闇と雷の混血〜腐の者の楽園〜

音絃 莉月

【閑話】〜残された者〜

「ゴロゴロ〜〜」

モコモコアワアワ...

「............。」

「ふみゃ〜〜」

アワアワモコモコ...

「大人しいね〜」

「ミャー♪」

今、私は仔猫と戯れている。
物凄く和やかな空気だが、昨日はお通夜だった。
小生意気ではあったが、頭の良い自慢の、私の弟の。

我が家系の『死』に対する考え方は少し特殊だと思う。

『輪廻転生』。

我が家系は天国地獄は信じていない。
閻魔様が決めた法律なんて訳の分からないモノに自分の人生をどうこう言われたく無いしね。
我が家系は『我が道を行く!』って人が多いのも理由だろう。

なんか、遠い先祖に前世の記憶を持った人が居たらしいけど、これはよく知らない。

かなり文明が進んでるこの世界の人間が解明できないようなモノである『魂』っていうのは科学では説明出来ない神の御技なんだろうし、使い捨てよりはリサイクルしてそうだよね。

...勘だけど。

とまあ、そういう訳で我が家系のお葬式とお通夜は、死者がこの世界に留まらずに、輪廻の理から外れないように、死者の心残りを晴らす事を第一の目的としている。

だから親戚の誰かが死んだと連絡を受けてまずはじめにするのは、記憶巡りなんだけどね。
その時は皆んな哀しむくらいなら淡々と記憶を掘り返してる。
雑談中の『こんなの欲しかったな〜』とかの一言すらも叶える為に。

かく言う私も頑張った。
借りパクしてた物を血眼になって探して、『借りパクされた』って愚痴ってた涼夜の友人の家に押し掛けて一緒になって探したり。
粗方集め終わって借りパクされた物を入れたそれなりに大きな木箱を前に思ったわ。
『まぁ、涼夜がこんな昔の物なんか覚えてないだろうなぁ〜』っと。

......くっ。無駄な事したわ。

で、お葬式では我が弟の遺影の前にそりゃあもう、沢山の物が溢れかえってたよ。
...お坊さん、驚いてたなぁ。
事前に言ってたのに。

私も驚いたよ。だって銀狐居たんだもん。
あれエキゾチックペット専門店を経営してる末彦おじさんに撫でたいって強請ってた奴だね。

末彦おじさん頑張って取り寄せたんだろう。
...凄い満足気だった。
そういや、身震いしてたなぁ。なんだったんだろ。キョロキョロしてたし。

お葬式では皆んな全力で哀しんだ。
自分が死んで誰も哀しんでなかったら悩むもんね。
でもその後のお通夜は皆んなで楽しんだよ。
その場に涼夜が居るみたいに思い出話しに花を咲かせた。
この時、皆んな涼夜の愚痴を言ったり馬鹿にしたりしなかったのは、一度怨みを買ったら化けて出て来てでも倍にして返して来るって分かってるから。

化けて出て来るって事は輪廻転生の理から外れるって事だもんね。
それに涼夜が化けて出ると、不幸な結末が待っているんだろう。...鬼畜だし。

その後帰って来て爆睡して朝起きたら、涼夜が助けた仔猫があの時と同じ姿で玄関の前に居たから、今はお風呂タイム。

...こういう場合のテンプレってあれだよね。

「ねぇ、猫様?涼夜の来世盗み見れないかなぁ?」
「......ニャー。」
「そんなジト目で見ないでよ。」

仕方ないじゃないか。
あの腐男子の事だ。テンプレ通りなら今頃、同性愛が認められてる世界に産まれ落ちてるはずだし。
あのバカ涼夜だけ、腐の世界でハーレムとかズルいし。

...この猫ちょっとイラっ☆とするな。
その眼やめないと顔にお湯かけるぞ。
とか思いながら泡を落としていく。
...あれ?

「猫様、白かったんだ。アルビノとはまた、猫様に相応しく神秘的ですなぁ〜。」

アルビノの少年とか良いよねぇ。最近のブームだよ。...私と涼夜の。

そんなこんなで両親の居ない静かな家で猫様と会話しながらのんびり過ごした。

...そしてその夜、夢の中で、白くて何もない空間で猫様にあった。
同じ白なのに不思議と猫様の姿が分かる。

「猫様?こういうのって涼夜が受けるイベントだと思うんですけど。」

『......相変わらず、主ら姉弟はよく分からんわ。』

...猫様の声が思ったより低かった。

『失礼な。別に低くはなかろうて。』

......雌だったのに。

『煩いわ。あの器はあくまで分身だ。声帯を通さない魂の声にあの器は関係無い。我は両性だ。』

ふむ。...なるほどねぇ。つまり...。

「分身で地球に降りてその眼で世界を見て回り暇潰しをしてた所、怪我を負って死にかけていた。分身とはいえ死ねば猫様本体もなんらかのペナルティを受けるから、助けてくれた涼夜に恩を返したが、その姉である私にも興味を持ったから、夢で話し掛けてきたって事ね。」

『な、何故、分かるのだ。その器が分身だとしか言っておらんのに。』

え?......それは、もちろん。

「ラノベの知識パターン。」

『...うむむ。ラノベとな。
地球の人間のそれも日本人ともなれば何故、唯の妄想で神の秘密を言い当てられるのか。興味が尽きんな。
.........地球人の妄想を元に神達を創ったからか?』

...後半聞こえん。魂の声って音量調節したらボソボソした感じじゃなく、本当に音量小さくなるんだ。
......物凄い違和感。

『まぁ、それはさておき。御主には神になって貰うが、良いか?』

お?...という事は、

「了承すれば、ハーレムを見学出来ると?」

『そういう事だ。最も、詳しく言えば今世を終えた後、神の世界に来てもらう。ただし、『輪廻転生』の理からは外れる。』

なるほどねー。
まぁ、理からは外れても別に良いけど。

『いずれは世界を管理してもらうからな。結構、重労働だぞ?』

「『萌え』があれば良い。」

『...そうか。
それならばこれからは夢の世界を、あの者涼夜の居る世界F16758【アフェルガ】へと繋げよう。向こうと此処は時の流れは同じなのだが、それだと殆ど見逃すことになるからの。』

え?...見逃すとか、無いよねぇ?

『う、うむ。一夜で向こうの1日を観れるよう、調節しておこう。』

「はい。
よろしくお願いしますねぇ。猫様?」

『久しぶりの仕事か。...疲れるの。』

さてさて、新たなる『萌え』を手に入れた!
...ムフフ腐腐、涼夜が総受けだからさぞや極上だろう。
楽しみだなぁ♪

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