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チート仮面と世界を救え、元英雄の異世界サバイバル救国記

穴の空いた靴下

第四十九話 ベビーラッシュ

「フー大老! おめでとうございます!」

「おお、メリウス達か!」

「メリウス様いらっしゃいませ」

「きゃーかわいいー」「かわいいねー」

 プリテとシャロンは五つ子の赤子に一発でノックダウンだ。

「すみません、俺、お二人がそのご夫婦になられたことさえ知らず……」

「わ、私が! ずっとお慕いしていたので、固辞されるフー様に無理やり迫ったのです……」

 真っ赤になりながらフーを庇うファン、その肩に手を乗せてフーも語りだす。

「いや、儂も自分に素直になっただけじゃ。
 今ではファンとこの子達のためにもっともっと生きようと燃えてるところじゃ!」

「ラブラブですねフー大老、いや、もうフー様とお呼びせねばいけませんね。
 いやいやお若いお若い。そしてこちらは祝いの品、赤子5人ということで各種布類を用いた肌着などです。たぶん成長はお早いでしょうから長く使えるように工夫して作ってあります」

 カインが結構鋭くツッコミを入れていく。

「おお、気を使わせて悪いな。確かに子たちは日増しにすくすく育っておる。
 儂も安心してお主達に修行をつけてやれる。時間があったときにはいつでも言うが良い」

「でも、村にこの鳴き声が響く日が来るとは、思いませんでした。
 よかった……私が最後の寅人になると心の奥底で覚悟しておりました」

「確かに、皆さんお若くなりましたよね……」

 人化しみなぎったガイラー村の皆さんは、その力を子孫繁栄のためにも振るったようで、いまでは村の中をこどもが走り回っている。多産早熟の加護はばっちりと働いていた。

「そういえばプリテ、この村の巫女ってどなたなの?」

「メリウス、スケベ……」

「いやいや、そういう意味で言ったんじゃない!」

「まずは御神像を取り戻すのが先、でもまだときじゃない」

「そうか……」

 寅の国は豊富な森林資源と鉱山資源にあふれていた。
 国土の殆どが森で覆われており、山岳地帯なども多かった。
 国土を分断する大きな河が存在しており、下流は山岳で囲まれた崖を形成して『果て』へとその水は落ちていっている。
 怪しい点はその崖の中腹に存在していた。まるで崖を利用した天然の砦のようになっている。
 山岳部に開いた入り口には赤目が警戒していたのでこの地の赤目の拠点なのは間違い無さそうだった。

 しかし、プリテの助言もあり、ガイラー村の発展に全力を向けるメリウス一同。
 すでに丑国との交易も始めていた。

「やっぱり牛車があると世界が変わりますね!」

「輸送量が桁違いだ、子国も新しい村も順調だそうだ」

「みんな元気でよかった」

「ウチの村も村分けするみたいですね。帰ったらどれだけ変わっているか楽しみです!」

 どんどん世界は動いている。

 子どもたちもメリウスとフーの鍛錬を周りで楽しそうに見学している。

「ふぉっふぉっふぉ、無駄が多い。ほれ」

 簡単に倒されてしまうメリウスとその下敷きになるカイン。

「男どもは動きが硬いんじゃ、プリテ嬢とシャロン嬢は既に1対1で儂とやりあっとるぞ。
 闘気の流れがとろいんじゃよなー」

「そーだよにーちゃん達こーだよこー!」

 子どもたちは簡単に闘気を使ってお手玉をしたり色んな形にしてみたりする。

「これが若さか……」

「魔力の流れと混ざるんですよね……」

「混ぜちゃいなよ」

「プリテ……」

「別々に出来ないなら混ぜちゃえばいい。
 どうせ外に出せるのは闘気だけ、こんな感じで」

 プリテは魔力を巡らせ身体強化しつつ闘気を全身にめぐらしていく。

「か、簡単に言うけど、回る方向が逆なんだよ!」

 右手は右回しで四角形、左手は左回しで三角形を描き続けろと言われているのに近い。
 メリウスとカインはどうしても苦手だった。
 それでも毎日の鍛錬を欠かさずに行うことで少しづつスムーズに闘気を用いた戦闘が出来るようになっていく。

「でりゃ!」

「お! お見事ですねメリウス殿」

 ようやく組手にてフーから有効打を獲ることが出来るようになった頃、手に持つ武器にも闘気をまとえるようになってきた。
 その効果は絶大だった。
 メリウスの武器は特殊すぎるので威力の上昇程度だが、闘気を帯びた武具は非常に壊れにくい。
 前回の戦いにおいて武器がぼろぼろになって危なかった皆にとってその意義は大きい。

「寅国の鉱石で合金製になって武具もだいぶ強力になってきましたし、さらに闘気を使えばあの時のようなことを……」

「カイン……」

「もう誰も傷つけません」

 合金製になって重量が増大した巨大な両手剣を、闘気をまとって軽々と振り回すシャロン。
 鍛錬で最もその力を伸ばしたのがシャロンだ。
 魔力総量だと4人の中では一番少ないので、この闘気はまさに天啓だったのだろう。

「よっほっは!」

「まだまだぁ! まったくひょうひょうとえげつない戦い方を……」

 無手の戦闘で強かったのはプリテだ。今ではフーもたまに危ない時があるほどだ。
 メリウスとカインはようやく実践における闘気による武器の強化が実用的になったぐらい。
 メリウスは未だに魔力による強化のほうが得意だ。

「ふむふむ、残念ながら儂の奥義を継げるものはおらぬな、まぁ村の子供共は、筋が良いのもおる」

 フーの体術の奥義、『剄』は結局誰も再現できなかった……
 こうして修業の日々、発展の日々は過ぎていく。
 赤目は散発的に村の近くに現れてくるが、メリウスたちや訓練された村人たちに狩られていく。

 早熟の加護によって2年もすれば青年と変わらない体つきになる。
 もちろん中身はやや幼いが、それでも2才児と比べれば天と地ほどの差だ。
 村を守る未来ある若人たちは立派に成長していた。

「メリウス。刻は来た」

 いつもと変わらぬ普通の一日の始まりは、プリテの常ならざる言葉で始まった。


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