After Story…My Dearest.42

『あら、昨日の子達じゃない』

落ち着いた様子でそう声を掛けてきた"オリヴィア"の言葉に私は違和感を覚える。
そして、ふとその手元へと目をやると、おかしな事に車のハンドルが目に映ったのだ。
私が驚きを隠せずにいると、"ボン"とドアの閉まる音が響き…車の影から制服姿の…オリヴィアが…姿を現したのだった。
オリヴィアが二人…どういう事？
目の前に映る二人のオリヴィアに、隣に居た莉結から"えっ…"と混乱を隠せない声が漏れる。
すると制服姿の"オリヴィア"が、車に乗ったままの"オリヴィアそっくりな人物"に『帰ったら話を聞くから』と小さく声を掛けた後、私達の横を淡々と通過して行った。
そして現状整理のつかない私達に"オリヴィアそっくりな人物"が口を開いた。

『無愛想なのは私に似たのよ。昨日転校したばかりで、まだ慣れてないだけだから気にしないで。アレでも私の可愛い妹だから。貴女達が良ければ仲良くしてあげてね、Justice girl』

それを聞いた莉結は慌てて口を開いてこう尋ねた。

『そ、それじゃぁ昨日私達が会ったのって、その…お姉さん、だったんですか？』

それを聞いた"お姉さん"は口元に手をやると小さな声で微笑んで言った。

『そんなに似ているかしら…そうよ、私。これでもあの子より三歳年上なのだけれど。まぁいいわ、若く見られるのは良い事ね。それじゃぁまた…そうだ、私はセレスティア。これも何かの縁だし貴女達の名前を聞いてもよろしいかしら？』

セレスティアさんがそう言って莉結の目を見て微笑んだ。昨日感じた、あまり良くはない印象がその笑顔で薄れていく。

『莉結と言います、セレスティアさん、昨日はすいません。あまりに似ていたので…』

『ティアでいいわ。それと、昨日の事は貴女が謝る事では無いわ、私のモラルが欠けていただけだから。貴女は？』

セレスティアの視線が私へと向けられる。
昨日私の家を見張っていたような人に本当の名前を教えてもいいのかと悩んだけど、"衣瑠"という名前自体本名では無いから構わないだろうという結論に至って"今の名前"を明かす事にする。

「私は…衣瑠です」

すると微笑んでいたセレスティアさんの表情が少し変化する。目を細めて私を真っ直ぐに見つめる視線が、何か私の秘密を探っているような気がして私は視線を逸らした。

『貴女、イル・キサラギね？』

その瞬間、この人…この姉妹は何かを知っている…私の何かを知ろうとしている…そう確信した。
私は手のひらをグッと握るとドアの側まで歩み寄り、セレスティアさんの目を真っ直ぐに見つめる。そして高鳴り出した鼓動を抑えるよう全身に力を入れるとそっと口を開いた。