冒険者は最強職ですよ?

夏夜弘

もう二度と同じ後悔はしたくない 6

 ジン達がギルド内のテーブルに座っていると一人の如何にも魔法使いと言うような服装の小柄な女性が歩いてきた。

「あ、あのぉ……」

「うーん……誰か来てくれませんかねー?」

「まぁ下級の魔法使いならいるのかもしれないけど上級職になるとねぇ……」

「すいません……掲示板を見て来たんですけど……」

「困ったわねぇ……このままだと冒険に出れないわ……」

「気楽に待ちましょう。いずれ来ますよ。皆いい人なのですし、すぐに打ち解けますわ」

「zzZ……」

「あのぉ!!!」

 魔法使いがいくら呼びかけても反応しないジンたちに、痺れを切らし大声で叫んだ。

「「「「「はい?」」」」」

「掲示板を見てきたんですけどぉ!!」

「「「「「あー。もしかして魔法使いさん?」」」」」

「そうですぅ! 皆して同じ事は言わないでくださいよぉ!」

「「「「「はぁ……」」」」」

「うぅぅ……」

 魔法使いの女性は涙目になりながらもなんとか話しかける。それにダイコが対応した。

「からかった事は謝るわ。それで? 私たちのパーティーに参加希望かしら?」

「はい、私こう見えて賢者ですので……それに冒険にも出てみたいと思っていたので」

「ホント? 一応ステータスカードを見していただいても構わないかしら? それと名前を教えてくださる?」

「私はマーシュ=グレイといいます、ステータスカードですね。わかりました、少しお待ちください」

 そうしてマーシュはステータスカードを取り出して血をつけて文字を浮かび上がらせる。

マーシュ=グレイ
職業 賢者
Lv129
HP 1590
MP 864
攻撃 203
防御 842
魔法 1050
敏捷 592

スキル
熟練度 杖 100

ユニークスキル
"MP自動回復"

 こう記されていた。

「「「「「は!?」」」」」

「な、なんですか?」

 みんなしてマーシュを見回す。ありえないと言った顔で。

「これ本当にマーシュさんのステータスカードですか? 壊れてるんじゃないんですか?」

「壊れてませんよぉ……」

「これはありえない……見た目からして絶対に想像できないステータスですよ!」

「ひどい!!」

「強すぎるわ! これなら私たちのパーティーに参加文句なしだわ! 歓迎するわ! マーシュちゃん!」

「私もいいと思うわ。彼女なら任せられるわね」

「zzZ……」

「ネインは見るだけ見てまた寝た!?」

「と、とりあえず参加させて貰えるんですね?()やった〜! ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」

 マーシュが頭を下げて礼を言い、皆も歓迎の言葉を送ったあと自己紹介していった。

 六人となったパーティーメンバーは、とりあえずどこの町へ行くのかを決めていた。

「どっちに行くのがいいんですかね……」

「そうねぇ……とりあえずジンちゃんとランちゃんのレベル上げをしながら進みたいから、なるべく多くのモンスターと闘いながら進みたいのよね……」

「森と山と洞窟には絶対にいっちゃだめですよ? あそこは危険ですので」

「なんでですか? マーシュさん」

「あそこは高レベルのモンスターばかりいるんです。洞窟には巨大蛇、山には龍、森には巨大蛇がいますから……どれも私たちでは太刀打ちできないんです」

「へぇ〜、海や陸や空はいるんですか?」

「陸には弱いモンスターしかいないので。ただ前みたいに魔族が来るというのはあるかもしれませんが。海にも危険生物は存在しますよ。でも眠りを妨げなければ問題ありません。空は……死ぬほど危険なので誰も近づきません」

「え? でも前空を魔法で飛んでる人見ましたよ?」

「空には危険領域が存在するんです。ある領域を超えると龍や空を飛ぶモンスターのご飯になります」

「空嫌い」

「まぁその話は冒険中にでもして頂戴。今は交通手段よ……やっぱり何も無い平地を行くのがいいのかもしれないわね」

 一同はその意見に賛成した。

「じゃあとりあえず決定ね。出発は明日にしましょう。テントとか食料とか買わなければいけないし」

 そして皆解散していった。

「楽しみだね! ラン!」

「ええ! 早く強くなりたいわ!」

「ネインも強くなる!」

 ジンたちは三人で冒険の準備のために物を買いにいった。

 ジンは今の短剣もいいが、そろそろ長剣が欲しいと思い、武器屋へ足を運んだ。

 様々な長剣のなか一際目立った物をジンは手に取る。

「おっ! 兄ちゃん、良いもんに目ぇ付けたなぁ! それはこの店ん中でかなり質のいい長剣でなぁ!値段はするが買って損はないと思うぜぇ!」

 ジンはそう言われ自分の財布と睨めっこする。
 そして盗賊団を確保した時の報酬で貰ったお金を使いその長剣を購入した。財布の中身は小銭だけになってしまった。
 でもいい買い物をしたと思いそんなに気分は悪くなかった。

 その日は買うものを買ったあとランの家へ向かいそこで朝を迎えた。

 そして六人は門の前へと集合していた。

「そーいえばどこへ向かうんです? ダイコさん」

「一応目処はついてるわ。向かう先はマッ町とは真逆の方向に進んでハークス町へ向かおうと思うわ。ハークスはオーキ国でもかなりの大きさを誇る町よ」

「わかりました! ではハークスへ行きましょう!」

 ジンは大きな声で言い拳を突き上げながら歩き始めた。もう二度と同じ後悔はしないと心に誓いながら。

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