本日は性転ナリ。

漆湯講義

After Story…My Dearest.48

『ちょっと…衣瑠!』

そう言って莉結が私の手を引っ張る。

「いいよ、もう。いつまでも隠しておける事じゃ無いし…この子には」

私をジッと見つめ続けるリヴィに視線を戻すと、真剣な眼差しで私はこう伝える。

「だけど出来れば他の人には言わないで欲しい。リヴィには分からないかも知れないけど、今の環境に慣れるまで結構大変だったんだよ?」

するとリヴィは小さな声で『分かるわよ…ものすごく』と囁いて…
ドスッ…
私の身体に柔らかな感触がぶつかった。
同時にふわりと香るのは"あの花の香り"。

「えっ、ちょっと…リヴィ?」

『大変だったでしょう…でも大丈夫。私が全てを受け入れてあげる』

『ちょっとオリヴィアさん!何やってんの?どういう事?』

そしてリヴィは私に身体を寄せたまま、その両手を私の背中へと回す。

『私の真の名を知らないでしょう?』

「えっ…」

『私の名はオリヴィア…オリヴィア・シュールマンよ』

私は目を見開き何も言えなくなった。
"シュールマン"…その名前を私が知らない訳が無い。それでも私の中で全てが繋がった訳では無かった。
私が黙ったままで居ると、リヴィは耳元で再び囁く。

『手紙…読んでくれた?』

そこで頭の中で何かが繋がる。

「手紙…あれはリヴィが?」

『えぇ、まぁ正確に言えば"父の手紙"に少し私が付け足しただけ。その様子だと読んでくれて無かったのかしら?』

「読んだ…よ。実際は私じゃなくて友達に訳してもらっただけなんだけど」

『そう…その友達とは彼女かしら?』

リヴィはそっと私から離れると莉結に目をやった。

『私じゃないよ…別の子。ねぇ、聞きたいんだけど何であの手紙を送ったの?』

『それはどういう意味?私が日本に来る理由は書いてあったわよね?それとも私は貴女にとって邪魔だったかしら?』

『邪魔なんて思ってない。オリヴィアは"私たち"に関係無いから。それより手紙にそんな事書いて無かったけど』

するとリヴィは"ふふっ"と小さく微笑んでこう言った。

『そう…ルイが私の手紙を見せた子はルイの事、知っているの?』

「知らない…と思う。何で?」

『何でも無いわ。良ければその訳してくれた子が何て言っていたのか教えてもらえる?』

私は莉結へと視線を向ける。リヴィをジッと睨みつける様に見ていた莉結が私に気付くと、"ふぅー"と息を吐き『いいんじゃない?別に』と少し不機嫌そうに莉結は言った。

「訳してくれたの、携帯に送ってもらったから…これ」

そう言って私は彩ちゃんからの文面をリヴィへと見せた。
真剣な眼差しで画面を見つめるリヴィは、読み終わると口元だけで笑って『分かったわ。いい友達を持ったわね』と言った。

『ねぇ、さっき言ってた"私が日本に来る理由"って聞いてないんだけど』

莉結がリヴィへと歩み寄りそう言うと、リヴィは突然私の手を取りこう答える。

『私がルイのパートナーになる為に決まっているでしょ?』と。


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