冒険者は最強職ですよ?

夏夜弘

冒険者は最強職ですよ? 3

エンドとジンが対峙し、お互いに緊張が走る。泣いても笑ってもこれが最後の闘いになる。

 もし、ここで死んだのなら……。

『死なない。ジンは絶対に死なないわ!』

 心を読んだのか、女神が頭の中で叫ぶ。

『死なない。だって、ここであいつに勝って、みんなと暮らすんでしょ? なら、最初からそんな弱気ではダメよ!』

 弱気? そうかもしれない。ユニークスキルを使った状態でも、あいつに勝てる気がしない。でもそれじゃダメなんだよな。

『そうよ。ダメなの。もし弱気で闘うっていうなら、私が貴方を殺してもいい』

 …………悪かったよ。俺が弱気になってた。

 二回頬を叩き、気合を入れる。その行動に、牢屋で見ていたレッド達は不思議そうな顔でこちらを見ている。

『頑張って、ジン』

 その言葉に、励まされる。

「やるか」

 どちらも動こうとはしていなかった時間は、もう終わる。最初に仕掛けるのはジンだ。

 最速でエンドに接近し、強烈なキックを右肋目掛けて放つ。が、それは呆気なく防がれる。

 エンドは、一歩も動いてはいない。

『いいキックだなぁ?』

 カウンターを狙ったエンドの攻撃を、ジンはギリギリで避ける。

「クッ……」

『間一髪ってところか。なら、これならどうだ?』

 次は、エンドから仕掛ける。無数の殴打が、ジンを襲う。その攻撃を、掠られながらも間一髪で避けていく。

 一瞬攻撃が途絶え、その隙を狙ってジンは、エンドの腹部に爆裂魔法を放つ。

 放った後、自爆を防ぐために一瞬で距離を取る。その魔法は爆発し、黒煙を巻き上げる。

「手応えが無い」

 黒煙が晴れると、何も無かったかのような表情で立っているエンドが現れる。

『魔法も使えるのか……』

 様子見されてる? これはまずいな……。

『だんだん分かってきたぞ? まぁ、そのレベルで倒されるほどヤワではないがな?』

「なら、俺がお前をぶっ殺せるぐらいまでに成長すればいい。この闘いの中で」

『はっ、何を言うか。我は何百年も生きていたのだぞ? 経験値が違う。それに、この世界ではレベルは三百までしかない。そこで終わりなんだよ』

「残念ながら、俺は特別でなぁ? ……成長は止まらねぇんだわ」

『何を言っている? 馬鹿も大概にしろ……』

「なら、その馬鹿がお前に勝ったら凄くねぇか?」

『やれるものならやってみろ』

「やってやるさ。絶対に」

 不敵な笑みを浮かべ、エンドに突っ込むジン。その速度は、先程よりも速い。

 それでも、やはりエンドは余裕でそれを躱す。

 やっぱ強ぇ。それ故に、負けたくねぇ!

 ジンは攻撃を食らうだけで、エンドにダメージが与えられない。

 魔法も使うが、そのどれもがやはり無傷。魔法には耐性があるのか? だが、この魔法には神聖な力も混じっている。それで与えられないのなら、もう魔法はダメなのかもしれない。

 そう思った矢先だった。

 膝に手を付き、呼吸を整えている時だった。魔王は、立ったまま動きはせず、ジンを睨みつけている時だった。

『もしかしたら、ダメージが与えられないのはこの城のせいかもしれません』

 突然女神がそう言い、ジンは首を傾げる。そして、声には出さず、心の中で喋る。

 城? つっても、どうやって壊すんだよ……この城デカいんだぞ?

『どこかに、この城を形成する上で、中枢的な場所があるのかもしれません! それか、魔法を放ち続けている物がこの部屋にあるとか!』

 そんなこと言っても、魔王相手にそんなの探してる余裕なんて無いぞ!?

『これこそあれよ! 考えるな、感じろ。っよ!』

 この期に及んでそれかよ!! 期待した俺が馬鹿だった!

『やりなさい! きっと貴方なら出来る! 信じてるわ!』

 今度会ったら殴りてぇ……けど、何とか探してみますよ!

 作戦が決まり、この城で要になってそうな物を探すことにしたジンは、この部屋の中を適当に走ることにした。

 数打ちゃ当たる戦法ならぬ、走ってりゃ見つかるだろ戦法!!

『何をそんなに走り回っているのだ? そんなに走ったところで無駄だと知れ……』

 そして、エンドはまだ余裕を見せ、一歩も動かないのをいいことに、ジンは探すことだけに集中する。すると、明らかに微弱な魔力を放ってる物を見つける。

 あった!!! この石ころみたいなのか……。

 それは、玉座に埋め込まれていた紫色の石から感じたものだった。それを触ろうとした途端、エンドが血相を変えて動き出す。

『それに触るなぁぁあ!』

 だが、それはもう遅い。

「ほわちょぉう!!」

 人差し指で一突き。その石は、砕け散る。

 その瞬間、エンドが先程までの何倍もの力が増えたことを感じ取り、エンドの方を向こうと思った瞬間、エンドに殴り飛ばされる。

『やりおったな……』

 ジンはゆっくり立ち上がり、鼻で笑う。

「お前……おこだな?」

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