チート仮面と世界を救え、元英雄の異世界サバイバル救国記
第五十三話 キマイラ
ぬちゃり……
珠が音もなく割れ、中から動物の足が嫌な音を立てながら歩み始める。
産まれたばかりでヌラヌラと光を放つ粘液に包まれている。
その姿は異型であった。
虎の顔、身体は牛か、足は前の手が虎、後ろは馬、尾には蛇が鎌首をもたげている。
所謂キマイラと呼ばれる動物の複合体、その瞳が真っ赤に光り輝いている。
「まさに妖魔……異形の獣じゃな」
「ここにいた全ての赤目の集合体だ。皆気を付けてかかれ」
産まれたばかりの獣だったが、すぐにメリウス達に敵意、殺意をむき出しで飛びかかってくる。
よく見れば後脚の太もも部分は馬か鹿のようにはちきれそうだが、足先は虎のように大地に爪を掛け力強く蹴り出している。それらが合わさって猛烈な飛び出しとスピードを得ていた。
メリウスは飛び込んできたキマイラに大斧をカウンター気味に合わせる。
ガギィ!
力強い一撃はキマイラの逞しい前腕に備える巨大な爪に阻まれる。
「一筋縄では行かないようじゃの」
フーはゆらりゆらりと身体を揺らしながらキマイラが振るう爪の攻撃を捌きながら肉薄する。
「フンッ!」
恐ろしい噛みつきを紙一重で捌き、体の横へと入り込むことに成功すると、フーの拳は深々と胸壁にめり込む。
まるで遅れて大地を踏みしめる振動が伝わってくるような強力な一撃。
キマイラは悶絶するほどの強大な一撃を喰らいながらも身じろぎ一つせずに爪を使ってフーを薙ぎ払う。
すでにフーは身を翻してメリウス達の場へと戻ってきていた。
「ふむ、ゴムのように力強い肉が覆っておる。これは骨が折れるな」
キマイラは容赦なく洞窟内を飛び回ってメリウス達に襲い掛かってくる。
プリテも弓を使う余裕なんてなく短剣を構えて攻撃に備えている。
皆闘気で身と武器を包み込んでおり、激しく爪と打ち合っても武器が直ぐに駄目にならなかったことは朗報だった。
「闘気がなければ危なかったですね。やはり武器の消耗は激しそうですね!」
なるべく爪と打ち合わせるのはメリウスの武器以外は避けたほうが無難だった。
メリウスは大斧から刀に武器を変えて戦っている。
爪と牙による防御が思いの外堅牢で、スピードを重視していた。
的確に攻撃を叩き込んでいるのはフーで、その隙に少しづつ皆が攻撃を浴びせられるようになっている。
【ガァオ!】
「少し慣れてきたわい」
振り下ろされる豪腕と爪の内側にまるで散歩するように入り込み、腕を掴んでその力を利用してキマイラの巨体を空に舞わせる。
達人の技を遺憾なく魅せてくれる。
他のメンバーは戦いながら目で見てその技術を学ぼうと必死になる。
巨体であるからこそ落下するエネルギーも大きい、顔から鈍い音を立てて地面に叩きつけられた場所に震脚による踏み抜きと、全く逃げ場のない『剄』の一撃が地面に転がる身体に叩き込まれる。
【ゴボァアアア!】
さすがのキマイラも血を吐いて狂騒状態でゴロゴロと体勢を立て直す。
「頑丈なやつじゃな……」
「フー大老、お一人で全て終わらせないでくださいね」
「僕達もいますから!」
「フーじーちゃん凄い」
「プリテちゃん! 私達も!」
「練習の成果をみせる!」
プリテとシャロンがキマイラに飛び込んでいく。
爪が空を斬り、体当たりは虚しく壁に当たり、尾の蛇はシャーシャーと二人を威嚇するも、あっという間に間合いへと入り込む。
フーから学んだ歩法によって敵の攻撃を最小の動きで避ける事で、するするーっと間合いに入り込む技はプリテがピカイチだ。
シャロンは歩法自体に問題はないが、邪魔なものが二つぶら下がっているせいでやや劣る。
メリウスとカインは歩法で避けるよりも相手の攻撃を捌き体制を崩し活路を見出す事を得意とする。
特にカインは素晴らしい才を秘めていたらしく、後の先を取る戦闘スタイルを確立しつつある。
「シャロンちゃん! 行くよ!」
「はい!!」
「浮山双連脚!!」
プリテの長い足が顎、みぞおちを蹴り上げキマイラの巨体が浮き上がる。
「丸太崩し大旋風!!」
空中でシャルテがキマイラの身体に斧を突き立てそのままグルングルンと振り回す、高速で回転する速度のままプリテの方に放り投げる。
「天落白虎双撃!」
凄まじい速度で飛んでくるキマイラを双手の打ち下ろしで地面に叩きつける。
「大回転斬り!!」
空中から勢いをつけて体ごと回転し、その落下エネルギーと回転エネルギーの全てを大斧に乗せて、地面に叩きつけられたキマイラに振り下ろす。
ボゴォ!!
大地がそのエネルギーを受けてクレーター上に凹むほどの衝撃が洞窟に響き渡る……
「あの二人……えげつないのぉ……」
その連携技の威力にフーも軽く引いてしまう。
「「イエーイ!」」
プリテとシャロンはタッグ技がうまくいってハイタッチを交わしている。
のどかな風景と対象的にキマイラはぐちゃぐちゃになった腹部の傷を、グズグズと謎の液体が一生懸命修復している。
「今だ!」
二人が作ってくれたチャンスを最大限に活かしていく。
メリウスは再び武器を戦斧へと変化させ、全力を込めた攻撃を損壊部分にねじ込んでいく、オーラで防ごうとするオーラごとぶった斬る勢いで攻撃を浴びせている。
フーは激しく動く後脚に『剄』による一撃を加える、ぼぎっ、という嫌な音が響きあらぬ方向に歪んだ脚がブラブラと落ちる。
カインはメリウスに食いかかろうとする頭部に牽制を仕掛け、ついにはその眼を貫く。
プリテとシャロンも自身が持つ強力な技を惜しみなく叩き込んでいく。
「見えた!」
激しい攻撃に晒された胴体から巨大な魔石が顕になる。
「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」
魔力による身体強化、闘気による外面強化を最大限に高め、メリウスは戦斧を叩きつける。
キィン
甲高い音共に、魔石は綺麗に真っ二つになる。
【ギャン!】
キマイラは一声叫び声をあげビクリと体を震わせると四肢から力が抜けだようにばたりと横たわり……
静かに真っ白な塩へと変わっていく。
禍々しかった生前から純白の塩になる過程は美しささえ感じてしまう。
尾の先、爪の先まで塩に変化し、戦いが終わったことを告げた。
珠が音もなく割れ、中から動物の足が嫌な音を立てながら歩み始める。
産まれたばかりでヌラヌラと光を放つ粘液に包まれている。
その姿は異型であった。
虎の顔、身体は牛か、足は前の手が虎、後ろは馬、尾には蛇が鎌首をもたげている。
所謂キマイラと呼ばれる動物の複合体、その瞳が真っ赤に光り輝いている。
「まさに妖魔……異形の獣じゃな」
「ここにいた全ての赤目の集合体だ。皆気を付けてかかれ」
産まれたばかりの獣だったが、すぐにメリウス達に敵意、殺意をむき出しで飛びかかってくる。
よく見れば後脚の太もも部分は馬か鹿のようにはちきれそうだが、足先は虎のように大地に爪を掛け力強く蹴り出している。それらが合わさって猛烈な飛び出しとスピードを得ていた。
メリウスは飛び込んできたキマイラに大斧をカウンター気味に合わせる。
ガギィ!
力強い一撃はキマイラの逞しい前腕に備える巨大な爪に阻まれる。
「一筋縄では行かないようじゃの」
フーはゆらりゆらりと身体を揺らしながらキマイラが振るう爪の攻撃を捌きながら肉薄する。
「フンッ!」
恐ろしい噛みつきを紙一重で捌き、体の横へと入り込むことに成功すると、フーの拳は深々と胸壁にめり込む。
まるで遅れて大地を踏みしめる振動が伝わってくるような強力な一撃。
キマイラは悶絶するほどの強大な一撃を喰らいながらも身じろぎ一つせずに爪を使ってフーを薙ぎ払う。
すでにフーは身を翻してメリウス達の場へと戻ってきていた。
「ふむ、ゴムのように力強い肉が覆っておる。これは骨が折れるな」
キマイラは容赦なく洞窟内を飛び回ってメリウス達に襲い掛かってくる。
プリテも弓を使う余裕なんてなく短剣を構えて攻撃に備えている。
皆闘気で身と武器を包み込んでおり、激しく爪と打ち合っても武器が直ぐに駄目にならなかったことは朗報だった。
「闘気がなければ危なかったですね。やはり武器の消耗は激しそうですね!」
なるべく爪と打ち合わせるのはメリウスの武器以外は避けたほうが無難だった。
メリウスは大斧から刀に武器を変えて戦っている。
爪と牙による防御が思いの外堅牢で、スピードを重視していた。
的確に攻撃を叩き込んでいるのはフーで、その隙に少しづつ皆が攻撃を浴びせられるようになっている。
【ガァオ!】
「少し慣れてきたわい」
振り下ろされる豪腕と爪の内側にまるで散歩するように入り込み、腕を掴んでその力を利用してキマイラの巨体を空に舞わせる。
達人の技を遺憾なく魅せてくれる。
他のメンバーは戦いながら目で見てその技術を学ぼうと必死になる。
巨体であるからこそ落下するエネルギーも大きい、顔から鈍い音を立てて地面に叩きつけられた場所に震脚による踏み抜きと、全く逃げ場のない『剄』の一撃が地面に転がる身体に叩き込まれる。
【ゴボァアアア!】
さすがのキマイラも血を吐いて狂騒状態でゴロゴロと体勢を立て直す。
「頑丈なやつじゃな……」
「フー大老、お一人で全て終わらせないでくださいね」
「僕達もいますから!」
「フーじーちゃん凄い」
「プリテちゃん! 私達も!」
「練習の成果をみせる!」
プリテとシャロンがキマイラに飛び込んでいく。
爪が空を斬り、体当たりは虚しく壁に当たり、尾の蛇はシャーシャーと二人を威嚇するも、あっという間に間合いへと入り込む。
フーから学んだ歩法によって敵の攻撃を最小の動きで避ける事で、するするーっと間合いに入り込む技はプリテがピカイチだ。
シャロンは歩法自体に問題はないが、邪魔なものが二つぶら下がっているせいでやや劣る。
メリウスとカインは歩法で避けるよりも相手の攻撃を捌き体制を崩し活路を見出す事を得意とする。
特にカインは素晴らしい才を秘めていたらしく、後の先を取る戦闘スタイルを確立しつつある。
「シャロンちゃん! 行くよ!」
「はい!!」
「浮山双連脚!!」
プリテの長い足が顎、みぞおちを蹴り上げキマイラの巨体が浮き上がる。
「丸太崩し大旋風!!」
空中でシャルテがキマイラの身体に斧を突き立てそのままグルングルンと振り回す、高速で回転する速度のままプリテの方に放り投げる。
「天落白虎双撃!」
凄まじい速度で飛んでくるキマイラを双手の打ち下ろしで地面に叩きつける。
「大回転斬り!!」
空中から勢いをつけて体ごと回転し、その落下エネルギーと回転エネルギーの全てを大斧に乗せて、地面に叩きつけられたキマイラに振り下ろす。
ボゴォ!!
大地がそのエネルギーを受けてクレーター上に凹むほどの衝撃が洞窟に響き渡る……
「あの二人……えげつないのぉ……」
その連携技の威力にフーも軽く引いてしまう。
「「イエーイ!」」
プリテとシャロンはタッグ技がうまくいってハイタッチを交わしている。
のどかな風景と対象的にキマイラはぐちゃぐちゃになった腹部の傷を、グズグズと謎の液体が一生懸命修復している。
「今だ!」
二人が作ってくれたチャンスを最大限に活かしていく。
メリウスは再び武器を戦斧へと変化させ、全力を込めた攻撃を損壊部分にねじ込んでいく、オーラで防ごうとするオーラごとぶった斬る勢いで攻撃を浴びせている。
フーは激しく動く後脚に『剄』による一撃を加える、ぼぎっ、という嫌な音が響きあらぬ方向に歪んだ脚がブラブラと落ちる。
カインはメリウスに食いかかろうとする頭部に牽制を仕掛け、ついにはその眼を貫く。
プリテとシャロンも自身が持つ強力な技を惜しみなく叩き込んでいく。
「見えた!」
激しい攻撃に晒された胴体から巨大な魔石が顕になる。
「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」
魔力による身体強化、闘気による外面強化を最大限に高め、メリウスは戦斧を叩きつける。
キィン
甲高い音共に、魔石は綺麗に真っ二つになる。
【ギャン!】
キマイラは一声叫び声をあげビクリと体を震わせると四肢から力が抜けだようにばたりと横たわり……
静かに真っ白な塩へと変わっていく。
禍々しかった生前から純白の塩になる過程は美しささえ感じてしまう。
尾の先、爪の先まで塩に変化し、戦いが終わったことを告げた。
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