ハガルの雨
梔子と花
 そっと吹く風
 ゆらゆらと揺れた髪
 暖かい空気に包まれてゆく
 
 それは懐かしい何かを感じさせた
 いつか嗅いだようなその匂いに頭を抱え
 いつか感じたようなその風に手を差し出す
 いなくならないでって 手を組んだ
 次に、なくなれって 手に力を込めた
 何か変わるかな 何かを変えられるかな
 握った手のひらに、潰れて原型を留めないくしゃくしゃの花が一つ
 花の潰れた苦くて甘い匂いが鼻につく
 手を解いても手のひらから離れないそれは
 とっくに忘れたと思っていた思い出さえ、鮮明に思い出させたんだ
 いま、私はここにいる
 過去の私もいまここに漂ってる
 過去の君はここに漂ってる
 君はここにいない
 それでいい
 そう思えた
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