冒険者は最強職ですよ?

夏夜弘

与えられた試練 4

『ジン、朝だ。起きろ?』

「朝ですか……そうですかぁぁぁぁあ!?」

『なんだお主、朝から元気だのぉ?』

「いやいやいやいや、そりゃこうなりますよ!」

『だから昨日も言っただろ? 何時でも一緒だと、それが師弟関係だと』

「あのですね? まぁそれはいいとして、一緒に寝るのもいいとしますよ? でもですねぇ……」

『でもなんだ?』

「でも、裸は流石に辞めてくださいよ! しかも何で僕まで脱がされてるんですか!?」

『なんだ寝るときは何時も服を脱ぐものだろ?』

「僕はそんな事……」

「ジンおはよ……」

「ないですよ! ……今の声はまさか!?」

 ジンは、声がした扉の方を恐る恐る向く。するとそこには、顔を真っ赤に染めたレベッカとマーシュが立っていた。

「じ、じ、じ……」

「待ってくださいレベッカさん! これには深い訳が……!」

「ジンの不潔者ぉお!!」

「ぶっはぁぁあ!?」

 ジンの急遽に、レベッカの強烈な蹴りが見舞われる。これは痛い。しかもノーガードだ。

「死んだ死んだ死んだ死んだ……これでもう僕は息子を拝むことなく死ねます……ね……」

 レベッカのその強烈な一撃に、ジンは気絶する。泡を拭きながら……

 それから数時間後―

「あの……その……ジン? さっきはごめんね?」

「あぁぁぁぁぁ……」

「聞いてる? ジン……ちょっと? そこは口じゃなくて目よ!? 何処からパンを食べようとしてるの!?」

 ジンはまだ放心状態だ。意識などほぼ無いに等しい。口を開けて白目を剥きながら、食卓の椅子へと座っていた。

「だからジン!? そんなとこに食べ物はないは!? それは蝋燭よ!? 何食べようとしてるの!?」

「私は悪くない私は悪くない……」

「あのぉ……マーシュさん? それにレベッカさんもですけど、何かあったんですか? ジンさんが今にも死にそうな顔を……」

「な、なななななな、何も無かったわわわわわ!?」

「うん。絶対なんかあったわこれ。ね? へレーナさん」

「…………」

「あれ? へレーナさん?」

「……あっ、そうね。そうね……」

 エレンは、へレーナはへレーナで何か会ったんだと思い、少し深刻そうな顔をしていたので、これ以上話しかけるのは辞めておいた。

『ねぇレッド? 本当にジンちゃんに何があったの?』

『ん? まぁ何でもない。ただのじゃれあいだ。気にするな』

『あらそう?』

 ホワイトは、絶対に原因はレッドにあると確信する。

 その後は、レベッカとマーシュが責任を取り、ジンへ食事を食べさせる。食べ終わると同時に、ジンはまた意識を失って倒れた。

『今日は無理だな。全く……情けないよのぉ……』

「「いやいや、誰のせいだよ……」」

『何か言ったか?』

「「いいえ?」」

『そうか。じゃあジンを部屋へ運ぶのを手伝ってくれ。頼んだぞ?』

 二人は返事し、レベッカがジンの上半身、マーシュが下半身を持ち、運ぶことに決めた。

 運ぶ時、レベッカは気にはしていなかったが、マーシュはどうしても気になって仕方が無かった。あの時見てしまったジンの『剣』が。マーシュは、再び顔を赤く染めた。

 そんな中、ジンは夢を見ていた。

 ……あれ? ダイコさんにネイン、どうしてここに……下を向いてどうしたんだ?

「アナタノセイヨ……」

 ん? 何を言ってるんですかダイコさんは……よく聞きとれ……

「アナタニチカラガナカッタカラ……」

 ネインまで……二人とも何を言ってるんだ!?

「「オマエノセイダ!」」

 そうダイコとネインは叫ぶと、顔を上げ、腕を伸ばして首に掴みかかってくる。目が無く、血の涙を流し、口を広げて叫んでいる。

 そして、首にし噛み掴まれたその瞬間、ジンは目を覚ます。

「うわぁっ!? ……今のは……そうか、僕はまだ後悔してるんだなぁ……それじゃあダイコさん達に怒られちゃうって言うのに……」

『仕方が無い。そう簡単に吹っ切れられるものでは無いからな。それに凄くうなされていたぞ?』

「あっ、レッドさん……どうして僕がその事を夢見てるって思ったんです?」

『まぁ長年生きてれば察しはつく。まだ我慢しておるのだろ?』

「えぇ……まぁ正直まだ切り替えられていません。すいません……」

『良い。まだ時間はある、ゆっくりと慣れてゆけばいい。それまでは我がそばに居る。其奴もだ』

「其奴……?」

 レッドが指を指す。その示す先には、椅子に座りながら眠っているレベッカとマーシュがいた。

『多分其奴も同じだ。だから自分だけ忘れようとするな。共に慣れてゆけ、そして強くなれ。無理をするな』

「はい……ありがとうございます、師匠!」

『それで良い。それで良いのだ……』

 ジンはもう、ダイコ達は忘れない。ランも女神もた。絶対に助けると、心に誓った。

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