チート仮面と世界を救え、元英雄の異世界サバイバル救国記

穴の空いた靴下

第六十五話 生存競争

「さて、皆気を付けていこう!」

「メリウス殿、属性変化はきちんと準備できていますか?」

「ああ、大丈夫。ちゃんと覚えているよ」

 メリウスの持つ特殊な武器の属性を変えるのには苦労した。
 本体の武器には干渉できなかったために、武器に送る魔力を変化させてみた。
 グローブ型の魔道具に魔石をはめることで送り込む魔力に属性を付与する。
 そうすることで属性を反映する事が可能になったのだ。
 闘気で包み込んでも混ざりあってより強力な属性攻撃も可能になり、強力な力になっている。

 腰の部分につけた魔道具で足元を照らす。
 これも光の魔石を利用した道具の一つで、松明のように手を使用せずに済むので便利だ。

 卯の国赤目の本拠地は果てから伸びる谷の中腹の洞窟だった。
 赤目が出てくる時は数匹集団で出てきて、場合によってはその集団同士が合流して移動を始めたりする。
 組織的な行動を取るので注意が必要だ。
 そしてもう一つ大事な事は空を飛ぶ敵は、こちらからは発生していない。
 辰の国から飛来するものと合流しているという事実だった。

「国を超えて赤目同士が連絡を取り合う手段がある可能性か……」

「集団行動取っていたので意思疎通は出来るんでしょうけど……」

「連絡手段を持つとしても随分と雑じゃな、戦っておる時なぞ声などを頼りにしておるようじゃしな」

「本拠地同士だけの特殊な連絡手段でもあるのですかね? 魔石ですかね? 魔石?」

「魔石による通信は光信号通信しか今のところないです」「ないです」

「赤目が何者なのかもわかってませんもんね……」

「シャロンの言う通り、議論しても無駄。すすもう」

 プリテは見張りがいなかったので自慢の弓が披露できなくてご機嫌が斜めだ。
 それでも洞窟内の探索は慎重に丁寧に進んでいく。
 装備が良くなっても慢心できるほどの余裕はない。

「メリウス、この先に集団がいる」

 曲がり角でプリテが後方のメンバーに注意をうながす。
 洞窟内は暗く狭く、満足に戦えるスペースは少ない。
 敵を発見したらコンパクトに、そしてスピーディに排除する必要がある。
 メリウスも寅の国で手に入れた爪状の武器で戦っている。
 すっと背後に回って喉元を掻っ切ると静かに敵を葬ることが出来るのでおすすめだ。
 今回も新型魔道具で反対側の通路を土壁で一瞬で塞ぎ、その場にいた赤目にメリウス達が襲いかかる。
 突然の来襲に満足な対応ができないまま、あるものは首を折られ、あるものは喉を割かれ、あるものは胸を貫かれ絶命する。
 ある程度の物音は土壁が防いでくれて、敵が集まることも防いでいる。
 最近では敵から魔石を取るのはリューとアンドワの仕事になっている。
 サイズのいい魔石が取れるとせっかくの美人が台無しの笑顔でニヤニヤと魔石を見つめているリューが完成する。
 未だに塩は貴重なので可能な限り回収していく。
 人が増えたのでこのあたりがスムーズになったのはいいことだった。

「これじゃぁどっちが悪者かわからないですね……」

「最近はすっかり赤目の数も減ってるからね、それでも俺達か赤目かどっちが生き残ろうかという戦いだから」

 その後も散発的に敵と戦いながら洞窟を奥へ奥へと進んでいく。
 崖の内部に自然にできた洞窟は上ったり下ったり複雑な構造になっている。
 きちんとマッピングをしながら進んできているが、一度でも自分の居場所を見失うとかなり危険なことになることは容易に予想ができる。

「ん……風が……」

 洞窟内に薄ら寒い風を感じた。
 結構な距離を歩いてきているので深部が近いのかもしれない。
 さらに歩いていくと水が流れる音も聞こえてくる。

「崖の底にまで来たのかもしれんな……」

「水の匂い……」「土の匂い……それと……」

「血の匂い……」

 水の気配がじっとりとメンバーたちに絡みついてくるのと同時に、血と腐肉の香りが微かに香ってくる。
 メリウス達の脳裏に赤目達が生まれる凄惨な儀式が思い起こされる。

「たぶん、近い。気を付けて進もう」

 メリウスの予感通り、暫く進むと死臭が色濃くはびこる空間に出る。
 洞窟内でも大きな空洞、中央にはウサギの像、特に目が歪なほど巨大で鈍く赤く輝いている。
 赤目のオーガ達が、を棍棒で砕いてその瞳に注ぎ込んでいる。
 ある程度の量が注ぎ込まれると反対の瞳から真っ赤な涙のしずくが溢れる。
 グズグズとした肉汁のような涙はやがて数体の赤目の魔物へと変化していく。

「間違いない、赤目工場だ……」

 あの、なにかを想像するのは止めておく。

「皆、いいな」

 アン、ドワ、リューは魔道具を握りしめる。
 激しい戦いになるが、邪魔にならないための準備はしっかりとしてきている。
 即座に塹壕型の防衛設備を作る。
 3人が飛び込んで戦闘補助の準備を行う。
 プリテとシャロンが戦闘の狼煙を上げる、室内にいるオーガの頭が二人の弓に文字通り爆ぜる。
 これも魔道具による補助によってなせる威力だ。
 周囲にいたコボルトやゴブリンもキョロキョロと周囲を見渡す。
 すぐに室内にメリウスとカイン、フーが飛び込んで打ち倒していく。
 戦闘の狼煙ですでに一方的な展開だがメリウス達に油断はない。

「そろそろ、来るんだろうな……」

「そうじゃな……」

 二人のつぶやきに反応するように、ウサギの像の足元から異臭を放つゲル状の物体が御神像を包み込んでいく。

 ボスのお出ましだ。










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