闇と雷の混血〜腐の者の楽園〜
4話〜愛しの我が子〜
※アルム視点
光が治ると祭壇の前でアルが倒れていた。
僕もマートルも急いでアルの下に駆け寄る。
「大丈夫だよ。マートル。寝てるだけだ。」
「でも、アルくん泣いてたみたい。」
七霊王がこの世に現れる時、それは虹薔薇の所有者以外にとって一瞬の出来事となる。
話には聞いていたけど、魔法陣が輝いて光が治る頃には全てが終わっていたらしい。
アルは僕らの知らない間に泣かせられていたみたいだけど、嫌われたのかな。
そう思い、少し落ち込んだ。アルなら全員に気に入られるかと思ってたんだけどね。
「ねぇ、アルム?この魔力ってアルくんのかな〜?」
「いや、これはアルのじゃ無いね。アルはまだ魔力を解放して無いから、こんな表面には出てこないよ。契約は出来ないだろうから、これは『約束』ってところかな?」
「闇、雷、光、水、火、土、風。これって。全部揃ってるね〜。アルくんってば全員と約束したんだね〜。さすが私の天使だね〜。」
驚いたな。本当に全員とは。闇と雷の精霊王と約束出来れば十分だったんだけど。
「......あら?ちょっとごめんね〜。邪魔者が来ちゃった。消してくるね〜。」
マートルが侵入者の排除に行った。マートルには感謝してるよ。僕ら家族の平穏を守ってくれている。
僕は目を赤くしながらも安らかに眠るアルの僕達とは真逆の白い髪を撫でながら、過去に思いを馳せる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『貴方獣人族?なんで魔大陸にいるの?』
真っ黒な女の人が大きな翼を広げ目の前に降りてきた。満月を背後に浮かばせて微笑むその女性はとても綺麗だと思った。
『へぇ〜。魔大陸の薬草ね〜。光の大陸からしたら、訳のわからない物しか無いと思うけどね〜。』
【光の大陸】とは魔大陸を住むものがガラナシア大陸を呼ぶ時に使う言葉。魔大陸は陽に照らされない常夜の世界。陽に照らされるガラナシア大陸を魔大陸と比較して【光の大陸】と呼ぶのだと聞いた事がある。本当に呼んでるのは初めて聞いたけど。
『え?私はマートル。見ての通り吸血鬼よ〜。でも、安心してね。一般種みたいに無差別に襲う事は無いからね〜。』
楽しそうに柔らかな笑顔を向けてくれる。例え僕が獣人族でも気にせず接してくれる。何時も決まった時間に決まった場所に居て、僕を待っていてくれる。
『いいの?私と番になるって事は、不老になるってことよ〜?周りの人に置いて逝かれるわよ?』
君はそう言いながら悲しそうな顔をした。きっと君が身をもって経験したのだろう。でも、僕は君さえいれば構わない。
『馬鹿なことを言うな。アルム、我が息子よ。魔人族のそれも女と番になる事がどれ程のことか、分かっているのだろう。平民ならば兎も角、獣王国の高貴な身分の者がそんな事をすれば獣人族全ての恥となるのだぞ。』
父上はそう言って険しい顔をした。分かってはいるけど、自分の立場を理解している。だが、それでも。
『勿論、父としてはお前に愛する者が出来たことは素直に嬉しい。だが、身分があるのだ。』
父上は少し疲れたように微笑んだ。小さい頃から見ていた父上の子供への目だ。
『......なぁ、アルムよ。身分を、権力を、力を、誇りを捨てる覚悟はあるのか?』
覚悟ならば出来ている。きっと、マートルに出会った時から。彼女と共になれるのならば死んでも構わない。
『......そうか。ならば死ぬといい。我が息子よ。』
父上は少し悲しげな表情をしていたが、すぐに無表情へと変わった。それは身分を背負った時の顔だ。父上、すみませんでした。望みを、役目を果たせず。
『ここは私のダンジョンよ〜。え?なんで魔大陸じゃないのかって。ここが私の故郷だからよ〜?薔薇園綺麗でしょ〜?』
二人一緒に身を隠すことになった。てっきり魔大陸に住むのだと思っていたが、やって来たのはガラナシア大陸の人族領だった。
『教会では出来ないし、祝福もされないだろうけど、これからよろしくね〜?旦那様。』
すまない。君の憧れだった神の祝福を君から奪うような真似をして。それでも、いや奪ったからこそ、それ以上の幸せを。
『......ふふっ。アルムも黒薔薇を二本用意してたのね〜。同じこと考えてたなんて。黒薔薇が四本。私達にとっては最高の誓いね。』
黒薔薇は恋人に捧げる花の中で一番のもの。黒薔薇の入手は危険で命を落とすこともあるからこそ、死よりも深い愛を現す。
『私達は神の花に永遠の愛を誓います。』
二人で同時に黒薔薇を天へ掲げる。幼い頃に見た教会での結婚式の真似をして。例え掲げた薔薇が青くならなくとも。
『えっ、なんで薔薇が青くなってくの⁈異性愛の私達には神の祝福は与えられないはずなのに。......なんで。薔薇園の薔薇まで。』
同性愛とは違い異性愛は神への冒涜。それも異種族の婚約はむしろ天罰が下るのではと、思っていたのに。
掲げた四本の薔薇を中心に、薔薇園の薔薇まで青く染まっていく。
青薔薇は栽培も出来ず自生している事もない。
めでたい日にあらゆる薔薇が青く染まり、青い薔薇は決して枯れることがない。
青薔薇は【神の祝福】。神に認められた証である。
マートルはその光景を見て泣き出してしまった。
教会の結婚式では掲げた薔薇だけが青く染まるのだが、今目の前に広がる光景はマートルの憧れていた教会の光景を遥かに超える神秘さに溢れていた。
『ねぇ、アルム?これ見て!意味はわかるでしょ〜?』
薔薇園に呼ばれ来てみたが。
マートルがそうやって僕の顔の前にピンクの薔薇の大輪を掲げた。
ピンク薔薇の大輪の意味は『子を身籠りました』。ああ、驚いたな。
マートル、君は本当にサプライズが好きだね。いつも僕を驚かせてくれる。
『あれ?アルム、泣いてるの?まったく、大変なのはこれからよ〜?異性間でさらには、異種族の子供なんだから、どんな障害を持って産まれてくるか。貴方もちゃんと、手伝ってよ〜?』
マートルが、ニヤニヤしながら顔を覗き込んでくる。君は僕が弱みを見せるときは、本当に楽しそうだよね。でも、僕等の子供なんだから、勿論僕も手伝うよ。
どんな子が産まれてくるのかな。楽しみだ。
『うそ、アルム?これ。この薔薇も青くなってく!』
マートルが見せてくるピンク薔薇の大輪は、青く染まり中央の一本が虹色に輝いていた。
虹薔薇は神様がくれる可能性。精霊王様との対面の機会が与えられる。
全く、僕等は神様に気に入られるような事をした覚えはないんだけどね。
『真っ白ね〜。私の天使は、アルムに似てるね〜。』
目元は君にそっくりだし、髪質だって柔らかくて君と同じだろう?どこが僕に似てるの?
『アルムに似て、口が小さいでしょ〜?それに私の髪はこんなに癖つかないわよ〜?』
僕が髪の事気にしてるの知ってるよね?
この子は柔らかいから真っ直ぐにもできるかもしれないけど、僕の場合髪は硬くてこの状態を変えられないのに。......全く、酷いよね。君は。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
きっと、弟達みたいに上手くはいかない。
そう思って不安になりもしたけど、産まれてきた子供は真っ白な小さな男の子だった。
お腹が空いたり、オムツ替えの時以外は、驚かさなければ全く泣かない。
三幻獣に選ばれた証かもしれないその真っ赤な瞳には、確かな知性が宿っていた。
生まれて間もないのに僕等の言葉を殆ど、理解してもいた。
複雑な感情が芽生えてもいる。これが禁忌を重ね産まれてきた結果なのか。
僕等とは真逆の白を持って産まれてきた子。正直、僕は君を少し恐れている。悪魔憑きでないことは分かっているけど、君がマートルの害悪にならないか判断しないとね。
君はきっと優しい子なのだろう。僕等を喜ばそうとしてくれる。マートルに似ていたずら好きで。
ただ、時々感じるんだよ。僕等に心を許してはいないのか、冷酷な瞳を見せる事がある。僕等を見定めている様な、観察している様なそんな感覚がする。
親として思ってはいけない事だろうけど。
......君は本当に僕等の子供かな?
初の主人公以外の視点、上手く書けただろうか。
光が治ると祭壇の前でアルが倒れていた。
僕もマートルも急いでアルの下に駆け寄る。
「大丈夫だよ。マートル。寝てるだけだ。」
「でも、アルくん泣いてたみたい。」
七霊王がこの世に現れる時、それは虹薔薇の所有者以外にとって一瞬の出来事となる。
話には聞いていたけど、魔法陣が輝いて光が治る頃には全てが終わっていたらしい。
アルは僕らの知らない間に泣かせられていたみたいだけど、嫌われたのかな。
そう思い、少し落ち込んだ。アルなら全員に気に入られるかと思ってたんだけどね。
「ねぇ、アルム?この魔力ってアルくんのかな〜?」
「いや、これはアルのじゃ無いね。アルはまだ魔力を解放して無いから、こんな表面には出てこないよ。契約は出来ないだろうから、これは『約束』ってところかな?」
「闇、雷、光、水、火、土、風。これって。全部揃ってるね〜。アルくんってば全員と約束したんだね〜。さすが私の天使だね〜。」
驚いたな。本当に全員とは。闇と雷の精霊王と約束出来れば十分だったんだけど。
「......あら?ちょっとごめんね〜。邪魔者が来ちゃった。消してくるね〜。」
マートルが侵入者の排除に行った。マートルには感謝してるよ。僕ら家族の平穏を守ってくれている。
僕は目を赤くしながらも安らかに眠るアルの僕達とは真逆の白い髪を撫でながら、過去に思いを馳せる。
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『貴方獣人族?なんで魔大陸にいるの?』
真っ黒な女の人が大きな翼を広げ目の前に降りてきた。満月を背後に浮かばせて微笑むその女性はとても綺麗だと思った。
『へぇ〜。魔大陸の薬草ね〜。光の大陸からしたら、訳のわからない物しか無いと思うけどね〜。』
【光の大陸】とは魔大陸を住むものがガラナシア大陸を呼ぶ時に使う言葉。魔大陸は陽に照らされない常夜の世界。陽に照らされるガラナシア大陸を魔大陸と比較して【光の大陸】と呼ぶのだと聞いた事がある。本当に呼んでるのは初めて聞いたけど。
『え?私はマートル。見ての通り吸血鬼よ〜。でも、安心してね。一般種みたいに無差別に襲う事は無いからね〜。』
楽しそうに柔らかな笑顔を向けてくれる。例え僕が獣人族でも気にせず接してくれる。何時も決まった時間に決まった場所に居て、僕を待っていてくれる。
『いいの?私と番になるって事は、不老になるってことよ〜?周りの人に置いて逝かれるわよ?』
君はそう言いながら悲しそうな顔をした。きっと君が身をもって経験したのだろう。でも、僕は君さえいれば構わない。
『馬鹿なことを言うな。アルム、我が息子よ。魔人族のそれも女と番になる事がどれ程のことか、分かっているのだろう。平民ならば兎も角、獣王国の高貴な身分の者がそんな事をすれば獣人族全ての恥となるのだぞ。』
父上はそう言って険しい顔をした。分かってはいるけど、自分の立場を理解している。だが、それでも。
『勿論、父としてはお前に愛する者が出来たことは素直に嬉しい。だが、身分があるのだ。』
父上は少し疲れたように微笑んだ。小さい頃から見ていた父上の子供への目だ。
『......なぁ、アルムよ。身分を、権力を、力を、誇りを捨てる覚悟はあるのか?』
覚悟ならば出来ている。きっと、マートルに出会った時から。彼女と共になれるのならば死んでも構わない。
『......そうか。ならば死ぬといい。我が息子よ。』
父上は少し悲しげな表情をしていたが、すぐに無表情へと変わった。それは身分を背負った時の顔だ。父上、すみませんでした。望みを、役目を果たせず。
『ここは私のダンジョンよ〜。え?なんで魔大陸じゃないのかって。ここが私の故郷だからよ〜?薔薇園綺麗でしょ〜?』
二人一緒に身を隠すことになった。てっきり魔大陸に住むのだと思っていたが、やって来たのはガラナシア大陸の人族領だった。
『教会では出来ないし、祝福もされないだろうけど、これからよろしくね〜?旦那様。』
すまない。君の憧れだった神の祝福を君から奪うような真似をして。それでも、いや奪ったからこそ、それ以上の幸せを。
『......ふふっ。アルムも黒薔薇を二本用意してたのね〜。同じこと考えてたなんて。黒薔薇が四本。私達にとっては最高の誓いね。』
黒薔薇は恋人に捧げる花の中で一番のもの。黒薔薇の入手は危険で命を落とすこともあるからこそ、死よりも深い愛を現す。
『私達は神の花に永遠の愛を誓います。』
二人で同時に黒薔薇を天へ掲げる。幼い頃に見た教会での結婚式の真似をして。例え掲げた薔薇が青くならなくとも。
『えっ、なんで薔薇が青くなってくの⁈異性愛の私達には神の祝福は与えられないはずなのに。......なんで。薔薇園の薔薇まで。』
同性愛とは違い異性愛は神への冒涜。それも異種族の婚約はむしろ天罰が下るのではと、思っていたのに。
掲げた四本の薔薇を中心に、薔薇園の薔薇まで青く染まっていく。
青薔薇は栽培も出来ず自生している事もない。
めでたい日にあらゆる薔薇が青く染まり、青い薔薇は決して枯れることがない。
青薔薇は【神の祝福】。神に認められた証である。
マートルはその光景を見て泣き出してしまった。
教会の結婚式では掲げた薔薇だけが青く染まるのだが、今目の前に広がる光景はマートルの憧れていた教会の光景を遥かに超える神秘さに溢れていた。
『ねぇ、アルム?これ見て!意味はわかるでしょ〜?』
薔薇園に呼ばれ来てみたが。
マートルがそうやって僕の顔の前にピンクの薔薇の大輪を掲げた。
ピンク薔薇の大輪の意味は『子を身籠りました』。ああ、驚いたな。
マートル、君は本当にサプライズが好きだね。いつも僕を驚かせてくれる。
『あれ?アルム、泣いてるの?まったく、大変なのはこれからよ〜?異性間でさらには、異種族の子供なんだから、どんな障害を持って産まれてくるか。貴方もちゃんと、手伝ってよ〜?』
マートルが、ニヤニヤしながら顔を覗き込んでくる。君は僕が弱みを見せるときは、本当に楽しそうだよね。でも、僕等の子供なんだから、勿論僕も手伝うよ。
どんな子が産まれてくるのかな。楽しみだ。
『うそ、アルム?これ。この薔薇も青くなってく!』
マートルが見せてくるピンク薔薇の大輪は、青く染まり中央の一本が虹色に輝いていた。
虹薔薇は神様がくれる可能性。精霊王様との対面の機会が与えられる。
全く、僕等は神様に気に入られるような事をした覚えはないんだけどね。
『真っ白ね〜。私の天使は、アルムに似てるね〜。』
目元は君にそっくりだし、髪質だって柔らかくて君と同じだろう?どこが僕に似てるの?
『アルムに似て、口が小さいでしょ〜?それに私の髪はこんなに癖つかないわよ〜?』
僕が髪の事気にしてるの知ってるよね?
この子は柔らかいから真っ直ぐにもできるかもしれないけど、僕の場合髪は硬くてこの状態を変えられないのに。......全く、酷いよね。君は。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
きっと、弟達みたいに上手くはいかない。
そう思って不安になりもしたけど、産まれてきた子供は真っ白な小さな男の子だった。
お腹が空いたり、オムツ替えの時以外は、驚かさなければ全く泣かない。
三幻獣に選ばれた証かもしれないその真っ赤な瞳には、確かな知性が宿っていた。
生まれて間もないのに僕等の言葉を殆ど、理解してもいた。
複雑な感情が芽生えてもいる。これが禁忌を重ね産まれてきた結果なのか。
僕等とは真逆の白を持って産まれてきた子。正直、僕は君を少し恐れている。悪魔憑きでないことは分かっているけど、君がマートルの害悪にならないか判断しないとね。
君はきっと優しい子なのだろう。僕等を喜ばそうとしてくれる。マートルに似ていたずら好きで。
ただ、時々感じるんだよ。僕等に心を許してはいないのか、冷酷な瞳を見せる事がある。僕等を見定めている様な、観察している様なそんな感覚がする。
親として思ってはいけない事だろうけど。
......君は本当に僕等の子供かな?
初の主人公以外の視点、上手く書けただろうか。
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コメント
志麻リス
凄く好き♥
続き待ってます(=^ェ^=)