冒険者は最強職ですよ?

夏夜弘

なんか勇者に嫌われたんですけど? 2

 冒険を続けるジンたちは昼の休憩をしていた。
 ネインはランとレベッカと遊びダイコはマーシュと何か話していた。
 ジンはというと話す相手が居なく、空を眺めていた。

 すると突然雲の中からとても巨大な飛行船が出てきた。

「うわ! でかっ! 何あの飛行船!」

 その声にダイコ反応する。

「あら、珍しい物を見れたわね」

「何なんですあれは?」

「この世界には九つの国がある事は知っているわね? その各国々のトップ、つまりは勇者ね。その人たちを乗せた飛行船よ」

「でもなんでそんな物がこんなとこを飛んでるんですか?」

「あら、知らなかったの? 私達がこれから行くハークスは世界の中でもかなり綺麗な国でね? 広さもそれなりにあって治安も良いからそこが会談場所になったりするのよ」

「へぇ、じゃあもしかしたら勇者に会えるってことですか?」

「多分見ることはできるわね」

「勇者って確か王族の血を引くものでしたよね? そしたら現王とかもいるんですか?」

「いえ、王は国を管理しなければならないから外へは出られないわ。代わりに執事がついて行くことになってるわ」

「どうやってこんな広い国を王は管理してるんですか?」

「今の王も元は勇者。だから魔法も使えちゃうわ。その魔法で国を見回しているのよ」

「ひぃ〜! まじですか! 王強いんですね……」

「だけど今年の勇者は全然ダメだわ。はっきり言って雑魚の塊。いくら集まったところで多分魔王幹部すら倒せないわ」

 そこでジンは暗闇の世界で言われたことを思い出す。
 そして今のダイコの発言を聞きなぜ今の勇者が魔王幹部を倒せないのか理解する。

「そんなに……じゃあ僕達がどんどん強くなって魔王幹部でも倒せるようになりましょう!!!」

「そうね、じゃあ休憩もこれくらいにして行きましょうか」

 そう言ってジン達は出発する。

 暫く歩いていると一つの小さな村を見つける。

 ジンたちはそこで一泊する事を決めその村へ入る。

 中では子供達が元気に遊んでおり賑やかな声が聞こえる。

「いらっしゃいませ、旅のお方。タンテ村で休憩なさってください」

 そう白髪で髭も白いおじいさんに歓迎され奥へと入っていく。

 村の中に小さな宿がありそこで泊まることを決めたジンたちは今後の予定を確かめるべくジンの部屋へ集まっていた。

「せ、狭くないですかねぇ……」

「じ、ジンの隣だァ……」

「確かに狭いわね」

「狭いですわ」

「狭いですぅ〜」

「zzZ」

 旅の疲れでネインは寝てしまっていた。だが他の五人は息苦しそうに肩を寄せながら座っている状態だった。

「マーシュさんは小さいから大丈夫そうなんですけど……?」

「ひどいですぅ〜! 流石に今のは怒りますよぉ〜?」

「今は我慢して頂戴。皆一緒の気持ちなのだから。」

「そうですわ。今後の方針を決めましょ」

 そうダイコとレベッカが言い話し合いを始める。

「このペースで行けば多分四日後には到着できるわね」

「四日かぁ……結構遠いですねぇ……」

「その間レベル上げできるんだから頑張りなさい? ジンもランもかなり強くなったと思うのだけれど」

「レベッカさんが励ましてくれるなんて珍しいですね……なんかいい事ありました?」

「いえね?私どうしても気になりますの。なぜジンがそんなにも成長が早いのかをね……?」

 その言葉を言われた瞬間ジンは少し緊張する。
 ジンはラン以外にはステータスカードを見せていないし、見せられるものではなかったので今までずっと隠していた。

 いつかは聞かれると思ってはいたが今とは思っていなかった。

 ジンはゴクリと唾を呑み、額から汗を垂らす。

 レベッカがジーッとこちらを見つめてくる。
 ジンが観念しかけたその時。

「ネインお腹すいた。ご飯しよ」

 今さっきまで寝ていたネインが急に起き上がりそんな事を言い出す。

「それもそうね、よし! お店を探しに行きましょう!」

 ジンは心の中でダイコさんナイス! ネインもグッドタイミング! と感謝しながら部屋を後にする。

 レベッカは少し残念と言ったような顔で部屋を出る。

 晩飯を済ませたジンたちは各自自分の部屋で休憩になった。

 ジンは暇だったので独りで村を散歩することに決めた。

 村には明かりが灯っており、時刻で言うと7時くらいなのにまだ多くの人がお店を開いたり遊んだりしていた。

 ジンは「いい村だなぁ〜」と呟きながらぶらぶらと村の中を歩く。
 するととある老人に声を掛けられる。

「そこの若い方、少しお喋りに付き合ってはくれんかね?」

「あなたはさっきの! えーっと……」

「私はここの村長を務めさせてもらっているアジルというものです。この度は私共の村へようこそいらしてくれました」

「いえいえ! 僕達は旅の途中でこの村を見つけて入ったんです。ここはいい村ですね、なんだか落ち着きます」

「ほっほっほ! その様なことを言っていただき嬉しく思います。この村の村長をやっていた甲斐がありました」

 その後も少しアジルと会話をする。

 話が終わるとアジルは「それではまた」と言い去っていった。

 ジンも「はい! ありがとうございました!」と礼を言いアジルを見送った。

 そしてジンも宿へ帰るのであった。

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