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チート仮面と世界を救え、元英雄の異世界サバイバル救国記

穴の空いた靴下

第四十六話 フー大老

「メリウス様、此処から先は以前『果て』でした」

「ありがとうシャロン、それじゃぁみんな、ここからは気をつけて進もう」

 今は荷車を牛に引かせている。
 丑国においての探索の結果、子国のビッグラットのように家畜化することが出来る動物が存在していた。
 牛は力も強く歩みはそこまで早くないがとても有益な動物だった。
 食べるとうまししな。とても。

「ぶも~~」

「おっと、考えを読まれた。気をつけよう。さ、進め!」

 新たな台地は鬱蒼とした森が広がっている。
 周囲を見渡す限りの木、林、森だ。

「ちょっと、変わった植物が多いな……お、こいつは水筒によし、食器によしのいい木だぞ」

 竹だ。

「おお、すごい量ですね。これは嬉しいですね」

「これだけ広大な森なら、いろんなものがありそうだなぁー」

 森はメリウスの予想以上にずっと続いていく、そして……

「メリウス様! この先で戦いの気配があります!」

「プリテ! 牛車を頼む! 行くぞカイン、シャロン!」

 すぐに飛び出して走り出す3人、プリテは周囲に気を配りながら牛車を進ませる。
 森の間にも今までと変わらず続いていく道を、空気を切り裂きながら疾走る。

 戦いの音が大きくなっていく、どうやら多数の敵を一人で相手しているようだった。
 さらに近づくと一人の老人を大きな熊の赤目が襲っていることがわかる。

「メリウス様! すぐに助けないと……」

「気がついたかカイン、あのじーさん凄いぞ」

「ふぁー、どうやってるんだろ?」

 素手で熊の爪による攻撃を見事に捌き、隙あらば凄まじい一撃を加えている。
 分厚い脂肪に包まれた熊でなければ悶絶は免れない重い攻撃だ。
 だが、今ひとつ決め手に欠ける。

「あのままじゃ倒せても大変だな、加勢するぞ」

「わかりました!」

 様子をうかがっていた藪から飛び出して武器を抜く。

「なんじゃ、仲間か、ならもっと早く助けんか!」

 よく見ると老人は獣人だった。
 戦う様は人間のように見えたが、年老いた虎人だった。

「失礼した。ご老体の戦いが見事で見惚れておりました」

「ホッホッホ。すまんが後は頼むぞ、もうクタクタじゃわい」

 敵の目の前でありながら近くの石に腰掛ける、素晴らしい胆力だと見えた。

【ごぉあああああ!!】

 いきなり現れた3人に熊が飛び込んでくる。
 その攻撃力、素早さ、目の前に対峙してみて改めてこの赤目が強力な相手であること、その熊と対峙していた老人の力量が測れた。

「ふむ、この巨体……カイン、シャロン俺に任せてくれ!」

 メリウスは手に持つ刀に力を込める。
 丑人との縁によって新たに手に入れた力、刀は光り輝き巨大な戦斧へと姿を変える。

「オラァ!!」

 巨大な戦斧を振るう。大型の熊でもその一撃でいとも簡単にその腕が弾け飛ぶ。

「……ホルスが如く力強い……大事に使わせてもらう」

 絶叫している熊の首を簡単に落とす。

「ほほう、見事な腕前じゃな……しかもその武器は珍しいのぉ……」

「ご老人、怪我はありませんか?」

「フォッフォッフォ! 怪我はないが、若いのにきちんとしておるな。
 そうじゃの、腹は減った」

「わかりました。プリテ、急いでいいぞ」

 カインが指示するとすぐにプリテが到着する。
 ちょうどいいのでその場で休憩にした。
 手早く食事の準備をして虎人の老人と一緒に卓を囲む。

「おっほー! これは旨い!
 これほど旨いものは食べたこともない!!
 いやー旨い!!」

 ガツガツと美味しそうに食事を平らげていく。

「ご老体、私はメリウス。この世界を旅するものです」

「そうかそうか、ムシャムシャ、儂は、フーと申すヌグッ……喉に……」

「フー殿こちらを」

 カインが素早くコップに水を入れて手渡す。
 大急ぎでそれで流し込むフー。

「ぷはーーーー死ぬかと思った。若いの、気が利く、それに良い耳を持っているな」

「恐れ入ります」

「ふむふむ、事情は色々あるだろうが、村のものが心配してるじゃろうて、お主らも一緒に行くじゃろ?」

「はい、そうさせていただけるとありがたいです」

「メリウス殿でしたな。
 可愛い娘っ子二人も連れて、さらにはこのような色男……
 英雄色を好むってことじゃな、フォッフォッフォ!」

「ご、誤解です……」

「ええんじゃええんじゃ、若いものはそれくらいの気概がないとな!」

「何の話でしょうかメリウス様?」

「シャロンは知らなくていいから!」

 その後もフーにおちょくられながら一緒に道を進むメリウス達。
 しばらく牛車を走らせると森の中が少し開かれ小さな村が見えてくる。

「フー大老! ご無事でしたか?」

「おーー、出向かえご苦労じゃのファン。こちらのご人達に助けてもらったのじゃ!」

「フー大老でも危険な妖魔どもでしたか……なんということだ……」

「うむ、まぁお主は馬鹿みたいに真面目だから話すと長くなる。
 とりあえず恩人方は我が家でもてなすぞ」

「分かりました。村の者にもお客人のことを伝えておきます」

「よろしく頼むぞ」

 少し若く見えた寅人は勢い良く村へと駆けていく。

「……村を見ると少々驚かれると思います。
 あの子、ファンが我が村で最も若い村人になりますじゃ」

 陽気なフーが少し暗い表情をする。

「まぁ、詳しくは家で話そう。村に入ってすぐ右にあるのが我家じゃ」

 村を囲う少し頼りない柵を越えるとフーの言う通り右手に建物が見える。
 丸太を組んだログハウス、比較的しっかりとした家が立っていた。
 村の中も建物はそれなりの木製住居だ。

「立派な家ですね」

「見た目はそうじゃろうが、もうすでに老朽化しておる。
 この村の現状と同じじゃな」

 注意してみると、確かにどの建物も時代を感じさせる。

「まぁ座ってくれ、注意せんと椅子の足が折れるかもしれんがな」

 時既に遅し、メリウスが軽く体重をかけると椅子の脚は静かに折れてしまった。
 身構えていたので転倒は免れた。
 メリウスは牛車から椅子を人数分運んで家の中に配置する。

「おお、若く強いいい木材じゃな……」

 その出来にフーも感心してくれた。

「この村も昔は皆若く力もあってな、その自慢の爪で丸太を切り出し、家を作り家具を作った。
 それが今や年寄りだらけ、儂も妖魔どもから村を守るために頑張ってきたが……
 今日のあの妖魔、奴程度に苦戦してしまう……」

「妖魔というとあの赤い目の……」

「そうじゃ、我らは妖魔と呼んでいる。
 お主らも知っておるのか?」

 それからメリウスは自分たちの今までの歩みを話す。
 その言葉にフーは驚くが同時に安堵のため息をつく。

「そうか、ようやく儂も休めるな……」










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