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チート仮面と世界を救え、元英雄の異世界サバイバル救国記

穴の空いた靴下

第四十二話 御神像

 洞窟は悲しみで包まれていた。
 メリウスはグッと天井を見上げると立ち上がる。

「帰ろう。いつまでもホルスをこんなところに寝かせておけない」

 全員、無言で立ち上がる。
 ホルスの遺体の状態は酷いが荷物から大きめの布を広げ遺体を包み込む。
 ホルスの愛用していた武器も、折れて柄の部分だけだが回収する。
 シャロンが大切に柄を抱きしめている。
 塩は回収しない。しかし、ゴブリンキングの魔石だけは持って帰らなければいけない。
 メリウスはホルスの遺体を魔石の前に横たわらせ、改めて報告をする。

「ホルスのお陰でゴブリンキングを倒せた。
 この魔石は、必ず村の発展のために利用すると約束する」

 メリウスが今まで見たことがないほどの巨大な魔石に手を触れる。

「うおっ!」

 魔石が強力な光を放つ。

「メリウス様!?」

 メリウスの額の宝石も輝き出す。
 そして二つの魔石はふわりと浮かび、ホルスの遺体の上に乗り、そして遺体を包む布の中に沈み込んでしまった。

「こ、これは……一体……」

 遺体を包んだ布はふわりと浮き、空中に停止する。
 そして再び光りだすとはらりと布が落ちる。
 ホルスの遺体は消え、煌々と輝く魔石が元の一つの形へと戻っていた。
 光り輝く魔石はふわふわと移動して、あのおぞましい儀式に使われていた像へと吸い込まれていく。

「何が起きているんだ……」

 メリウス達はその光景を見守るしかなかった。
 像へと光が吸い込まれると、像全体に光が広がっていく。
 石像が全て光りに包まれると急速に光が濃縮される。
 石像の姿が跡形もなく消え去り、その光も温かな光を放ちながらメリウスの元へと戻ってくる。

「御神像……」

 先程の巨大な石像が手のひらに乗るほどの小さな像へと変わっていた。
 ふわふわと浮かぶ像にメリウスが手を伸ばすとふっと光が消え像がメリウスの手に収まる。

 ズズズズズズズズ……

 それと同時に洞窟全体に嫌な振動が響き渡り、天井からもパラパラと小岩や砂が落ちてくる。

「急いで脱出するぞ!」

 いろいろと疑問点は多すぎるが、今は洞窟からの脱出を最優先する。
 疲れた身体にムチ打って、崩れ落ちる洞窟から全速力で脱出する。
 4人が脱出するのと同時に洞窟は完全に崩れ落ちてしまった。

「……強化に慣れていなかったら、今頃下敷きだったな……」

「ホルス……、メリウス様、その像は一体……」

「……ホルスはこれから村の守り神として生きていくんだよ」

 その言葉にシャロンは大粒の涙を流した。
 その後、隠していた荷車を回収して、外はすっかり暗くなっていたのでゆっくりと一晩休んだ。

 赤目たちがメリウス達を倒す最大のチャンスはこの日の夜だった。
 カインもプリテも、普段の警戒をすることも出来ずに、気を失ったように翌日まで寝てしまっていたからだ。

 しかし、一同は無事に朝日を迎える。
 それがホルスの加護なのかは誰も知ることがなかった。

 朝食を済ませ、村への道を戻る。
 激戦の影響は全員の身体に激しい筋肉痛、すでに肉離れと言ってもいいダメージを残していた。
 歩くごとに肉が痛み、骨が軋む。

「……激しい戦いだったからな……いてて……」

 全員が体中に薬草を貼ってトボトボと歩いている。

「よく見ると、私達の武器も、これは打直したほうが早いですね」

「プリテの剣もボロボロ……」

「朝調べたら、私の剣もこうなってました……」

 大剣は中程でボッキリと折れている。
 折れた剣先は荷車に乗せているが、剣としての寿命が終わっているのは間違いなかった。

「それにしても、あのゴブリンキングは何者だったのでしょう……」

「……ちょうど帰り道だし俺が見た物を話しておこう」

 メリウスはあの広場で見た映像を説明した。
  胸くそが悪くなる赤目達の行動はオブラートに包んだが……
 過去の世界で赤目たちがこの世界の人間を使って行っていた非道、その王があのゴブリンキングであったこと。
 そして神の助けを得てあの地に封印されていたこと。

「……そうだったんですか……ところでメリウス様、そのお話に私達丑人はでてこないのですか?」

「……人間だけだったな……」

「あら、どういうことなんでしょう?」

「うーん。わからない……」

「私達も子人ねびとであったのですが、このような人の姿に……
 メリウス様と出会ったおかげで……」

  過去と現在いまどれ程の時間がたっているのかもわからない。
  あの画像は遥か昔の話なのかもしれない。
 それでも、カイン達やシャロン達の変化、人化は、自分が関係しているのは間違いないだろうとメリウスは考えている。
 皆、気にもしていないが、自分が現れてから大きく変化が起きていることは流石に自覚していた。

「子人、牛人……東洋の十二支か……」

「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥ですか」

「知っているのか?」

「ええ、私達も聞いたことがあります。
 はるか古代世界は広大で12の国が12の神によって大切にされ栄えていた。
 それぞれの国はお互いに協力しあい足らぬを補い、足るを分けて幸せに暮らしていたそうです」

 カインの話にシャロンが続ける。

「しかし実際には世界は『果て』のある狭い世界でした。
 ただのおとぎ話だと思っていたのですが、人間であるメリウス様がいらして、私達も人成ひとなりを果たしました。
 メリウス様は我らの導き手なのでしょう」

「ちょ、ちょっとまってくれ、知らない話が立て続けで何が何だか……」

「大丈夫、メリウスはおのが意思に従いて、世界を渡り、つなぎ、育くめばいい」

 プリテがまるで別人かのように、スラスラとまるで歌のように言葉を繋いでいく。 
 メリウスは詳しい話を聞こうとするが、まぁいいじゃないですか、と誤魔化されてしまう。

 痛む身体を引きずって、ようやく村へと到着すると、メリウスも一旦はその疑問を極度の極度の疲弊と安堵感から忘れてしまっていた。



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