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私達は仲良く異世界に転移されたけど国家建国生活は大変だそうですよ…

11月光志/11月ミツシ

1章0話。【神様、彼らを異世界に!】

 赤い部屋の執務用の机にパソコンを置きネットニュースを確認する男がいた。だが、彼の名は誰も知る由もない。
 コンコン

「入りなさい」

 部屋の正面大きな観音開きの扉からノックが聞こえてくる。
 この部屋は一部を除く人間以外の立ち入りは禁止されている。そんな部屋に入ってくるのは、男の専属メイドか、妻か子供くらいであろう。

「失礼します。今回の転移者名簿です。」

 メイドであった。

「ご苦労様、早速確認させてもらうよ……。」

 そういい、男は極秘と書かれた書類に目を通す。その書類は4枚ほどしかなかったが、その4枚にはある男たちのプロフィールが載っていた。

「…、一人目、アーゼルベルクトフ・H・アドレフ。年齢51歳。ドイツ帝国ベルリン出身。科学者の道を諦め海軍に入隊。第2次世界大戦ではU-ボートの機関員。最終階級は伍長。そのせいか周りから伍長閣下と言われている。退役後は東西冷戦真っ盛りの西ドイツの首相に就任。1961年死亡…?なぜ死因がはっきりと書かれてないのかね?」
「はい。この方の死因については地球方面諜報員に探らさせていましたが、いまだに原因不明です。本人を確認した時、服からガソリンの匂いがしていましたので、焼死か火災による事故死…または何者かによる放火という可能性があります」
「そうか…」

 男はメイドに対し怒鳴ることもなければ、殴ることもなく、もう一つの資料に目を通す。

「…。二人目、ヨーゼヴェネル・シベリア・フシュガヴィリ。年齢56歳。ロシア帝国モスクワ出身。小さい頃の親からの虐待のトラウマからやや人間不信気味。ソ連政権になると、ソ連陸軍に入隊。独ソ戦でスターリングラード攻防戦に駆り出されるが、その時重傷を負い退役を余儀なくされた。最終階級曹長。指導者ではなく政治家として数々の重要ポストを歴任。1966年老衰のため亡くなった……。以上か?」
「はい」

 男はその極秘と書かれた資料を引き出しの奥にある書類用金庫に入れ鍵をかけなおし、暗証番号を入れてロックした。
 その金庫にはこのフェルトワンへの転移者名簿がある。そこにはチャーチムやルーズヴェールも…。
 そして彼ら転移者たちは知る由もない、この男こそすべての元凶でもあることに…

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