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チート仮面と世界を救え、元英雄の異世界サバイバル救国記

穴の空いた靴下

第十二話 道

「おっ、とうとう降ってきたな」

 今日は朝から妙に冷え込むので窓から外を伺うと白いものがちらついていた。

「おはようございますメリウス様、早いですね」

「外は見たかカイン? とうとう雪が降ってきたぞ」

「おお、あれは嫌いです。身体が芯まで冷えますし……
 この部屋は常に温かくて、本当に幸せです」

「ふぁ~、メリウスもおにーちゃんも早いねー」

「おはようプリテ。今日は雪らしいぞ」

「うえー……あたしあれきらいー。でもここは暖かいから平気ー」

 お気に入りの水鳥の羽根が入った枕を抱きしめて二度寝しようとし始める。

「……まぁ、今日はいいか。雪で外をうろつくのは危ないしな、家でのんびりとしよう」

「ちょっと外の炉に薪を足してきますね」

 外部の炉で暖められた空気が室内を温かくしてくれているので、火は絶やさないようにしないといけない。
 カインは外の炉の音を敏感な聴覚で把握して管理している。
 メリウスでも出来ない芸当だ。

「そしたら俺は朝食作るよ」

「メリウスー卵焼き食べたいー」

「了解」

 薪をせっせと運んでくれているカインの横で朝食の準備をする。
 水辺に生えていた植物の茎をザラザラとした石でゴリゴリと削る。
 水分が多く含まれているが、こうしてすりおろすと粘り気が出てきてまとまっていく。
 これを火にかけた薄い石の上で焼いて水分を飛ばすと少しフカフカとした不思議な食感になる。
 その横で細かくした塩漬け肉やキノコ、山草を油で炒める。
 プリテからリクエストされた目玉焼きも横で作る。
 木の皿にふかふかに焼けた生地、その上に炒め物を乗せて目玉焼きを乗せる。
 最後に半分にたたむと簡単に色んな食材を取ることが出来るお手軽の朝食になる。
 昨日の夜に作ったスープも温め直して器に盛ればあっという間に絶品の朝食の出来上がりだ。

「家ができたことで、料理は本当に楽になったな」

「そうですね、大量の煮物もなんでも出来ますからね」

 草木や節ばった植物を利用した調理道具は一度に作れる量がどうしても少ないのと、やはり使用しているとすぐに壊れてしまう。
 今は火の上に薄い石の焼き場と凹状に切り出した石の鍋がある。
 両方共表面を丁寧に磨き上げており、非常に優れた調理道具になっている。
 使い終わったら草木の繊維を丸めたものを濡らしてこすればあっという間に綺麗になる。
 加工するまな板も一枚石で広くとっている。
 使用する人を考えた作りだ。
 薪をくべ終わったカインとメリウスは朝食を持って室内へと入る。

「あー、それ好きー」

 匂いに誘われ二度寝の最中だったプリテも飛び起きてくる。

「「「いただきます」」」

 こうしてのんびりと朝食を楽しむことが出来る。
 食後には地下の貯蔵庫に行けばフルーツだって楽しむことが出来る。

「……ずっとここに住むのも有りなのかもな……」

 最近メリウスはそんなことも考えてしまう。
 二人の仲間を得てから生活は充実し非常に満たされた日々を遅れている。
 今回拠点となる家まで作っている。
 無理をして道を追う意味はあるのだろうか? そう疑問に思ってもおかしくなかった。

 しかし、彼の思惑とは裏腹に、現実は彼を平穏な場に留めてくれることはなかった。

 その日はいつもと同じように皆で朝食を取っていた。
 食料の貯蔵は問題なく、冬が深まっている現在でも生活の不安はない。

「今日は晴れているから少し周囲を見て回るか」

「そしたら少し魚増やそうかなー」

「メリウス様、後で剣の稽古を……」

 カインが言葉の途中で黙る。メリウスはカインの邪魔はしない、何かを彼が感じ取っていることがわかるからだ。

「プリテ! メリウス様、たぶん何かが近づいてきます!」

 プリテは兄の言葉を理解して外に飛び出し、音もなく家の屋根に軽やかに昇っていく。
 すぐに周囲の気配を探り異常を発見する。
 すぐにメリウスとカインも外に飛び出してくる。

「おにーちゃんアッチから人が逃げてくる。
 背後から何かが追ってきてる。……すごくやな感じがする……」

「プリテ、上から警戒しろ、ほら!」

 カインはプリテの獲物である弓矢と短剣を屋根に放り投げる。
 カイン自身も武器を手に取っている。メリウスも武器を入れた袋を乱暴に掴んでいる。 

「メリウス様、こっちです」

「ああ」

 門から外に出てプリテの示した方に走り出す二人。

「こっちは……道の方か……」

 メリウスが辿ってきた道へと戻る方向だ。
 3人で作った森の道を抜けて草原へと飛び出す。

 追われてる人間はすぐに発見できた。
 必死によろけながらも進むべきだった道の先から二人に向かって走ってきていた。

「どうしたー!?」

「ひ、人!? た、助けてくれ! 奴らが来る!」

 二人の姿を捉えて、安心からかへたり込んでしまう。
 確かに人間、文化的な洋服と靴を履いている中年の男性だ。

「メリウス様、お気をつけください、何かおかしな奴らが追ってきています。
 すでにプリテが矢を打ちましたが、叩き落としたそうです」

 カインとプリテは二人しか聞こえない声で情報を共有している。
 その内容が信じられない物で、カインの声にも緊張が聞いて取れた。
 プリテの矢を叩き落とす芸当など、カインとメリウス以外に出来るものを知らなかった。

 背後に迫る何かがメリウスの視界に入る。

 ズクン。

 仮面が激しく疼き、手に持つ石剣の持ち手、木で作られた柄がビキッと音を立てる。

「メリウス……様……?」

 よほどひどい顔をしていたのか、カインも思わず声を飲み込んだ。

「ウオオオオオオオオ!!」

 メリウスは雄叫びとともに台地を蹴り出していた。
 その衝撃で地面にくぼみができ、メリウスの肉体が弾丸のように加速してその集団に飛び込んでいく。
 周囲を激しく震わせるほどの咆哮、そして怒り。
 日々を穏やかに過ごしていたメリウスからは想像もできない姿だった。

 彼の目には追ってきた一団しか映っていなかった。
 逃げてきた人間も ひぃっ とその姿を恐れたが、メリウスは意にも介さない。

 彼の目は、禍々しく真っ赤に目を光らせた子鬼の集団だけを捉えていた。


 

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