チート仮面と世界を救え、元英雄の異世界サバイバル救国記
第十三話 吹き出す闇
……これではどちらが魔物かわからないな……
目の前に迫る魔物共に襲いかかるメリウスは、理性をなくした自分自身を別の視点で観察していた。
彼の中で、この世界に来た日々の中で育てられたもう一人の自分が観察していた。
先頭で追ってきていた子鬼が最初の犠牲者になる。
石で作られた剣で薙ぎ払われ、子鬼自身の持つ粗末な木刀のようなもので受け止めるが、爆発したように木剣ごと上半身を吹き飛ばされてしまう。
赤い目をした魔物は、仲間がそのような惨たらしい死に方をしても怯むことはなく、飛び込んできたメリウスへと襲いかかる。
木の棒や、メリウスたちのものと比べるのもアレだが木に石を挟んだ槍もどき、斧もどきを振り回してくる。
猛るメリウスにとってそんなものは無いにも等しい、力いっぱい石剣を振り払い、敵の武器を粉々にする。
そのまま魔物たちごと薙ぎ払っていく。
一匹、また一匹、殺す。殺す。殺す。
「殺す。殺す。殺す」
小集団だった子鬼の群れは、ほんの数秒で肉の塊と貸す。
メリウスは上半身が飛び散った身体の残りにも石剣を振り下ろす。
ほとんど地面に叩きつけるものだから、持ち手との接続部分で折れてしまう。
それでも、止まらない。
次の武器を取り出して、動くことのない死体へと振り下ろそうとする。
「メリウス様!!」
「メリウスだめぇ!」
誰かに前後から押さえつけられる。
「邪魔するのか……」
煩わしい、しかし、その二つの塊は強固にメリウスの身体を押さえ込む。
……邪魔だ、こいつらも魔物か? 殺すか……
彼の思考は完全に異常だった。
パーーーン
甲高い音が響く。
遅れてメリウスの頬が熱を帯びてくる。
その熱が身体に広がり、狂った、いや、狂いかけていた彼の思考を呼び戻してくれた。
「……プリテ……」
目の前で自分を止め、そして頬を叩いてくれたのがプリテだと、ようやく気がつく。
そして背中で涙を流しながら自分を止めてくれているのがカインだとわかる。
「……すまない……」
そう一言小さくつぶやくと、糸の切れた人形のようにメリウスの身体から力が抜ける。
二人は彼の巨体をしっかりと支えながら、近くの草原へと横たわらせる。
握りしめすぎて出血をしている手のひら、敵の攻撃がかすって出来た傷に二人は丁寧に薬草を塗っていく。
「プリテ、あの人間を」
兄の言葉に無言で頷く。
プリテは素早く助けを求めてきた男のところへ向かう。
男は魔物に追われて疲弊していたのと、メリウスの豹変、さらには凄惨な戦闘を見たショックで気絶していた。
その後、カインはメリウスを背負い、男はプリテが背負い、皆の家に帰宅した。
それから数時間、メリウスは激しい熱を出しうなされることになった。
二人の適切な処置で、外傷による物ではない。
彼の内面の憎しみの炎が彼自身の身を焼いているような、激しい熱だ。
「だ、大丈夫なのか彼は……」
すでに助けを求めに来た男は目を覚ましていた。
「大丈夫にします!」
冷たく冷えた水を湖に何度も汲みに行き、よく水を吸うスポンジ状の植物でメリウスの頭を冷やし、吹き出す汗も丁寧に拭き続ける。
二人の献身的な看護によってようやく熱が引き始める。
パキン
仮面が割れる音と共に、メリウスは意識を取り戻した。
「……家か……カイン、プリテ、ありがとう。アレからどれくらいたった?」
「まだそれほど経っていません」
「メリウスすごい熱だった」
「ああ、二人が看病してくれていたんだよな、ぼやっと感じていた」
「あ、あのー大丈夫ですか? 助けてもらってありがとうございました」
「ああ、そうだった。そちらは怪我などは無いですか?」
「お陰様で……」
「もうちょっと休んだら、話を聞かせてください。
すまない、二人共少しだけ眠らせてくれ……」
「はい!」
「おやすみメリウス」
それからメリウスはすぐに静かに寝息をたて始める。
カインとプリテも安心からその場に座り込んでしまう。
助けた男と話せるようになったのは、日も傾いて夜の食事時だった。
「あ、ありがたい! ここ数日まともな食事も取れなかった……本当にありがとう!」
メリウスの体調を考えて、野菜のスープを中心に身体に優しい者にしてあったが、逃げてきた男も数日食事が取れていなかったので丁度よかった。
極端な空腹の人間に脂のたっぷりな焼肉なんて食べさせたらきっと腹を壊す。
「旨い! うますぎる! しかもこの時期にこんなに豊富な食料!
それに……この部屋……こんな大きな木を使っているのか!?
しかも、暖かい……」
食事を食べると男はどんどん饒舌になって様々な疑問をメリウス達にぶつけてくる。
「お、落ち着いてください。どちらかと言えばこちらが色々と話が聞きたいのです。
実は……」
メリウスが自分が気がついたら見知らぬ場所で倒れていて、記憶もなかったこと、旅を続けながら冬を越すためにここに家を立てたこと、流石にカインとプリテのことは旅の途中で救った兄妹とごまかしたが、自身の今までの話をした。
男の名はモーラ、この先にある山の中腹にある小さな村の住人で、山菜を集めている時に足を滑らせ山の麓からあの魔物たちに追われ、数日間逃げ続けてメリウスたちと出会ったことがわかった。
「あいつら眠ることもなくずーーーっと追ってくるんだよ!
生きた心地がしなかったよ……」
「モーラさん。アレ、あの目が赤く光る奴らは、この世界でよくいるんですか?」
「いやいやいや、あんな不気味な奴らは見たことがないよ!
犬やイノシシなんかに襲われることはあっても、あんなにしつこく追ってはこないよ!」
身振り手振りで恐怖を表現してくれる。
モーラは30代位だろうけど本来はおしゃべりで明るい人間なんだろう。
いろいろと情報交換をしてこの日は就寝する。
寝心地の良い寝床にモーラは大層驚いてしまう。
メリウスはまだ少し重い頭で熱を出していた時に見ていた過去を思い返していた。
今までで最大の大きさの仮面のかけらを手に入れた、長い長い過去の旅を……
目の前に迫る魔物共に襲いかかるメリウスは、理性をなくした自分自身を別の視点で観察していた。
彼の中で、この世界に来た日々の中で育てられたもう一人の自分が観察していた。
先頭で追ってきていた子鬼が最初の犠牲者になる。
石で作られた剣で薙ぎ払われ、子鬼自身の持つ粗末な木刀のようなもので受け止めるが、爆発したように木剣ごと上半身を吹き飛ばされてしまう。
赤い目をした魔物は、仲間がそのような惨たらしい死に方をしても怯むことはなく、飛び込んできたメリウスへと襲いかかる。
木の棒や、メリウスたちのものと比べるのもアレだが木に石を挟んだ槍もどき、斧もどきを振り回してくる。
猛るメリウスにとってそんなものは無いにも等しい、力いっぱい石剣を振り払い、敵の武器を粉々にする。
そのまま魔物たちごと薙ぎ払っていく。
一匹、また一匹、殺す。殺す。殺す。
「殺す。殺す。殺す」
小集団だった子鬼の群れは、ほんの数秒で肉の塊と貸す。
メリウスは上半身が飛び散った身体の残りにも石剣を振り下ろす。
ほとんど地面に叩きつけるものだから、持ち手との接続部分で折れてしまう。
それでも、止まらない。
次の武器を取り出して、動くことのない死体へと振り下ろそうとする。
「メリウス様!!」
「メリウスだめぇ!」
誰かに前後から押さえつけられる。
「邪魔するのか……」
煩わしい、しかし、その二つの塊は強固にメリウスの身体を押さえ込む。
……邪魔だ、こいつらも魔物か? 殺すか……
彼の思考は完全に異常だった。
パーーーン
甲高い音が響く。
遅れてメリウスの頬が熱を帯びてくる。
その熱が身体に広がり、狂った、いや、狂いかけていた彼の思考を呼び戻してくれた。
「……プリテ……」
目の前で自分を止め、そして頬を叩いてくれたのがプリテだと、ようやく気がつく。
そして背中で涙を流しながら自分を止めてくれているのがカインだとわかる。
「……すまない……」
そう一言小さくつぶやくと、糸の切れた人形のようにメリウスの身体から力が抜ける。
二人は彼の巨体をしっかりと支えながら、近くの草原へと横たわらせる。
握りしめすぎて出血をしている手のひら、敵の攻撃がかすって出来た傷に二人は丁寧に薬草を塗っていく。
「プリテ、あの人間を」
兄の言葉に無言で頷く。
プリテは素早く助けを求めてきた男のところへ向かう。
男は魔物に追われて疲弊していたのと、メリウスの豹変、さらには凄惨な戦闘を見たショックで気絶していた。
その後、カインはメリウスを背負い、男はプリテが背負い、皆の家に帰宅した。
それから数時間、メリウスは激しい熱を出しうなされることになった。
二人の適切な処置で、外傷による物ではない。
彼の内面の憎しみの炎が彼自身の身を焼いているような、激しい熱だ。
「だ、大丈夫なのか彼は……」
すでに助けを求めに来た男は目を覚ましていた。
「大丈夫にします!」
冷たく冷えた水を湖に何度も汲みに行き、よく水を吸うスポンジ状の植物でメリウスの頭を冷やし、吹き出す汗も丁寧に拭き続ける。
二人の献身的な看護によってようやく熱が引き始める。
パキン
仮面が割れる音と共に、メリウスは意識を取り戻した。
「……家か……カイン、プリテ、ありがとう。アレからどれくらいたった?」
「まだそれほど経っていません」
「メリウスすごい熱だった」
「ああ、二人が看病してくれていたんだよな、ぼやっと感じていた」
「あ、あのー大丈夫ですか? 助けてもらってありがとうございました」
「ああ、そうだった。そちらは怪我などは無いですか?」
「お陰様で……」
「もうちょっと休んだら、話を聞かせてください。
すまない、二人共少しだけ眠らせてくれ……」
「はい!」
「おやすみメリウス」
それからメリウスはすぐに静かに寝息をたて始める。
カインとプリテも安心からその場に座り込んでしまう。
助けた男と話せるようになったのは、日も傾いて夜の食事時だった。
「あ、ありがたい! ここ数日まともな食事も取れなかった……本当にありがとう!」
メリウスの体調を考えて、野菜のスープを中心に身体に優しい者にしてあったが、逃げてきた男も数日食事が取れていなかったので丁度よかった。
極端な空腹の人間に脂のたっぷりな焼肉なんて食べさせたらきっと腹を壊す。
「旨い! うますぎる! しかもこの時期にこんなに豊富な食料!
それに……この部屋……こんな大きな木を使っているのか!?
しかも、暖かい……」
食事を食べると男はどんどん饒舌になって様々な疑問をメリウス達にぶつけてくる。
「お、落ち着いてください。どちらかと言えばこちらが色々と話が聞きたいのです。
実は……」
メリウスが自分が気がついたら見知らぬ場所で倒れていて、記憶もなかったこと、旅を続けながら冬を越すためにここに家を立てたこと、流石にカインとプリテのことは旅の途中で救った兄妹とごまかしたが、自身の今までの話をした。
男の名はモーラ、この先にある山の中腹にある小さな村の住人で、山菜を集めている時に足を滑らせ山の麓からあの魔物たちに追われ、数日間逃げ続けてメリウスたちと出会ったことがわかった。
「あいつら眠ることもなくずーーーっと追ってくるんだよ!
生きた心地がしなかったよ……」
「モーラさん。アレ、あの目が赤く光る奴らは、この世界でよくいるんですか?」
「いやいやいや、あんな不気味な奴らは見たことがないよ!
犬やイノシシなんかに襲われることはあっても、あんなにしつこく追ってはこないよ!」
身振り手振りで恐怖を表現してくれる。
モーラは30代位だろうけど本来はおしゃべりで明るい人間なんだろう。
いろいろと情報交換をしてこの日は就寝する。
寝心地の良い寝床にモーラは大層驚いてしまう。
メリウスはまだ少し重い頭で熱を出していた時に見ていた過去を思い返していた。
今までで最大の大きさの仮面のかけらを手に入れた、長い長い過去の旅を……
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