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チート仮面と世界を救え、元英雄の異世界サバイバル救国記

穴の空いた靴下

第十八話 村建設基礎工事

「移住……ですか……」

「突然の話で私のようなよそ者が言うのもアレなんだが、いかんせん資材を運ぶだけでも、めん、時間が掛かるし、これから先の事を考えると、少し高度を下げた場所に住んだほうがいいのではないかと思って」

「ふむ、村の者に話さねばなりませんが、いかんせんすぐに移住という話は……」

「もちろんよく分かる。試しに少しこのような村になるという雰囲気だけでもわかるように下の方に建物を立てる。それはもしここに残るとしても山を降りる中継地点にでも使ってくれればいい」

「何から何まですみません。村のものとよく話し合います」

「いえいえ、正直楽しくて仕方ないのです」

 これは本当だ。刀を使う事で作業は別次元に楽になった。
 家の建築も、たぶん数日で終えられるだろう。
 戻ったついでに今ある木材で食料貯蔵庫を作ったが、わずか数時間で完成した。
 刀をメリウス以外にも使えればよかったが、村人たちも一人として使えるものはいなかった。

「本当に凄いですねメリウス様の剣は……」

 丸太を板状に切り出し、ほぞ接ぎの細工をしている。
 カインが支え、メリウスがサクサクと木を切り出していく。
 ほぞ同士を組み合わせるとまるで吸い付くようにピタッと合わさる。

「こうしたい、って思うとそう斬れてくれるんだよ……」

「奇跡ですね!」

 倉庫はあっという間に出来上がる。
 というか、この村で一番立派な建造物になる。

「め、メリウス様……こんな家が作れるのですか?」

「うーん、ここに作るのは少し時間がかかりすぎるから、柱だけにしてあとは今の作りに近くなるかなぁ……」

「も、もしも山裾に村を移すなら?」

「それならもっと立派な家にできま「皆を説得してまいります!!」……」

 この話を村長は村人に熱く触れ回り、さらにモーラがメリウスたちの家の素晴らしさを伝え、村人全員が移住を決めてくれることになった。

「それでは我々はしばらく村の基礎を作ります。動物たちからの安全対策ができたら、少しづつお手伝いをお願いします!」

 方向性が決まった。
 夕方になったので続きの作業は翌日からだ。
 この日の村人たちは、今日だけだからとプリテの捉えた土豚の肝の焼肉を心置きなく楽しんだ。
 産まれて初めて食べる肝の味わいに村人たちは涙を流して喜んだ。

「草木しか食べてなかった時、初めて肝を食べた時は俺も泣きそうになったなぁ……
 それが何年、何十年ぶりだったら……泣くよなぁ……」

 口に含んだ肝は程よい塩味とともに口の中で蕩けていく。
 新鮮で血生臭さもほとんど感じない、命の美味しさを凝縮したような味わいだ。
 喉を通り、消化され、文字通り血肉になる。そんな味だ。

「今なら土掘って雪と埋めておけば肉も痛まない。
 しばらくは村の人もいい飯が食えるな。よくやったなプリテ、そして、明日も頼むぞ二人共」

 二人の子どもたちの頭をワシワシとなでつける。
 明日からは本格的な村作り。
 人々を救う働きができることに、メリウスは心からの喜びを覚えていた。

 翌朝、残っていた木材は使いやすいように板材にして村へ置いていく。
 石の道具で自由に使って構わないと朝食を咥えながら凄まじい速さで山を降りていく。
 寝る前に考えていた案を実行したくてメリウスはうずうずしている。

「またササッと木を斬るぞー」

「はい!」

「私はまたいろいろ集めるー」

「あ、プリテ悪いんだけど蔦とか紐に使えるの優先して集めてもらえる?」

「わかったー」

 冬の森でも自然の鬱蒼とした森には恵みは大量にある。
 木を切るときも間伐をするように、丸裸にするようなことはしない。
 偽善かもしれないが、森の機能自体はそのまま維持できるようにしていきたかった。
 もちろんそれはこれから村人たちが新しい村で生活をしていくためだ。

「よし、新村予定地へ行くぞ!」

 満載した木材を積んでメリウスが走る。
 村の予定地は山裾の少し小高い丘になっている場所だ。
 周囲の様子が把握しやすく、道からも近い。
 森へもアクセスしやすい。そして故郷の山を直ぐ側に伺える場所になっている。

「よし、カイン木材をどんどん立てて置いていってくれ、空になったら悪いけど向こうに置いてあるの積んで持ってきてくれ」

 近所にお使いにいかせるように結構無茶なことを要求している。
 それでもカインにとってはお手の物だ。
 メリウスほどではないが、カインの身体能力は人並み外れている。

「わかりました! お気をつけて」

 メリウスに頼りにされて嬉しいのか物凄く張り切って仕事を手伝ってくれる。

「そうか……二人がいないし、気をつけないとな……」

 ほんの少しだけ気をつけるメリウス。しかし作業に没頭し始めると頭からすっこり抜け落ちてしまう。

「まずは村を守る壁からだな、それができれば人を呼べる」

 立てられた丸太に目にも留まらぬ速さで刀を振るうと、パラパラパラと外壁を作る柵状に切り別れていく、まるで曲芸のようだ。
 立ち並ぶ丸太を踊るように切り裂いて、あっという間に大量の外壁の材料が完成してしまう。

「ふん! せりゃ! おりゃ!」

 それをメリウスの剛力でくさび状になっている部分を地面に打ち込めば、外壁の完成だ。
 一定間隔で少しだけ間を空けてある。弓を放ったり外部の様子を探れるようにだ。

「……戦争でもするわけでもないのにな……」

 それから家にも作った尖った槍上の木材を大量に作成して槍衾のように外部からの来客に備える。
 延々と地面に撃ち込む作業だが、地味にメリウスは気に入っている。
 なんとなく間隔や角度を調整して見た目も綺麗に、などと無駄なことにも凝っている。

 外壁作成もとんでもない速度で進んでいくのであった。

「……うわぁ」

 戻ってきたカインもこの反応だ。
 何もなかった高台が板によって囲まれ、その板の足元には栗のいがのような物で包まれている。

「おお、丁度よかったおかえり!」

 カインが帰ってきたことでやりたかったことが出来る。
 この場所を村としたもう一つの理由、中央に存在する大きな岩だ。

「これを何かするんですか?」

「うん、ちょっと岩の中に部屋を作ろうかと……」

「はい?」

 カインが素っ頓狂な声を出す横でメリウスは岩に向かって刀を構えて岩を斬りつける。

 メリウスと同じぐらいの巨大な岩が、『切り出されていく』
 バターのように一枚、また一枚。
 もちろんそのままでは取り除けないために、切り出した後にブロック状に細かく切り分ける。
 これをせっせと外に運び出していく。
 美しく四角く切り出された岩は建材にも利用しようと考えている。
 みるみるうちに岩が、一段一段切り下げて抜いていく。
 階段状にくり抜き進み、そして部屋の形に岩を斬っていく。
 さすがのカインもこんな人間離れした技は初めてで、意味もわからずにせっせと石を運び出している。

「なになに、メリウス凄いことしてるね。荷物持ってきたら手伝うー」

 途中からプリテも一緒になって石運びを手伝ってくれる。
 3人の協力によって、巨大な岩の地下室が完成する。

「……メリウス様はつくづく……凄いですね」

「きゃはは、ひろーいひろーい!」

「よし、これで、冷蔵室が作れるぞ!」


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