異世界でニートは英雄になる
第一五話 リンク、そして決着
俺はペルの案内でカリンを追いかける。俺がカリンと一緒にいれば、こんな事にはならなかった。全ては俺の浅はかな行動のせいだ……! それにしても……
「なぁペル」
《なんだい?》
「お前、どうして道が分かるんだ?」
ペルは、カリンが連れ去られている途中でカリンから離れたらしい。何処に行ったか分からないのに、どうして迷わずに進めるんだ?
《おいらはね、今カリンちゃんの視覚情報を借りているんだ》
「視覚情報?」
《そう。おいらとカリンちゃんみたいに、使い魔と契約したら使えるんだ。おいらは視覚共有『リンク』と幻を見抜くことが出来る『ダート』を持っているんだ》
ペルは親切に教えてくれた。一つ難点としては、『ダート』で幻術を見抜いて脱出できたとしても、他の人の幻術は解けないらしい。
契約をした時に付いてくる能力は使い魔によって変わる。
それにしても、『リンク』と『ダート』か……
「契約ってさ、一人しかできないの?」
《どういう事?》
「例えば、一時的にペルと俺が契約するとか……」
もし、それが出来るならこっちとしては大助かりだ。勝てる確率が上がる。
《出来るけど、どうする気?》
俺は全て話した。もし、精神系の幻術だったらどうにもならないけど、視覚系の幻術だったら、ペルの能力を借りたい。俺とペルによる『リンク』、『リンク』から上書きして使う『ダート』。そうすれば、多少は楽になるはずだ。
ペルにも納得してもらい、一時的だが契約した俺とペルはカリンの下へと急いだ。
×××××××××××××
「まさかこんなに上手く行くとは思わなかったけどな。俺から見るとあんたが沢山いて気持ち悪かったが、ペルの目で見ると、幻影だけ薄く見えたんだよ。本体のあんたははっきりと映ってな」
タイガはウリドラにタネを明かし、地面に突き刺さっていた剣を抜く。
「もう俺に幻術は効かねぇぜ、ウリドラ。お前の負けだ」
麻痺した身体を無理矢理起こし、タイガを睨むウリドラ。だがその後、不敵な笑みを浮かべる。
「ふ、ふふふ……フハハハハ!! お前はバカか!? こうも容易く敵にタネを明かすとは。打開策をあげているようなものだぞ!」
「言ったろ。お前の負けだと。タネを明かしたところで何ら変わりはない」
タイガは表情を変えず、ウリドラの言葉に返答する。対するウリドラも、不敵な笑みをしたままだ。
「お前の相手は後にしよう。まずはその女だ――ん?」
そう言うとウリドラはカリンを指さすが、ウリドラはカリンの姿を見て言葉を失った。カリンがいた場所にカリンの姿は無く、代わりにへのへのもへじが書かれた人形が転がっていた。ウリドラはその人形を持ち上げ、暫く凝視すると、またタイガを睨む。
「貴様……どういうことだ」
「どうもこうも見たまんまだよ」
「ふざけるな! 女を何処にやった?!」
怒りを露わにし、怒鳴りつけてくるウリドラだが、タイガは冷静だった。
「いつの間に女を……貴様は私の幻術にかかっていたはず! なのに!」
「あんたさ――」
怒りと混乱で訳が分からなくなっているウリドラに、タイガは声を掛ける。それも呆れながら。
「いつから自分だけ、幻術が使えると錯覚していた?」
「な、何?」
「別に幻術使いはお前一人じゃないだろ? 何を勘違いしている」
「ま、まさか……」
「そう、そのまさかだ」
ウリドラは理解できたのか、声を震わせながらタイガを見る。
「お前は既に、ペルの幻術にかかっているんだよ」
瞬間、ペルとタイガの姿が消えて、視界が真っ暗になったウリドラは幻術を解こうとするも、身体が動けなくなった。そしてそのまま、その世界に閉じ込められてしまった。
「ふう、何とか終わったな」
タイガはウリドラを即死させるため、【クリアガービル】で申鎮の剣をウリドラの心臓に突き刺した。カリンは緊張が解けたせいか、へなへなと地べたに座り込んでしまった。
「いつ、彼に幻術をかけたんですか?」
「俺とペルが『リンク』で本体を見つけた時、ペルにかけてもらった。こうも簡単にかかってくれるとは思わなかったけどな」
タイガも疲れたのか、よっこいしょと呟きながら地べたに座る。
暫く沈黙が続く。二人共チラチラと相手の顔を窺って、目が合うと逸らす。その繰り返しだった。そんな痺れを切らしたのか、視線をタイガから逸らし、カリンから口を開いた。
「あの、タイガ……私……」
「カリン、すまなかった」
「え?」
カリンが先に口を開いたが、それを遮るようにタイガが口を開く。カリンは突然謝られたことに驚き、タイガを見た。
「昨日の事……俺、言い過ぎた。せっかくカリンに親切にさせて貰ったのに、それを蔑ろにするような事を言っちゃって……」
「タイガ……」
タイガはカリンに目を合わさず、下を向いたまま話す。
「俺、夢で見たんだ。カリンが殺される所。殺した相手がウリドラだって知った。その時言われたんだ。俺があの時、カリンの傍にいなかったからこうなったんだって……だから、ごめん」
そして、タイガは座りながら頭を下げる。
「私も、もう少し考えて行動するべきでした。久々に街に出て、楽しんでいるのに知らない人に連れ去られて。凄く怖かった。そこにタイガが助けに来てくれて……初めて会った人なのに、私と面識がない筈なのに、見ず知らずの私を助けてくれて、嬉しかったです。それに、タイガなら私を守ってくれると勝手に思い込んでしまって……そう思ったら調子に乗ってしまい……タイガの言う通りでした。私はまだ男がどういう人間か、あまり分かりません。外と関わった事なんて滅多に無かったですから。なので、私こそ、申し訳ございませんでした。そして今回も、助けてくれて、ありがとう」
カリンも姿勢を正し、正座をしてタイガに礼を言いながらお辞儀する。すると、タイガの視線がぼやけ、急な眠気が襲ってきた。アドレナリンも出なくなったのか、身体が痛み始める。それでも、タイガにはどうしてもカリンに聞きたいことがあった。
「カリン……お前は一体……なに、もの……」
そう言って倒れてしまった。
《やっぱり倒れちゃったか。カリンちゃん、どうする?》
こうなる事が分かったかの様に、ペルは口を開く。
「ふふ。とりあえず、私の家に連れていきましょう。ペル、彼に連絡して貰える?」
《タイガ、目が覚めたら驚くだろうな~カリンがドルメサ王国の女王だと知ったら》
この後、スーツを着た一人の男がタイガを担ぎ、カリンの家に連れて行った。
ドルメサ王国のお屋敷へ……
第一章 ―終―
「なぁペル」
《なんだい?》
「お前、どうして道が分かるんだ?」
ペルは、カリンが連れ去られている途中でカリンから離れたらしい。何処に行ったか分からないのに、どうして迷わずに進めるんだ?
《おいらはね、今カリンちゃんの視覚情報を借りているんだ》
「視覚情報?」
《そう。おいらとカリンちゃんみたいに、使い魔と契約したら使えるんだ。おいらは視覚共有『リンク』と幻を見抜くことが出来る『ダート』を持っているんだ》
ペルは親切に教えてくれた。一つ難点としては、『ダート』で幻術を見抜いて脱出できたとしても、他の人の幻術は解けないらしい。
契約をした時に付いてくる能力は使い魔によって変わる。
それにしても、『リンク』と『ダート』か……
「契約ってさ、一人しかできないの?」
《どういう事?》
「例えば、一時的にペルと俺が契約するとか……」
もし、それが出来るならこっちとしては大助かりだ。勝てる確率が上がる。
《出来るけど、どうする気?》
俺は全て話した。もし、精神系の幻術だったらどうにもならないけど、視覚系の幻術だったら、ペルの能力を借りたい。俺とペルによる『リンク』、『リンク』から上書きして使う『ダート』。そうすれば、多少は楽になるはずだ。
ペルにも納得してもらい、一時的だが契約した俺とペルはカリンの下へと急いだ。
×××××××××××××
「まさかこんなに上手く行くとは思わなかったけどな。俺から見るとあんたが沢山いて気持ち悪かったが、ペルの目で見ると、幻影だけ薄く見えたんだよ。本体のあんたははっきりと映ってな」
タイガはウリドラにタネを明かし、地面に突き刺さっていた剣を抜く。
「もう俺に幻術は効かねぇぜ、ウリドラ。お前の負けだ」
麻痺した身体を無理矢理起こし、タイガを睨むウリドラ。だがその後、不敵な笑みを浮かべる。
「ふ、ふふふ……フハハハハ!! お前はバカか!? こうも容易く敵にタネを明かすとは。打開策をあげているようなものだぞ!」
「言ったろ。お前の負けだと。タネを明かしたところで何ら変わりはない」
タイガは表情を変えず、ウリドラの言葉に返答する。対するウリドラも、不敵な笑みをしたままだ。
「お前の相手は後にしよう。まずはその女だ――ん?」
そう言うとウリドラはカリンを指さすが、ウリドラはカリンの姿を見て言葉を失った。カリンがいた場所にカリンの姿は無く、代わりにへのへのもへじが書かれた人形が転がっていた。ウリドラはその人形を持ち上げ、暫く凝視すると、またタイガを睨む。
「貴様……どういうことだ」
「どうもこうも見たまんまだよ」
「ふざけるな! 女を何処にやった?!」
怒りを露わにし、怒鳴りつけてくるウリドラだが、タイガは冷静だった。
「いつの間に女を……貴様は私の幻術にかかっていたはず! なのに!」
「あんたさ――」
怒りと混乱で訳が分からなくなっているウリドラに、タイガは声を掛ける。それも呆れながら。
「いつから自分だけ、幻術が使えると錯覚していた?」
「な、何?」
「別に幻術使いはお前一人じゃないだろ? 何を勘違いしている」
「ま、まさか……」
「そう、そのまさかだ」
ウリドラは理解できたのか、声を震わせながらタイガを見る。
「お前は既に、ペルの幻術にかかっているんだよ」
瞬間、ペルとタイガの姿が消えて、視界が真っ暗になったウリドラは幻術を解こうとするも、身体が動けなくなった。そしてそのまま、その世界に閉じ込められてしまった。
「ふう、何とか終わったな」
タイガはウリドラを即死させるため、【クリアガービル】で申鎮の剣をウリドラの心臓に突き刺した。カリンは緊張が解けたせいか、へなへなと地べたに座り込んでしまった。
「いつ、彼に幻術をかけたんですか?」
「俺とペルが『リンク』で本体を見つけた時、ペルにかけてもらった。こうも簡単にかかってくれるとは思わなかったけどな」
タイガも疲れたのか、よっこいしょと呟きながら地べたに座る。
暫く沈黙が続く。二人共チラチラと相手の顔を窺って、目が合うと逸らす。その繰り返しだった。そんな痺れを切らしたのか、視線をタイガから逸らし、カリンから口を開いた。
「あの、タイガ……私……」
「カリン、すまなかった」
「え?」
カリンが先に口を開いたが、それを遮るようにタイガが口を開く。カリンは突然謝られたことに驚き、タイガを見た。
「昨日の事……俺、言い過ぎた。せっかくカリンに親切にさせて貰ったのに、それを蔑ろにするような事を言っちゃって……」
「タイガ……」
タイガはカリンに目を合わさず、下を向いたまま話す。
「俺、夢で見たんだ。カリンが殺される所。殺した相手がウリドラだって知った。その時言われたんだ。俺があの時、カリンの傍にいなかったからこうなったんだって……だから、ごめん」
そして、タイガは座りながら頭を下げる。
「私も、もう少し考えて行動するべきでした。久々に街に出て、楽しんでいるのに知らない人に連れ去られて。凄く怖かった。そこにタイガが助けに来てくれて……初めて会った人なのに、私と面識がない筈なのに、見ず知らずの私を助けてくれて、嬉しかったです。それに、タイガなら私を守ってくれると勝手に思い込んでしまって……そう思ったら調子に乗ってしまい……タイガの言う通りでした。私はまだ男がどういう人間か、あまり分かりません。外と関わった事なんて滅多に無かったですから。なので、私こそ、申し訳ございませんでした。そして今回も、助けてくれて、ありがとう」
カリンも姿勢を正し、正座をしてタイガに礼を言いながらお辞儀する。すると、タイガの視線がぼやけ、急な眠気が襲ってきた。アドレナリンも出なくなったのか、身体が痛み始める。それでも、タイガにはどうしてもカリンに聞きたいことがあった。
「カリン……お前は一体……なに、もの……」
そう言って倒れてしまった。
《やっぱり倒れちゃったか。カリンちゃん、どうする?》
こうなる事が分かったかの様に、ペルは口を開く。
「ふふ。とりあえず、私の家に連れていきましょう。ペル、彼に連絡して貰える?」
《タイガ、目が覚めたら驚くだろうな~カリンがドルメサ王国の女王だと知ったら》
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