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チート仮面と世界を救え、元英雄の異世界サバイバル救国記

穴の空いた靴下

第二十八話 来襲

「さすがコルネス、メリウスもイチコロだった」

「プリテ嬢に頼まれたら儂も嫌とは言えんからのー」

 二人が悪い顔をしていた。

「なるほど、コルネスの差し金だったのか……」

「ほっほっほ。メリウス様がいつまでもプリテ様を妻にせんからこんな手を使うのですよ」

「フッフッフ。メリウスが悪いー!」

「あのなぁ……」

「メリウス様、ふつつかな妹ではありますが何卒よろしくお願いいたします」

「カインまで……」

 村人は酒が響く頭を必死に動かして後片付けに勤しんでいる。
 村人にとってメリウスの仮面が外れたことは大きな問題ではないようだ。
 プリテはいい男になったと額の宝石を指で撫でている。

 まんまと二人の策略にハマった俺は、プリテと結婚するつもりだ。
 まぁ、この村での婚姻は特に手続きもない。
 今までとあまり変わらずに一緒に暮らすだけだ。
 カインが一人暮らしを始めると言い出した。
 メリウスは承諾はするが、家族だから共に飯は食おうと笑顔で語っている。
 一人暮らしと言っても、目と鼻の先の家だ。
 あまり変わりはない。
 何も変わらない一日がまた始まる。
 メリウス以外の誰もがそう思っていた。

 カーンカーンカーン

「メリウスーこの音なにー?」

「警鐘だ!」

 メリウスは家を飛び出す。

「メリウス様!」

 カインもすぐに飛び出してくる。手には剣を持って臨戦態勢だ。
 すぐに見張り台へと向かう。

「カイン、村人を戦支度させて集めろ!」

「分かりました!」

 プリテは既に軽々と見張り台に昇っていく。メリウスは急いで階段を駆け上がる。

「メリウス様! あちらです!」

 地平線の先から幾つかの影が動いて接近してきている。
 明らかに村を狙った動きに見え、きちんと障害物を利用しながら近づいてくる。
 統率されているとは決して言えないが、普通の動物の動きとは明らかに異なる。

「メリウス、あの赤目だ! 数は15!」

 プリテの視力はメリウスを上回る。その影を既に捉えて姿を確認できている。

「そうか……戦いになるぞ! 皆準備しろ! プリテはここから状況を把握して、可能なら援護を」

「わかった。気をつけてね」

 メリウスは見張り台から飛び降りる。

「メリウス様、集まりました」

 村人たちはこういった日に備えて鍛錬を行っている。
 その中でも優秀な者たちはいざという時に戦士として戦える。

「弓手は外壁に昇って構えろ!
 槍手は外壁の間隙から取り付いたものを突け!
 大丈夫だ、訓練通りにやればいい。
 俺とカインは打って出るぞ! 外壁に取り付く数を少しでも減らす!」

「はい!!」

 全員しっかりとした返事をする。
 戦いを前に怯む者などいなかった。
 自分たちの村を自分たちの手で守る。
 彼らの心にはしっかりとした火が灯っている。
 メリウスから植えられた火が。

「門を開けろ! 俺達が出たらすぐに閉めて閂を降ろせ!」

 メリウスとカインは村の外に出て、敵が近づいてくる方向へと駆ける。

「メリウス様、その……大丈夫ですか?」

 すでに俺とプリテの会話はカインの優れた聴力で聞こえている。
 以前、赤い目の魔物を見た時、メリウスは暴走してしまい、その後高熱に倒れてしまった。
 それを心配している。

「ああ、大丈夫だ。俺には守るべきものがたくさん出来たからな!」

 そう話しながら、刀を握りしめる。
 今朝の仮面を取り込んで刃渡りは長剣と読んで差し支えない長さまで成長した。
 片刃の剣だが少し反りがあり、独特の形状をしている。
 メリウスが知っていればこの剣が、刀と呼ばれる形状をしていると気がついただろう。

 丁度、門から反対側の戦場にたどり着くと戦端は開かれていた。
 弓が魔物を狙い飛び交っている。
 子鬼のような魔物、ゴブリンは粗末な板を使って矢を受けている。
 数匹は見事に脳天を撃ち抜かれて倒れていた。
 物見台からのプリテによる一撃だ。

 メリウスとカインの姿を捉えたゴブリンが向かってくる。
 メリウスは、自らの武器を見極めなければいけない。フッと短く息を吐き心を落ち着かせる。
 赤い目をらんらんと輝かせて向かってくる魔物、体温が上がるきはするが心は冷静だ。
 ただの枝のような物を思いっきり振りかざしてくる。
 刀で受け止める。
 普段の加工のように簡単に斬れたりはしないようだ。
 相手が意思を持って振るってくる武器をなますのように斬れれば楽だったなぁというメリウスの願望はならなかった。
 しかし、刃と枝、モノが違う。
 力任せに叩きつけてくる枝を軽くいなしてゴブリンの首を刎ねる。
 肉に当たれば良い剣の様に敵を斬り裂いてくれる。

「ふぅ……」

「何か試されていたのですか?」

 見るとすでにカインの相手は息絶えている。
 多分最初の接触で腹を割かれたのだろう。
 カインの武器は鉄の剣にグレードアップしている。
 容易に肉を斬り骨を断つだろう。

「あと6体だそうです」

 カインは戦場の音をよく拾ってメリウスに報告してくれる。

「よし、さらに数を減らそう。突っかけるぞ」

 弓の攻撃にうまく進めず苛立っているゴブリンにメリウスはそのあたりの石を拾い上げ投げつける。
 完全に不意をつかれ頭部に命中すると、ぐずりと石がめり込み、ゴブリンは息絶えた。

「さすがはメリウス様!」

 意図と異なる結果になったことに、苦笑いを浮かべるメリウスであった。
 その後ゴブリンの集団は為す術もなく数を減らしていく。
 それでも狂ったように無謀な突進を続け、最後の一人は背後よりメリウスに首を刎ねられた。

「大丈夫です。敵の姿は無いようです」

 カインの見る先にはプリテがいる。メリウスが見上げるとブンブンと手を振って飛び跳ねている。

「カイン、プリテに村人たちに死体を村へ運ばせるように指示してくれ」

「わかったー。だそうです」

「はは、聞こえてるのか」

 メリウスは思った。プリテの悪口は決して言うまいと。

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