月島 祐

Call

「もしもし…」

僕はいつものように電話に出る。

「元気?」

春香は心配そうに元気か元気じゃないか聞く。



元気なわけがない。

そりゃ、うつ病、適応障害、休職…
そんな問題を抱えていれば元気になれるわけがない。

「どう思う?」

僕は聞き返してみた。

「元気か元気かじゃないかくらい声を聞けばわかるよ」


春香にはお見通しだった。

「実は別れて実家に戻ってくることになったんだ。」

「おれにはなにも残ってないよ」

「全部無くなっちゃった。」

「もうどうしていいのかわからないよ。」


僕は泣きながら電話で現状を春香に話した。


春香はうんうんと僕の話を聞いてくれた。


「私も彼氏がいるけど、なんとか楽しくやってるよ」



春香には彼氏がいる。


なんで僕だけこんな目に遭わなくちゃいけないんだ。


そんな自分勝手な都合を僕は考えていた。


ゆきが居なくなってから何日か後の話だ。

僕は笑うことすら出来なくなっていたんだ。

そんなことに気がつくのはしばらく経ってからだった。



春香には
「今度気晴らしに遊ぼうよ」
なんていつものように話してみた。

「ごめんね。彼氏がいるから二人では遊べない。」


返ってきた答えはいつものように「うん」ではなかった。


僕はショックを隠せなかった。


こんなにも春香との距離が遠のいていくなんて事にこの頃はまだ気がついていなかった。

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