IF 平井ゆきは美人である。

みづか

0・【もし】の前の世界。プロローグ

中学三年の平井ひらいゆき。

成績ならいつもトップ3に入る秀才。
スポーツなら、やること全てクラス記録はゆうに出してしまう。
美術ならみんなの目を引く絵画を創り、
音楽なら格が違う音色を響かせてみせ、
家庭なら驚くくらい美味しい料理を作る。

皆と勉学や技術は比べものにならない。

人望なら、生徒会にクラス全会一致で推薦される。
何か大会があるなら、クラス代表に余裕でなる。

生徒会に推薦されるのだ。
クラス代表になるのだ。

ただし、生徒会長にはなれない。
学年代表にもならない。

だって、顔が可愛くない。

皆が特別口を揃えて不細工と言う訳ではない。
しかし、ぽっちゃりとした体に、一重の小さな目。
それだけで赤の他人には思われる。
『あぁ、可愛くない。』
下の中である見た目に、ゆきは苦労してきた。

生徒会選抜選挙や、学年代表戦には、ゆきより見た目が良い人ばかりだ。
だから、ゆきのことを知らない人は当たり前のようにゆきのことなんて見ない。
皆演説をしっかりと聞いてなんていない。
第一印象なんだ、この社会は。

男子がいると、からかわれ、虐められる。
それに恋愛なんて確実に叶わず、悲しくなるだろう。
だから、中学受験をして、三駅先の女子校に通っている。
ゆきの学力では一番上のランクの特待生になれた。

流石は私立中学、いじめも悪口も言われない。
友人だっているし、部活で後輩からも好かれる。
ただし、クラスには見えないランクがある。

目立つ原宿系女子は、上の方。
好き勝手騒いだって誰も気にしないし、授業は先生が来るまで最後まで立って話している。
皆彼女らのようになりたいと思うのだろうか。

上のグループから見れば、
ゆき含む3人の小さなグループは、平凡でありふれている。眼中になんてない。
更に、ゆき単体になればただの完璧ブスだ。


そんな生活にゆきは嫌気がさした。


ただでさえ微妙な境遇だが、
二つ下、中一に同じ学校の妹がいる。
妹のめいは、勉学や技術こそはゆきに劣るかもしれないが、ものすごく可愛い。可愛い。可愛い。
二重の目に長い脚。姉と並んで立たせるのはつらい。


それに、クラスのリーダー、
明石あかし柑奈かんな
この娘もまた、すごく可愛かった。
態度はすごく悪く、不良と言っても過言ではない。

茶色みを帯びたストレートの長い髪に高い身長。
校則でメイクが出来なくても長い睫毛に、大きな瞳。
頬は薄ピンクに染まっている。
めいが学年でトップレベルにかわいいとして、それで赤石柑奈は学校一に可愛いのではないか。
だからゆきは、見た目以外どんなに一目置かれようと、学級代表委員であろうと、柑奈に隠れる。

3年4組と言えば
『なんでもできるすごい子がいる』
なんか全く関係なく
『学校で一番くらいに可愛い子がいる』
なのだ。

顔さえ可愛ければ、ゆきは完璧だったのだろうか。

ゆきは思った。
『なんで私は恵まれてないの。なんであの子なの?』

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