チート仮面と世界を救え、元英雄の異世界サバイバル救国記
第十一話 3人の家
「カイン、プリテ、行け」
メリウスが小声でつぶやくとカインが湖に大きな石を落とす。
石が水面に落ちる音に水鳥が一斉に飛び立つ。
そこにプリテとメリウスの矢が放たれる。
数体の水鳥はその矢に撃ち抜かれ湖に落ちていく。
カインはパンツ一丁になって湖に飛び込み獲物を回収して回る。
「大量ですよメリウス様ー!」
メリウスの放った矢はだいたい身体に刺さっているが、プリテの矢は正確に首を撃ち抜いている。
とんでもない精度だ。
二人は目も耳も鼻も人間のそれよりも優れていた。
3人の旅は順調に進んでいる。
獣道はすでに街道と言っていい広さになっており、今は見かけた森の奥になんと湖が存在していた。
魚も取れるし干物を作ったりしばらくの食料を確保するために滞在している。
この森は得るものが多かった。人数が増えて消費速度が上がった岩塩も見つけられた。
湖には野生動物が現れるし、魚も豊富に住んでいる。
食の宝庫だ。
久方ぶりの魚はメリウスの舌を大変に喜ばせた。
水鳥の羽を使った防寒具も作っている。
季節的には秋になってきている気配がしており、これから来るであろう冬への備えのためにもこの森に出会えたことは幸運だった。
「メリウス様、なんならその冬を越すためにここにしっかりとした住居を作りませんか?」
「……なるほど、定住を考えたことはなかったが、冬を越す間はそれも、有りだな。
ありがとうカイン。俺一人なら普通に歩き続けていた」
なんとかなったかもしれないが、たぶん生存確率が高いのはカインの案だろう。
恵みの多い森でしっかりと冬に備える準備をして、春まで耐える。
そして暖かくなったら再び出発すればいい。
「メリウスー、おにーちゃーん。獲物打ったから運んでー」
プリテの脳天気な声とは裏腹に獲物は巨大な熊だった。
「こ、この大きさの熊を正確に頭部を撃ち抜いたのか……。先に見つかっていたら戦闘も大変だっただろう。ありがとうプリテ……」
「えへへへへー」
熊は食料としても優秀だが、何と言ってもその分厚い毛皮はこれからの季節に役に立つ。
本当に二人にメリウスは感謝しきりだった。
二人は二人でメリウスに救われた命とよく働いてくれていた。
その日から家造りが始まる。
あれから何度か過去の夢を見ている。
基本的には戦いに明け暮れる日々、貴族や王族、地位の高いものの板挟みで人間の争いにも巻き込まれるような胸糞の悪い記憶だった。
それでも過去の記憶の夢を見ると仮面が剥がれて素晴らしい道具が手に入る。
なぜかメリウスが使わないと謎の切れ味は出ないが、どんどん大きくなるかけらによって様々な物を細工できるようになっている。
薄い皮のように剥がれていく仮面、顔の一部も顕になってきている。
「ほんとに不思議ですねそれ……」
木材をスイスイとカットしているのを興味深くカインが覗き込んでくる。
「これがなかったら俺の旅はもっともっと大変だったよ。
もしかしたら野垂れ死んでたかもな」
男手が二人あれば木材の加工も捗る。
石の道具もかなり使えるレベルになってきている。
カインと二人で家造りを初めて一ヶ月もすると、見事なログハウス風の家が出来上がった。
メリウスの力は小型重機並なので、丸太も平気で持ち上げる。
カインもメリウスほどではないが人間よりは遥かに力持ちだ。
プリテは狩猟に釣り、採取とそれらの加工と大活躍だ。
「メリウス、回収してきたよー」
編みカゴに大量の魚の干物を抱えてプリテが部屋に入ってくる。
「ありがとう。おお、いい感じで干物になってるなぁ」
一枚持ち上げると干物独特のいい香りがしてくる。
「うん、美味しそう」
クンクンと紐の匂いを楽しそうに嗅いでいる。
保存食料は半地下に作った倉庫へ貯めてある。
地面の熱で少しひんやりした自然の冷蔵庫みたいなものだ。
冬を越すために積極的に食料は貯めてある。
「今日はカインが食事を作ってくれてるからな」
メリウスは木製の椅子に座りテーブルの上で動物の骨を使った釣り針や細かな細工をしている。
様々な道具も全て自らの手で作らなければいけない。
もちろんメリウスはそういった作業は苦ではないどころか楽しくて仕方ない。
細かな細工は仮面の刃を使わないと難しいので、このあたりはメリウスの仕事だ。
石造りの細工道具で出来ることは、カインもプリテも見事な腕前になっている。
石窯は大きめなものを部屋の外に設置した。
家の内部で火を使って家が炎上しては困るので外部に作った。
それでも暖気を室内に呼び込んだりと色々な工夫はしている。
風よけと雨よけもあるので室内から調理場へ移動も苦にはならない。
今も雨が降り出したが、木に当たる雨音を聞きながら今晩の食事を鼻歌交じりでカインは室内へと運んできた。
暖かな部屋で三人で囲む食事、メリウスはこの世界で家族を手に入れていた。
ログハウスの作りは単純だ。しかし、色々と考えられている。
丸太を組み上げさらに内壁に板を貼り付け隙間風や防寒対策もしっかりと行っている。
今現在も雨が振り始めて来たが、室内は薄い衣服で十分なほど温かい。
ガラス窓などはないが、木で作られた覗き窓は何箇所か作られている。
外の様子を知りたい時にいちいち外へ出なくても大丈夫だ。
部屋への入り口は調理場に繋がる裏戸と正門に繋がる表戸の二つ用意してある。
家の外周は広く取られ、その外境はしっかりとした木柵で囲んである。
内側は板張りだが、外側には外敵対策がしっかりとされている。
槍衾のように外敵が飛び込んできたら大量の木の槍が迎撃する作りだ。
もちろん鳴子もしっかりと装備済み、大きな正面門から入らなければけたたましい音を鳴らすことになる。
湖があることで水の安定供給も可能になり、ここに来てとうとうまともな風呂も作った。
いつも水で濡らした葉や木の皮で拭いていただけだったが、これでしっかりと汚れを落とせる。
手間はかかるが火で水を沸かし湯を貯めれば、体の疲れを癒やす湯船も作れる。
この頃にはカインとプリテの体毛も完全に抜けて、銀髪の青年と、美しい銀髪の少女にしか見えない。
服や靴は全て革で作ってある。
こうして、3人はしばしの定住の日々を過ごすことになる。
季節も進み、外は日が暮れると息が白くなる。
なんとか冬に間に合ったのだった。
メリウスが小声でつぶやくとカインが湖に大きな石を落とす。
石が水面に落ちる音に水鳥が一斉に飛び立つ。
そこにプリテとメリウスの矢が放たれる。
数体の水鳥はその矢に撃ち抜かれ湖に落ちていく。
カインはパンツ一丁になって湖に飛び込み獲物を回収して回る。
「大量ですよメリウス様ー!」
メリウスの放った矢はだいたい身体に刺さっているが、プリテの矢は正確に首を撃ち抜いている。
とんでもない精度だ。
二人は目も耳も鼻も人間のそれよりも優れていた。
3人の旅は順調に進んでいる。
獣道はすでに街道と言っていい広さになっており、今は見かけた森の奥になんと湖が存在していた。
魚も取れるし干物を作ったりしばらくの食料を確保するために滞在している。
この森は得るものが多かった。人数が増えて消費速度が上がった岩塩も見つけられた。
湖には野生動物が現れるし、魚も豊富に住んでいる。
食の宝庫だ。
久方ぶりの魚はメリウスの舌を大変に喜ばせた。
水鳥の羽を使った防寒具も作っている。
季節的には秋になってきている気配がしており、これから来るであろう冬への備えのためにもこの森に出会えたことは幸運だった。
「メリウス様、なんならその冬を越すためにここにしっかりとした住居を作りませんか?」
「……なるほど、定住を考えたことはなかったが、冬を越す間はそれも、有りだな。
ありがとうカイン。俺一人なら普通に歩き続けていた」
なんとかなったかもしれないが、たぶん生存確率が高いのはカインの案だろう。
恵みの多い森でしっかりと冬に備える準備をして、春まで耐える。
そして暖かくなったら再び出発すればいい。
「メリウスー、おにーちゃーん。獲物打ったから運んでー」
プリテの脳天気な声とは裏腹に獲物は巨大な熊だった。
「こ、この大きさの熊を正確に頭部を撃ち抜いたのか……。先に見つかっていたら戦闘も大変だっただろう。ありがとうプリテ……」
「えへへへへー」
熊は食料としても優秀だが、何と言ってもその分厚い毛皮はこれからの季節に役に立つ。
本当に二人にメリウスは感謝しきりだった。
二人は二人でメリウスに救われた命とよく働いてくれていた。
その日から家造りが始まる。
あれから何度か過去の夢を見ている。
基本的には戦いに明け暮れる日々、貴族や王族、地位の高いものの板挟みで人間の争いにも巻き込まれるような胸糞の悪い記憶だった。
それでも過去の記憶の夢を見ると仮面が剥がれて素晴らしい道具が手に入る。
なぜかメリウスが使わないと謎の切れ味は出ないが、どんどん大きくなるかけらによって様々な物を細工できるようになっている。
薄い皮のように剥がれていく仮面、顔の一部も顕になってきている。
「ほんとに不思議ですねそれ……」
木材をスイスイとカットしているのを興味深くカインが覗き込んでくる。
「これがなかったら俺の旅はもっともっと大変だったよ。
もしかしたら野垂れ死んでたかもな」
男手が二人あれば木材の加工も捗る。
石の道具もかなり使えるレベルになってきている。
カインと二人で家造りを初めて一ヶ月もすると、見事なログハウス風の家が出来上がった。
メリウスの力は小型重機並なので、丸太も平気で持ち上げる。
カインもメリウスほどではないが人間よりは遥かに力持ちだ。
プリテは狩猟に釣り、採取とそれらの加工と大活躍だ。
「メリウス、回収してきたよー」
編みカゴに大量の魚の干物を抱えてプリテが部屋に入ってくる。
「ありがとう。おお、いい感じで干物になってるなぁ」
一枚持ち上げると干物独特のいい香りがしてくる。
「うん、美味しそう」
クンクンと紐の匂いを楽しそうに嗅いでいる。
保存食料は半地下に作った倉庫へ貯めてある。
地面の熱で少しひんやりした自然の冷蔵庫みたいなものだ。
冬を越すために積極的に食料は貯めてある。
「今日はカインが食事を作ってくれてるからな」
メリウスは木製の椅子に座りテーブルの上で動物の骨を使った釣り針や細かな細工をしている。
様々な道具も全て自らの手で作らなければいけない。
もちろんメリウスはそういった作業は苦ではないどころか楽しくて仕方ない。
細かな細工は仮面の刃を使わないと難しいので、このあたりはメリウスの仕事だ。
石造りの細工道具で出来ることは、カインもプリテも見事な腕前になっている。
石窯は大きめなものを部屋の外に設置した。
家の内部で火を使って家が炎上しては困るので外部に作った。
それでも暖気を室内に呼び込んだりと色々な工夫はしている。
風よけと雨よけもあるので室内から調理場へ移動も苦にはならない。
今も雨が降り出したが、木に当たる雨音を聞きながら今晩の食事を鼻歌交じりでカインは室内へと運んできた。
暖かな部屋で三人で囲む食事、メリウスはこの世界で家族を手に入れていた。
ログハウスの作りは単純だ。しかし、色々と考えられている。
丸太を組み上げさらに内壁に板を貼り付け隙間風や防寒対策もしっかりと行っている。
今現在も雨が振り始めて来たが、室内は薄い衣服で十分なほど温かい。
ガラス窓などはないが、木で作られた覗き窓は何箇所か作られている。
外の様子を知りたい時にいちいち外へ出なくても大丈夫だ。
部屋への入り口は調理場に繋がる裏戸と正門に繋がる表戸の二つ用意してある。
家の外周は広く取られ、その外境はしっかりとした木柵で囲んである。
内側は板張りだが、外側には外敵対策がしっかりとされている。
槍衾のように外敵が飛び込んできたら大量の木の槍が迎撃する作りだ。
もちろん鳴子もしっかりと装備済み、大きな正面門から入らなければけたたましい音を鳴らすことになる。
湖があることで水の安定供給も可能になり、ここに来てとうとうまともな風呂も作った。
いつも水で濡らした葉や木の皮で拭いていただけだったが、これでしっかりと汚れを落とせる。
手間はかかるが火で水を沸かし湯を貯めれば、体の疲れを癒やす湯船も作れる。
この頃にはカインとプリテの体毛も完全に抜けて、銀髪の青年と、美しい銀髪の少女にしか見えない。
服や靴は全て革で作ってある。
こうして、3人はしばしの定住の日々を過ごすことになる。
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なんとか冬に間に合ったのだった。
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