私達は仲良く異世界に転移されたけど国家建国生活は大変だそうですよ…

11月光志/11月ミツシ

ヨシフおじさん目線、10章1話。【初登山は危険と隣り合わせ】

 山、それは自然の砦。山それは嫌な事でも忘れることができる癒しの地。山それは私の気分転換でもある。
 レッドヴェーレルリン連合王国本島の西側に位置する標高1200mの山があった。その山はいまだ登頂者は一人もいなくまともに整備されてもいない。岩がそこら中に転がっており、下手したら落石に巻き込まれるかもしれん。
 まぁ、たった今そんな山に私、伍長、チャーチムが調査という名の登山観光をしている訳であるが、

「のお、ヨシフよ…何故私は山登りをしないかんのかね…?」

 伍長にそうツッコまれた。なんかいつかツッコミで本当に突っ込んできそう…

「おいおい、忘れたのか?国王たるもの、自分の国の領土を把握しないでどうする?」

 まぁ、一応返事をしておいた。
 公では国王や首相などが直々に領土の把握、調査などでごまかしているが私は普通に登山観光に来ただけである。

「だが、国王としての職務が…」

 ほざけ!国王としての職務…お主やっとったか?それをありのまま伝えると、

「うぐ…」

 痛いところを突かれた!
 伍長はそんな情けない顔をしていた。っと後ろから存在感がこの頃薄くなりつつあるチャーチムが伍長へ変語射撃を開始した。

「ははは、まぁいいじゃないですか…」
「いいってなぁ…チャーチム…」
「おそらく、ヨシフさんも必死なんでしょう。何せ1週間後第1回総選挙があるんですからね…上院、下院でヨシフさんの新党が過半数とらないと、失脚ですから」

 その言葉を聞いていた瞬間、笑っていた私の笑顔が消え、足取りも物凄い重さを感じた。
 そう、私が今回登山をしようとしたわけは、これにある。
 第1回総選挙…、ほとんど国王の独断による判断であったが、国民も増えそろそろ国家運営をしなければな…という真っ当すぎてツッコむ余裕すら生まれない理由で、明日から1週間上院下院共に選挙の運動が始まる。
 しかも、いつの間にやら選挙管理委員会だの選挙区だのも決めており、そして、明日の12時、候補者が演説などを開始する。
 私は王都から出馬するのだが、これがやたら難物で、選挙に出る政党すべてが出馬するという、明らかに私をつぶしにかかってきている状態さ…。

「それを言わんでくれよ…わしかって政治家なのだから覚悟はしていたが、いざ選挙となると結構緊張してな…」
「それで、気晴らしに登山か?」

 うぐ!痛いところを突かれた… 
 確信をついた質問が伍長から出てきたので、私はそっと目をそらし口笛を吹く真似をして場を誤魔化す。

「まあ、登ってしまったのは仕方がない。早く山頂へ向かうぞ。」
「はいはい」

 話を無理やり捻り、私はさっさと上を目指して歩き出した。
 今は1000m地点…引き返そうにも微妙な場所である。そこそこ思い登山用の荷物を担ぎ、私たちは時間をかけてゆっくりと登って行った。

―数時間と数分と数秒後―
「ついた!」
「つ、疲れた…」
「お疲れ様です…」

 私はおそらくどこかの高校の文芸部に強硬突撃してきた女生徒よりも元気よく山頂で腕をいっぱいいっぱいに伸ばした。ほかのメンバーはへなへなと座り込んでいたのだが…、だらしないのぉ…
 まぁ、私も一応観光に来たという名目ではないので、一応山頂の景色や状況の把握のため、整備のために何枚か写真を撮る。

「しかしこれ、下山もあるのか…」
「そうですねぇ」
「ほれ、チャーチム。山頂付近のマッピングや調査などをするぞ!」
「はいはい」

 私はチャーチムを無理やり呼び寄せ、持ってきた道具…12.7㎜地底簡易測定器A型!をリュックの中から取り出した。外見は実に妙で12・7㎜の機関銃のように見えて、銃口からレンズが見えているという…それを地面に充てるとすっけすけで見えるというね…。これどういう仕組み何だろうか?
 それを一通り照らし合わせ、この山が現役バリバリの活火山という事が判明した……怖!危険すぎて怖い
 その後は何事もなく下山できたことを伝えておこう。

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