冒険者は最強職ですよ?

夏夜弘

与えられた試練 15

「それで……話というのは?」

『そうですねぇ……どれから話せばいいか……』

「そんなに話があるんですか?」

『はい。三つ程ありましてねえ……では、いい話か悪い話、どちらから聞きたいですか?』

 なんか呑気な人だなぁ……まぁいいや。

「では悪い話からでお願いします」

『はい。では悪い話から……』

 そう言うと、穏やかそうな雰囲気がガラッと変わり、今までにこやかだった顔が、真剣な顔つきになる。

『心して聞いてください。……現女神は、魔王サイドに堕ちました』

「……は?」

 ジンは耳を疑った。

 今エルさんは女神は魔王サイドに堕ちたって言ったか? あの女神が? そんなわけ……

「すいません、もう一度宜しいですか?」

『はい……現女神は、魔王サイドに堕ちました』

「そ、そんな……」

 ジンは目をこれでもかと言うくらい見開いた。信じられなかった。あの女神が、魔王サイドに付くなんてことは、絶対にないと思っていた。

『確かに堕ちました。ですが、私は「助けられない」とは言ってませんよ?』

「ってことは……!?」

『その通り。助ける方法はあります』

 それを聞いた瞬間、ジンは固まっていた表情が柔らでいく。

『ですが、それはとても大変なものです。それに、今の魔王軍は我々がもってしても倒せはしない。それほどに力を付けてしまった……そこに現女神の力があるとなると……』

「大丈夫です。女神様は相手に力を貸すような人ではありません。女神様は僕が絶対助けます。何があってもです」

『……ジン、現女神があなたに興味を持ったことが、少しわかった気がします。貴方は強くてたくましい。そして優しい。我々も力を貸したい……ですがその権限は無い。それ故に悔しい』

「いえいえ、お気持ちだけでも充分嬉しいです。その気持ちだけでもかなりモチベーションが上がりますから」

『フフ……あぁ、そうでした。助け出す方法ですが……』

 おぉ、そうだうっかり聞き逃すとこだった。その方法はなんだぁ……?

『ジン、貴方が、魔王の城に攻め行く時、最優先で女神を探してください。まだ彼女にも心はあります。なので、もし女神を見つけたら……』

「見つけたらぁ……?」

『キスをしてください』

「…………」

 ジンは再び耳を疑う。

 待て待て? 今なんて言ったんだ? キスをしてくれとか何とか言ってなかったか? 訳分からんのだが?

「すいません、よく聞き取れませんでした。もう一度宜しいですか?」

『ですから、女神に会ったらすぐさまキスを……』

「……えぇぇえ!?」

『何をそんなに驚いているのです? 女神の気持ちを考えれば……まさか!? 貴方、女神の気持ちに気づいてないんですか!?』

「き、気持ち? 何のことだかわかりませんけど……それより! そんな事で助けられるんですか!?」

『えぇぇぇ!? 気づいていらっしゃらない!? はぁ……貴方、鈍感ですのね……まぁとりあえずそれで助けられます。女神はまだ自我があります。それを引き戻しさてすれば完全に助けられます』

「ど、鈍感? 何のことだ? と、とりあえず、見つけたらキスすればいいんですね? あまり気が進まないけど、やらなきゃいけないのならやります!」

『すぐに見分けがつくと思います。今まではその世界に現界した事は無かったのですが、今は上手く身体を構成して生きているようです。お願いします、ジン。我らが女神を助けてください』

「わかりました。絶対助けます!」

『はい。ではそれが悪い話といい話の二つとして……』

 え!? まさか女神をキスで救えるというのがいい話なのか!? 期待して損した……あと一つは?

『あと一つあります。単刀直入に言うと、ジン。貴方、龍の力が宿っています。ここに来てそれを感じました』

「…………」

 おいおい、またまたおかしな事を……この人は僕を驚かせないと気が済まないのか? これで耳を疑うのは三度目だぞ? そしてこの質問も三度目だ。

「あのぉ、もう一度詳しくお願いします」

『ですから、龍の力が宿ってます。と言ったのです』

「……ほぇ!?」

 ジンは驚く。驚き、顎が地面に付きそうな勢いで口を開く。眼球も飛び出しそうだ。

「ちょっと待ってください……それって、どうしたら
その力は宿るんです?」

『簡単です。龍族と何らかの行為をすれば力は宿ります。最も、龍族は誇り高き生物。そんな行為はしないんですけど……何かしましたか?』

「あのぉですねで……僕ぅ……龍族の方に、キスをされました……それもとびっきり濃厚なやつ……」

『…………』

「あはは……おかしいですか?」

 エルは、大きく息を吸いこみ、こう叫んだ。

『おかしいもなにも、そんな事は普通起こらないんですぅ!!』

 あらら、どうやら僕は怒られたようです。

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