チート仮面と世界を救え、元英雄の異世界サバイバル救国記

穴の空いた靴下

第六十二話 リュー

「やっぱり戦ってるね!」

「聞き慣れたうっとおしい声だな!」

 現場に近くなるといつも上空で騒いでいる奴らの鳴き声が響いている。
 きっと周囲の赤目達も寄ってくるだろう。

「メリウスいた!」

 プリテがいち早く戦っている人物を見つけて援護に入る。
 全くの不意打ちなので見事に空を飛んでいる鳥人間型赤目を、あっという間に撃ち落とす。
 地上部ではオークとコボルトの混成部隊が戦闘を行っている。
 メリウス、カイン、フーはそのスピードのまま戦闘の間に割って入る。

「ご助力いたそう」

「すまない、助かる!」

「けが人はいるか?」

「二人、軽症だ」

 凛とした女性が答えてくるれる。
 メリウスが指示せずともすぐにカインが怪我の様子を把握しに行く。
 メリウスとフーは一気にオークとコボルトを殲滅しにかかる。
 すでにプリテとシャロンの矢が数体の敵を射抜いている。
 戦闘は一瞬で、そして一方的に終わる。

「ふぅ、最初に上の落とせればこれくらいで終わるんだよなー」

「不意打ちできればな……」

「助かった。皆さんは見たところこのあたりの人ではないみたいだが……」

 代表して話しかけてきたのは襲われていた集団の凛とした女性。
 今までの獣人からするとだいぶ人に近いが、腕などは鱗を持ち、美しい黒髪の隙間から角がみえる。
 背が高く、スラリとしたスタイルはその女性の凛とした声とよく合っていた。
 鋭く知性あふれる眼光に、全体として薄い顔つき、クール系美人のお手本のような見た目だ。

「すまない、助けてもらったのに名乗っていなかったな、私はリュー。
 この先のドラグ村の住人だ。あなた達は?」

「私はメリウス、故あって各地の村を巡って赤目を退治することを使命としている。
 もし手助けできることがあったら、なんでも言って欲しい」

「メリウス様ー、おまたせしました~」「おまたせしましたー」

 ちょうど牛車も合流する。

「な、なにあの可愛い生き物!!」

「え?」

「い、いや。失礼。お仲間かな?」

 少女のような声に驚いたメリウスだったが、仲間を紹介する。

「ええ、一緒に旅をしているアン、ドワ、あちらがプリテ、シャロン、そしてカインとフーです」

「アン……ドワ……そ、そうでしたか。こんなところで立ち話も何ですから、村へ行きましょう。
 救ってもらったお礼もしたい」

「お礼はお気になさらず。ただ村へは同行していただけると助かります」

「メリウス、魔石も取れたよー」

「な、魔石!? そんなにしっかりとしたものをどうやって?」

「赤目からぐいっと、取ってきた!」

「そうか! あれは奴らの体内にあったのか……なるほど……」

「リューさん?」

「ああ、詳しいことは村で話そう、あ、あ、アンちゃんにど、ドワちゃんも来るんですよな?」

「来るんですよね? え、ええ。仲間ですから一緒に行きます。
 皆さんも牛車に乗ってください」

「は、ふぁい!」

 挙動不審なリューはすごい速さで牛車に乗り込み最前列で食い入るように二人を見つめていた。

 幸いけが人も軽症で簡単な処置をすればもう普通に歩けるようになった。
 リューは魔石を用いた処置にも飛んできて食い入るように見つめていた。
 見た目通りのクールビューティではなさそうな、少し変わった人かもしれない。メリウスは薄々感じていた。

「メリウス殿は果ての先から来たのか……なるほど、我が村に伝わっている話でも昔は果てはなく大きな国だったと言っている。そして様々な人々が行き交う賑やかな地であったと……」

「それが今じゃあいつらからコソコソ隠れて日々の生活にも苦労して……」

 村人たちは悔しそうにしていた。
 今日も村から少し離れたところまで食料の調達に出てきていたところを見つかってしまったそうだ。

「昔は山へ逃げ込んですぐに撒けたんだけど、最近は上から騒いで他のを呼ぶなんて事をやってきて……」

「それでも、メリウス殿達に聞いた魔石を安定して手に入れる方法があれば、私の研究も捗る。
 あいつらに怯えないで済むようにしてみせる!」

「リューさんは魔石で何を研究されてるんですか?」

「魔石を利用した魔道具と、魔導回路について研究している」

「魔導回路! もしかして複数の魔石を組み合わせて……」

「そう、属性ごとの特製を組み合わせてより強い力を得る!
 それこそが魔導回路の真髄だ! 具体的に言えば火の魔石と風の魔石を組み合わせて……」

 その話はとっても早口で止まることもなく村に着くまで続いた。

「リューさん、あれが村ですか?」

「えっ、あっ、はい……もしかして……私、話に夢中になってました?」

「はは、とても勉強になりました……はは」

「す、す、すみません……」

 こういうクールにみえる女性が耳まで真っ赤にしているのはなかなか良いものだ。それにしても話が長かった。メリウスはそう思わずにはいられなかった。
 なぜこの人は少し顔を上気させながら、魔石の持つ輝きや組み合わせることで広がる無限の世界の可能性を語り続けられるのか、ほんの少しも理解できなかった……

「ここが私達の村ドラグ村だ」

 リュー達の村は少し変わった作りをしていた。
 村の中を塹壕が張り巡らされており、半地下の空間に住居スペースが作られている。
 村の周囲には濠が作られており、地上と空からの襲来に対応できるようになっていた。
 今までの国に比べると、防衛に対して積極的な作りがされているようにメリアスたちには映る。

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