私達は仲良く異世界に転移されたけど国家建国生活は大変だそうですよ…

11月光志/11月ミツシ

ヨシフおじさん目線、10章4話(前)【奴らはすぐそこにやっていた】

 結論から言うと、テーマパーク建設場所の視察などはずらした。
 考えても見てくれないか、今選挙期間中なのだぞ、そんなときに流石視察なんぞ、有権者にどう説明すればいいか迷うではないか。
 まぁ、視察はまた次回にして、次いでその視察の時に伍長君やらアドレフ君やらを誘ってみようかと思ってね。アドレフを誘ったり理由については、いい歳したおじさんがテーマパークなんぞ、ある意味恐怖を覚えられそうなんでな…それなら子供たちがいた方がまだいいだろ……という事だ。
 それで、今に至る。
 今、元老院について様々な話をしてくれた、島城 和博老人の家の縁側で将棋を指している。
 緑茶をすすり、意外と初めての将棋の盤へ私はの腕を組み次の一手を考えていた。現在、相手のターン、思いっきり私の劣勢、そして、さらに…

「王手ですよ、ヨシフさん」

 玉の右一個上に桂馬が置かれる。周りにはほとんど包囲状態にあるため、この時点で私の負けである。抵抗してもいいのだが、どっちにしろ負けは負けだ。

「…。まいりました。」

 一礼をして負けを告げる。それに応じて和博老人も頭を下げた。

「…ヨシフさん、めきめき腕を上げましたね」
「いえいえ、これで精いっぱいで…」

 後から聞いた話だが、和博老人将棋2級の腕前だそうだ。そんな方に私なんかの初心者が勝てるはずもない。いや、ここまで粘ったのもだいぶ頑張ったのだが…
 関係ないのだが、この後、納豆をもらったが、案外美味しかった。
 その後も、何局かした後、私は時間も時間なのでそろそろお暇しようとしたその時だった。
 プルルルル
 スマホに本日二度目の着信が入る。その通話先はルーズヴェールからだった。

「はい、どうした?」
『ヨシフ君か?緊急報告につき電話をさせてもらった』
「…?どうしたのだ?」
『…第128駆逐艦隊が消滅した。』
「…。なんだって?」
『…第128…』
「いや、それはわかった。何故消滅したのだ?」
『わからん…潜水艦の魚雷によって撃沈された可能性が高いのだが、残骸すら見つかっていなくてな…』
「…このことは伍長には?」
『いや、言ってない。選挙選の事もあるしな』
「わかった。伍長には話すな。調査を継続してくれ」
『わかった』

 通話を終え、私は玄関に深々と腰掛ける。靴を履くためもあるのだが、少々考えることがあった。何故第128駆逐艦隊は消滅したのかという事だ。128は臨時の沿岸警備隊も兼ねており、対潜や対空対駆逐などは対処できたはずである。だが、その駆逐艦隊が消滅だと?何かの誤報か?

「…ヨシフさん、どうされましたか?」
「…。島城さん、実はですね…」

 話してもいいものか一瞬迷ったが、この人は元元老院上院委員会の一人だったはずだ。もしかしたら何か良い情報を持っているかもしれない。

「……なるほど、そういう事でしたか…。」
「ええ…。あの、何か情報があれば…」
「………。……。実はわしが退職する少し前に、聖帝国ルべラント高速魔道戦艦2隻が未確認潜水艦に沈没される事件がありましてね、在ス連ルべラント大使館を通して、依頼が来たことがありましてね、その時、海中対潜水艦用特別ソナーで艦影をとったのですが…ちょっと待ててくださんかね」

 そういい、和博老人は家の奥へと消えていった。
 その時だった、私の脳内にある単語が浮かんだ。そう、脳内に浮かび上がったのだ。だが、その時、私はとっさにエニグマが何だったのか思い出せずにいた。和博老人のソナー艦影を見るまでは…

「お待たせしたの。これじゃ」

 そう言って渡された艦影ははっきりとカラーで映っていた。そして、私は我が目を疑った。
 そう、その潜水艦の艦影は私も知っていた。

「な!何故U-が?!」

 U-ボート…旧ナチス・ドイツ軍が生産した潜水艦、そして、その艦影には赤と白と鉄十字が描かれていた旗が掲げられていた。

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