくんだぞ! お前はそれで良いのか!?」
生まれて初めてタイガは声を荒立てた。カリンを見ると、小刻みに震えていて、一筋の涙を流していた。それでもタイガは言い続けた。
「カリン。お前は男の本当の恐ろしさを知らない。今日は殺されかけた。一人だった。今度は複数で来るかもしれない。お前の大事なものを奪われるかもしれない。それじゃ遅いんだ。今後、こんな行動や言動は止めろ。俺は、今日は外で寝る。ゆっくり休め」
そう言ってタイガはマントを持って部屋を出た。カリンの泣き声を聞きながら。
『お前が悪い。お前が彼女を見捨てた。だから死んだんだ』
――止めろ……止めてくれ!
『あの時、女の傍にいれば、こんな事にはならなかった』
――俺が、俺があいつにあんな事を言わなければ……
『お前もここまでだ。あの世で自分の行いに懺悔するといい』
――ごめん……カリン……
「はっ!」
汗だくのタイガが目を覚ました。時間は七時半。
「昨日は少し言い過ぎたな……謝りに行くか」
タイガはカリンに昨日の謝罪と、バスルームを貸してほしいため、カリンの部屋に戻る。因みにタイガはロビーのソファーで一晩過ごした。
タイガは昨日の反省を活かし、ノックをする。
「カリン。俺、タイガだけど……入っていい?」
だが、中から返事が聞こえない。
「まだ寝ているのかな」
そう思ったのか、タイガはドアを開ける。だが、そこにカリンの姿はなかった。それどころか――
「な、何だよ……これ」
部屋が荒らされ、窓ガラスが割れていた。どう見てもカリンがやった様に見えない。その時、先程の夢がタイガの脳裏に浮かんだ。
『あの時、女の傍にいれば、こんな事にはならなかった』
「ま、まさか!!」
タイガは急いで買った服に着替え、申鎮の剣を持って部屋を飛び出した。
「は、入っていいですよ」
中から聞こえた声にタイガは一度冷静になるも、先程の出来事の後では緊張する。一度大きな深呼吸してドアノブに手をかけ、開けた。そこには食事に行った時の服とは違い、桃色のパジャマだった。タイガは暫く見とれ、何かを思い出してカリンの前に立つ。
「ど、どうしたの?」
そして――
「申し訳御座いませんでした!!」
日本の礼式の一つ、『土下座』をした。驚いたカリンはタイガに頭を上げさせるが、それでもタイガは頭を上げず、寧ろ床に頭を打ち付けていた。それは反省の意を示して――
――くそ! 本人を前にしたらさっきの光景が鮮明に蘇る! 嬉しい、嬉しいけど今はダメだ!!
いなかった。まだそういう経験がないタイガにとっては辛い現状だった。
タイガが落ち着きを取り戻したところで、カリンは口を開いた。
「確かに、ノックをしなかったタイガもタイガですが、一方的に悪い訳ではありません。鍵をしなかったのと、はしたない行動をとった私にも非はあります。なのでこの件は終わりにしましょう」
笑顔で言うカリン。だが、タイガの頭の中はまだ悶えていた。
――いや、終わりにしてくれんのは嬉しいんだけど……後ろ姿ではあるが俺はカリンの裸を見ているのであって……
カリンはそれで良いのか? と考えているタイガを見て、カリンは首を傾げていた。
「カリンちゃん。もう少し女の子だというプライドを持とうよ……」
ペルもタイガと同じ考えに辿り着いたらしく、カリンに呆れながら言う。
「それでは、もう夜も遅いですし、今日は寝ましょう。タイガも色々あって疲れているでしょう?」
部屋の時計を見ると、二二時を超えていた。今までの生活をしていたタイガならまだ起きている時間だが、カリンの言う通り波瀾万丈な一日だったため、目を閉じれば直ぐに寝られそうだった。
――今更だけど、スマホの時計もこの世界時間になっているのか……玄関で何があったんだよ……あれ?
「あのさ、カリン」
「はい? 何ですか?」
タイガは布団に入ろうとしているカリンに聞いた。
「俺、何処で寝れば良い?」
そう、この部屋にベッドは一つだけだ。そのベッドはカリンが使うとして、タイガは何処で寝れば良いのだろうと今になって気付いた。
そしてカリンは斜め上の答えを出す。
「何言っているんですか? タイガもここに寝るんですよ?」
カリンがポンポンと叩いた場所――ベッドだった。
タイガは驚きを通り越して、呆れていた。こいつは危機感がないのか、と。
「あのさぁカリン。俺男、カリンは女。アーユ-アンダースタンド?」
「その『あーゆーあんだーすたんど』と言う意味は分かりませんが、タイガは男性、私は女性。それぐらいは分かりますよ?」
――分かってて何故それを提案した……
もうダメだ――タイガはそう思うと、昼間にレニグルで買った黒マントをハンガーから外し、それを掛け布団替わりにしてソファーで横になった。
「た、タイガ? 何故そこで寝るんですか?」
天然なのかバカなのか、タイガのとった行動の意味を分かっていないカリンがタイガの下に行く。
「私、何かタイガを怒らせるような事しましたか? でしたら謝ります。なのでそこに寝ないで……」
「なぁカリン」
タイガはカリンの言葉を遮り、口を開いた。そして体を起こし、ベッド替わりにしていたソファーに座る。
「何でお前は見ず知らずの俺を同じ部屋に泊め、見ず知らずの俺に裸を見られ、見ず知らずの俺と一緒に寝ようとするんだ?」
「え……」
普通の声で話していたタイガだが、カリンの反応でスイッチが入ったのか、声のトーンが少しずつ低くなる。
「お前、どんな神経しているんだ? 俺は偶然お前を助けた。お前にとって俺は命の恩人なのかもしれない。だがそれ以前に、俺達は赤の他人だ。食事に関しては俺が我が儘を言ったからしょうがないとして、普通赤の他人を同じ部屋に泊め、赤の他人に裸を見られたのにも関わらず、その男を同じベッドで寝させるか?」
タイガは止まらない。カリンはタイガの話を聞きながらも、俯いている。
「この際だからはっきり言っておく。お前は危機感が足りない! お前は昼間襲われた。それも男に。もし、俺がお前と同じベッドで寝て俺がお前を襲ったらどうする!? お前は一生男と言う生物に恐怖を覚えながら生活していくんだぞ! お前はそれで良いのか!?」
生まれて初めてタイガは声を荒立てた。カリンを見ると、小刻みに震えていて、一筋の涙を流していた。それでもタイガは言い続けた。
「カリン。お前は男の本当の恐ろしさを知らない。今日は殺されかけた。一人だった。今度は複数で来るかもしれない。お前の大事なものを奪われるかもしれない。それじゃ遅いんだ。今後、こんな行動や言動は止めろ。俺は、今日は外で寝る。ゆっくり休め」
そう言ってタイガはマントを持って部屋を出た。カリンの泣き声を聞きながら。
『お前が悪い。お前が彼女を見捨てた。だから死んだんだ』
――止めろ……止めてくれ!
『あの時、女の傍にいれば、こんな事にはならなかった』
――俺が、俺があいつにあんな事を言わなければ……
『お前もここまでだ。あの世で自分の行いに懺悔するといい』
――ごめん……カリン……
「はっ!」
汗だくのタイガが目を覚ました。時間は七時半。
「昨日は少し言い過ぎたな……謝りに行くか」
タイガはカリンに昨日の謝罪と、バスルームを貸してほしいため、カリンの部屋に戻る。因みにタイガはロビーのソファーで一晩過ごした。
タイガは昨日の反省を活かし、ノックをする。
「カリン。俺、タイガだけど……入っていい?」
だが、中から返事が聞こえない。
「まだ寝ているのかな」
そう思ったのか、タイガはドアを開ける。だが、そこにカリンの姿はなかった。それどころか――
「な、何だよ……これ」
部屋が荒らされ、窓ガラスが割れていた。どう見てもカリンがやった様に見えない。その時、先程の夢がタイガの脳裏に浮かんだ。
『あの時、女の傍にいれば、こんな事にはならなかった』
「ま、まさか!!」
タイガは急いで買った服に着替え、申鎮の剣を持って部屋を飛び出した。
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